アメリカ・テネシー大学のグループは、アメリカ内分泌学会誌に「PTU(チウラジールまたはプロパジール)による前治療は、バセドウ病に対する放射性ヨード治療の効果を弱める。メルカゾール前治療では、そのようなことは起こらない」という内容の論文を掲載した(JCEM
83: 685-687, 1998)。以前、トピック[033]とトピック[034]でメルカゾール前治療ではバセドウ病に対する放射性ヨード治療の効果に影響を与えないという論文を紹介した。今回の論文でも、その点は同じですが、PTU(チウラジールまたはプロパジール)前治療で検討している点が違う。
過去10年間に放射性ヨード治療を一回だけ受けたバセドウ病患者は93人である。33人がPTU(チウラジールまたはプロパジール)で前治療を受け、22人がメルカゾールで前治療を受け、残り38人では抗甲状腺剤の投与を受けないで放射性ヨード治療を受けた。患者の3/4では、放射性ヨード治療の5〜55日前に抗甲状腺剤を中止し、残り1/4では放射性ヨード治療の4ヶ月以上前に抗甲状腺剤を中止した。3つのグループで、放射性ヨード治療6〜8ヶ月後の治癒率を比較した。PTUを放射性ヨード治療の5〜55日前に中止した人たちで治癒率が有意に低かった(24%)。メルカゾールを放射性ヨード治療の5〜55日前に中止した人たちの治癒率は61%であり、抗甲状腺剤の投与を受けないで放射性ヨード治療を受けた人たちの治癒率は66%であった。PTUを放射性ヨード治療の4ヶ月以上前中止した場合には、抗甲状腺剤の投与を受けないで放射性ヨード治療を受けた人たちの治癒率と同じであった。
結論として、放射性ヨード治療の前治療にPTUを使用した場合、放射性ヨード治療の効果が弱まる。放射性ヨード治療の55日前にPTUを中止した場合でも、この放射性ヨード治療の効果が弱まる現象がみられる。 |