ブラジルのグループは、アメリカ内分泌学会誌(JCEM 86: 3488-3493, 2001)に、「バセドウ病に対するアイソトープ治療に及ぼすメルカゾール投与の影響」について報告している。この研究は、トピック[033]と同じ目的で行われている。一般的に、従来は抗甲状腺薬で治療するとアイソトープ治療の効果が減弱すると考えられていた。最近、ここで紹介するようにメルカゾールで治療してもアイソトープ治療の効果には影響がないという論文がでてきた。これは、患者にとってはありがたいことです。アイソトープ治療が苦しいものではなくなるからです。甲状腺機能を抗甲状腺薬で正常にして、アイソトープ治療を行えば、楽です。
対象は、61人のバセドウ病患者で、無作為にアイソトープ治療のみの群(32人)とメルカゾールで治療をした群(29人:メルカゾール30mg/日)に分けた。メルカゾールは4日前から中止した。アイソトープ投与量は、200μCi/gとして放射性ヨード摂取率24時間値から計算した<注釈:アイソトープ投与量=甲状腺重量[g]×200μCi/放射性ヨード摂取率24時間値[%]×10)。血清T4、フリーT4、TSHを4日前、当日、治療後毎月、一年後までチェックした。フリーT4が正常もしくは低下した場合を治ったと定義した。その定義からすると、約80%が後3ヶ月経つと治った状態になった。一年後、両群の間で治療効果に差はみられなかった【甲状腺機能亢進症のまま(メルカゾールで治療をした群:15.6%、アイソトープ治療単独群:13.8%)、甲状腺機能正常(メルカゾールで治療をした群:28.1%、アイソトープ治療単独群:31.0%)、甲状腺機能低下症(メルカゾールで治療をした群:56.3%、アイソトープ治療単独群:55.2%)】。甲状腺機能亢進症のままの患者は、甲状腺腫が大きく(p=0.002)、放射性ヨード摂取率24
時間値が高く(p=0.022)、血清T3値が高い(p=0.002)傾向にあった。多重因子解析から、血清T3値のみが治療成績に影響を与える因子であった。
結論として、メルカゾールをアイソトープ治療前に使用しても、治療効果や治った状態になるまでの期間に影響は与えないことが分かった。 |