コミュニケーション > 公開コーナー結節性甲状腺腫・甲状腺がん
186

No.186 男・35歳
2週間前に母が急激な目眩と嘔吐で市内の総合病院に入院しましたが、その検査のおりに甲状腺に小さな腫瘍があると診断されました。目眩や嘔吐は現在小康状態ですが、甲状腺は手術が必要と医者から本人に告げらました。9日(月)に家族などへの説明が行われ、11日(水)に手術が行われると言うことです。病院や医者からこれまでこれといった詳しい説明が無いばかりか細胞診が行われた形跡も無く本人も家族も不安です。現在までに行われた検査は、画像診断(MRI・CT)です。出来れば切ること無く治療したいと考えていますが…。
お聞きしたいのは、
  1. 主治医の診断では目眩や嘔吐は、内耳からのものとの説明ですが、甲状腺の腫瘍が関係することはありませんか?

  2. 治療方針等の説明の時、どういう内容の検査結果(具体的な数値等)であれば手術が必要なのでしょうか。
.
   
Oyaji's reply お話を聞く限りでは、かなり荒っぽいやり方ですね。あなたのお母さんの場合は、他の病気の検査中に偶然見つかった甲状腺結節で、インシデンタローマといいます。それについては、わたしのHPの次のページを参考にしてください。
http://www.j-tajiri.or.jp/source/treatise/006/index.html

医師向け情報ですが、それほど難しい内容ではありません。まず、最初にわたしの総合的な意見を書きます。そして、質問にお答えします。現在において、穿刺吸引細胞診をしないで、手術をするのはあまりにも乱暴なやり方で、患者さんは納得しません。MRI,CTでは腫瘍の性質、すなわち良性か悪性かは分かりません。甲状腺の腫瘍をみるには、超音波が一番適しています。まず、超音波でみて、触診で触れねば超音波下に穿刺吸引細胞診を行うのです。良性なら、3cm以下のものなら手術の必要はありません。悪性すなわち癌(日本人の場合90%は一番予後の良い乳頭癌です)なら、1cm以上なら日本の場合、手術です。アメリカは1.5cm以上を手術していますが。1cm以下なら最近は手術をあまりしなくなってきています。しかし、あなたのお母さんは多分60才代と思います。高齢者の場合は、小さくとも手術した方が良い場合があります。その判断は甲状腺専門外科医が決めます。ひとつお聞きしたいのですが、甲状腺に小さな腫瘍があると言われたようですが、具体的に直径何cmのものでしょうか?それも次回、面談時に聞かれてください。

一つずつお答えします。
  1. 目眩や嘔吐は、内耳からのものと思います。甲状腺の腫瘍とは関係ないと考えます。

  2. 一言で言えば、穿刺吸引細胞診の結果です。癌細胞を証明したか否かです。特に、小さな癌の場合は乳頭癌がほとんどですので、細胞診だけで診断できます。濾胞癌は細胞診では診断できませんが、頻度が全甲状腺癌中数パーセントですし、腫瘍も3cm以上と大きい場合がほとんどですので、経過を見ていれば分かります。髄様癌、未分化癌も細胞診で診断できます。超音波でも、乳頭癌は特徴的な所見がありますので、大体分かりますが細胞診にはかないません。MRI,CTの所見はほとんど参考になりません。血液検査も髄様癌(カルシトニンが高くなります)を除けば、癌の診断には無力です。主治医に手術をしなければならない根拠をお聞き下さい。MRI,CTをしただけで、手術をする医学的根拠です。甲状腺癌については、わたしのHPの次のページを参考にしてください。
    http://www.j-tajiri.or.jp/thyroid/illness/08.html
    http://www.j-tajiri.or.jp/source/translation/a/12.html
    http://www.j-tajiri.or.jp/source/patient/002/04.html
    http://www.j-tajiri.or.jp/source/treatise/004.html
    最後のは医師情報ですが、大変詳しく書いていますので、参考にしてください。

  3. 最後にわたしの意見を言わせていただきますと、一度甲状腺専門医に診てもらったほうが良いと思います。札幌市内には数人甲状腺専門医がおられますね。わたしのHPの各地の専門医のページを参考にしてください。
|←182|…[もどる]…|187→|