甲状腺機能亢進症を持つ女性の生殖能については、研究がよくされている。しかし、甲状腺機能亢進症を持つ男性の生殖能については、あまり知られていない。最近の米国内分泌学会誌(J
Clin Endocrinol Metab 87: 3667-3671, 2002)に、ギリシャの研究グループから甲状腺機能亢進症における男性患者の生殖能に関する論文が発表された。
対象は、平均年令43.8才の男性甲状腺機能亢進症患者23例(バセドウ病20例、中毒性多結節性甲状腺腫3例)である。甲状腺機能正常である平均年令42.2才の男性15人をコントロールとした。甲状腺機能亢進症治療前後で、精液量、精液濃度、精子形態、精子の運動性を比較した。甲状腺機能亢進症の治療は、メルカゾール服用14例、アイソトープ治療後メルカゾール服用9例であった。
結論は、精子の運動性がコントロールおよび甲状腺機能亢進症治療後と比べ、甲状腺機能亢進症治療前で低下していた。それ以外の機能はコントロールおよび甲状腺機能亢進症治療後と差はなかった。アイソトープ治療を受けた患者とメルカゾールのみで治療した患者の間では、これらの生殖能の変化に差はなかった。すなわち、男性においてアイソトープ治療は生殖能に影響を与えないことが分かった。
今回の研究で、未治療時には甲状腺機能亢進症男性患者の半数は、性欲減退を伴う勃起障害がみられた。この障害は、治療開始して6ヶ月後には回復した。精子の運動性が低下していることは、男性不妊の原因にもなり得るために、バセドウ病男性患者には、治療前にそのことも説明する必要がありそうである。 |