先天性甲状腺機能低下症は4,000人の新生児の1人が罹っているのですが、かつては精神発達遅滞の最大の原因となっていました。子供の正常な発育だけでなく、脳の発達も正常な甲状腺ホルモンレベルに依存しているのです。
生後2日から5日の間に踵を針で突いて採取した少量の血液サンプルで、甲状腺の血液検査(TSHまたはT4)がルーチンに行なわれています。TSHが高い(あるいはT4が低い)場合は、静脈から採取した血液を用いて再度検査を行い、確認します。
甲状腺は、胎生初期に舌の後ろにある数個の細胞からでき始めます。これらの細胞の数が増え、受胎後最初の何週間かの間に首の前の正常な位置に下がってきます。胎児の成長は主に自分の甲状腺が作り出す甲状腺ホルモンに依存しています。先天性甲状腺機能低下症の乳児では、理由はわかりませんが甲状腺が発育できなかったか、正常よりはるかに小さいかのいずれかの場合があります。この発育不良の甲状腺の位置は、舌の後ろから首の前の正常な位置の間のどの場所にもなり得ます。先天性甲状腺機能低下症の乳児の約10%は、甲状腺が存在するにもかかわらず遺伝的に甲状腺ホルモンを作る能力がありません(先天性甲状腺腫)。まれに、甲状腺が一時的に甲状腺ホルモンを作れない場合があります。甲状腺疾患を持つ母親の血液中にある抗体が胎盤を通過し、一時的に赤ちゃんの甲状腺の働きを阻止してしまう場合があるのです。このような少数の赤ちゃんを除き、甲状腺機能低下症は永久的なものです。
今ではどこでもスクリーニングテストを受けられるようになったので、この病気をすぐに見つけ、治療できるようになりました。毎日甲状腺ホルモン剤を飲む治療を生涯続けることによって、精神発達遅滞を予防し、正常な発育をもたらすことができます。乳児から小児期を通じ、血液中のTSHとT4レベルを測定して薬の量をモニターし、調節します。 |