アメリカのCooperらのグループが、最新のアメリカ甲状腺学会誌(Thyroid 12: 135-139, 2002)に「バセドウ病に対するアイソトープ治療に及ぼすメルカゾールの影響」について報告している。42人のバセドウ病患者を、無作為にアイソトープ治療前にメルカゾールを使用する群(21人)とベータ遮断剤のみ使用する群(21人)に分け、アイソトープ治療に及ぼす影響について検討した。8人が研究から脱落した(アイソトープ治療前にメルカゾールを使用する群5人、ベータ遮断剤のみ使用する群3人)。アイソトープの投与量は15mCiを基準として、甲状腺腫の大きさや放射性ヨード摂取率などで投与量を補正した。アイソトープ治療前にメルカゾール(30mg/日)とベータ遮断剤を少なくとも2ヶ月間投与し、アイソトープ治療6日前から中止した。ベータ遮断剤のみ使用する患者では、アテノロール50〜100mg/日を投与した。ベータ遮断剤は甲状腺機能が正常になったら中止した。一人を除いて、どちらの群も全員、甲状腺機能低下症になった。甲状腺機能低下症になるまでの期間は、両群ともほぼ同じであった(メルカゾールを使用する群:112日[28〜196日]、ベータ遮断剤のみ使用する群:106日[45〜167日])。フリーT4が正常になるまでの期間(メルカゾールを使用する群:44±39日、ベータ遮断剤のみ使用する群:35±30日)やフリーT4が正常以下になるまでの期間(メルカゾールを使用する群:80±70日、ベータ遮断剤のみ使用する群:65±32日)は、両群とも差がなかった。
結論として、彼らは「アイソトープ治療前にメルカゾールを使用しても、治療効果には影響がない。治療成績、甲状腺機能低下症になるまでの期間も差がない」と述べている。 |