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ボックス1

ボックス1:バセドウ病眼症の病因

バセドウ病眼症の特徴は、外眼筋の肥厚と眼窩の脂肪組織の増加である(眼窩の解剖図を参考にしてください)。眼窩の線維芽細胞から過剰に分泌されるグリコスアミノグリカン(GAGs)のために、眼窩軟部組織の腫大が起こると考えられている(a)。グリコスアミノグリカン(GAGs)は、その物質が持つ陰イオンの作用で、多量の水分と結合し、組織が腫大するわけである。眼窩という骨の入れ物の中の内容物の体積が増加すれば、眼窩内の内圧は上昇し、【表】に示しているような臨床症状を呈してくる。

バセドウ病眼症の病因は、現在のところはっきりは分かっていない(b)【図】。眼窩の線維芽細胞が免疫反応の最初の標的と考えられているが、自己抗原が何であるかは未だに不明である。自己抗原はTSHレセプターかもしれないが、甲状腺と眼窩の共通抗原が交差反応を起こしているというのは証明されておらず、仮説にすぎない。眼窩に浸潤しているリンパ球はB細胞はほとんどみられず、主にCD4+とCD8+T細胞である。CD4+とCD8+T細胞は、線維芽細胞を自己のものと認識できるが、外眼筋の抽出物を主要組織適合性クラス-1において認識できない(c)。最近の研究から明らかになったことだが、バセドウ病眼症の初期には、主に細胞性免疫が主役であり、時間が経つにつれ、体液性免疫が主体になってくる(d)
参考文献
(a) Hansen, C. et al. (1999) Increased sulfation of orbital glycosaminoglycans in Graves' ophthalmopathy. J. Clin. Endocrinol. Metab. 84, 1409-1413.
(b) Bahn, R.S. and Heufelder, A.E. (1993) Pathogenesis of Graves' ophthalmopathy. N. Engl. J. Med. 329, 1468-1475.
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(d) Aniszewski, J.P. et al. (2000) Relationship between disease duration and predominant orbital T-cell subset in Graves' ophthalmopathy. J. Clin. Endocrinol. Metab. 85, 776-780.
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