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髄様癌には家族性のタイプがあることはよく知られた事実です。髄様癌以外の分化型甲状腺癌(乳頭癌)でも、家族性のものがあることが報告されています。甲状腺癌の3.5%〜6.2%にみられるといわれています。話は難しくなりますが、この髄様癌以外の分化型甲状腺癌は、Familial
non-medullary thyroid carcinoma(FNMTC)と呼ばれます。 FNMTCは、家族性でない分化型甲状腺癌(乳頭癌)に比べて、予後が悪いと考えている研究者がいます。彼らはFNMTCの治療は、通常の分化型甲状腺癌(乳頭癌)より強力に行うべきで、経過観察も慎重にすべきであると述べています。 WHOでは微小乳頭癌は、直径1cm以下のものと定義しています。微小乳頭癌は、一般的に予後が大変いいので、手術をしないで経過をみることが多いです。 この微小乳頭癌でも家族性のものが存在し、通常の微小乳頭癌に比べて、予後が悪く、FNMTCに準じた治療、経過観察が必要であることをLupoliらはLancet(353: 637-639, 1999)で報告しています。 彼らの研究によると、微小乳頭癌119例のうち家族性のものは7例(5.9%)でした。この7例のうち、微小乳頭癌が多発していたものが5例、甲状腺両葉(右と左)にみられたものが3例、癌細胞の血管浸潤がみられたもの3例、頸部リンパ節転移は4例でした。3例で再発がみられ、1例は肺転移で11ヶ月後に死亡しました。Lupoliらは、家族性微小乳頭癌をFamilial papillary thyroid microcarcinoma(FPTMC)と呼んでいます。 以上の結果から、彼らは「家族性微小乳頭癌は予後が悪いので、治療は、通常の微小乳頭癌より強力に行うべきで、経過観察も慎重にすべきである」と述べています。 微小癌867例を術後長期間観察したNoguchiらの研究(Arch Surg 131: 187-191, 1996)では、12例(1.4%)で再発がみられ、2例(0.2%)が死亡しています。この研究では、家族性微小乳頭癌については検討していません。通常の微小癌はかように予後が良いのが特徴です。 |
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