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今回対象とした甲状腺機能亢進症532例のうち、369例(69.4%)は1.5時間後の測定のみで診断した。全例、バセドウ病であった。摂取率は、20.8±13.5%(4.4〜68.9%)で、362例は摂取率が5.5%以上であった。残り7例の摂取率はそれぞれ、4.4%,
4.9%, 5.0%, 5.1%, 5.4%, 5.4%, 5.4%であった。
残り163例(30.6%)は1.5時間後の摂取率が低いために30分後(服用して2時間後)に再度、放射性ヨード摂取率試験を行った。この163例の1.5時間後摂取率は、2.0±0.2%(0.2〜9.3%)で、134例(82.2%)が5.4%以下であった。163例中107例はバセドウ病であり、1.5時間後摂取率は3.9±2.1%(0.3〜9.3)であった。163例中56例は無痛性甲状腺炎であり、1.5時間後摂取率は1.9±1.0%(0.2〜5.3)であり、バセドウ病と比較して有意に低かった(p<0.001,
Welch's t test【図1】)。
2回目(服用して2時間後)の摂取率が1回目より1.0%以上増加した91例は、全てバセドウ病であり、増加した摂取率は2.6±2.3%(1.0〜13.0%)であった。2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であった72例のうち、56例は無痛性甲状腺炎であった。無痛性甲状腺炎では、2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は0.1±0.3%(-0.6〜0.8%)であった。2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であった症例の残り16例はバセドウ病であった。バセドウ病では、2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は0.8±0.3%(-0.1〜0.9%)であった(無痛性甲状腺炎と比較;p<0.001,
Student's t test)。
バセドウ病のうち、摂取率検査を2回目で終了した7例の2回目(服用して2時間後)の摂取率増加は、0.3%,0.4%,0.6%,0.6%,0.7%,0.8%,0.9%であった。摂取率増加0.3%例と0.9%例は1回目の摂取率がそれぞれ7.9%と6.1%と高値で、摂取率増加0.7%例は眼症があったので、バセドウ病と診断して治療した。残り4例は、時間がないために同様にバセドウ病と診断して治療した。
2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であったバセドウ病の残り9例(A〜I)では、2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は、-0.1%,
0.1%, 0.1%, 0.3%, 0.3%, 0.5%, 0.7%, 0.7%, 0.8%であった。7例(A〜G)で服用してから2.5時間後に3回目の摂取率試験を行った。うち5例(A〜E)は、服用1.5時間後からの摂取率増加が1.0%を越した。2例(F,
G)では、服用1.5時間後からの摂取率増加が1.0%未満であったが、1回目の摂取率がそれぞれ5.8%, 5.8%と高値であり、バセドウ病と診断して治療した。別の1例(H)は、3回目は24時間後(摂取率8.0%)で摂取率増加が4.2%となり、もう1例(I)は2.5時間後、3時間後、24時間後と計5回、摂取率試験を行い、3時間後(摂取率3.0%)で摂取率増加が2.6%になった。因みにこの症例(I)では、24時間後は摂取率5.0%で摂取率増加4.6%であった。
2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であったバセドウ病患者9例(A〜I)で、3回目の摂取率試験を行った理由は、2例はアイソトープ治療をする予定だったので、診断をしっかりつけるため。1例は、初診時にメルカゾールが効き過ぎて医原性甲状腺機能低下症に陥っていたため、メルカゾールを中止して1ヶ月後に来院した際に甲状腺機能亢進症になっていたので診断を確定するため。3例は、FT4が5.0ng/dlと高値であり、バセドウ病を疑ったため。残り3例は1回目の摂取率がそれぞれ5.8%,
5.8%, 6.1%と高値であり、バセドウ病を強く疑っていたためである。
放射性ヨードカプセルを服用して1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%以上なら、全例バセドウ病であることが今回の研究で分かったので、1.5時間後の放射性ヨード摂取率5.5%を指標にして、改めて今回の結果を検討してみた。
532例中、1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%以上の症例は390例(73.3%)であり、全例バセドウ病である。1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%未満の症例は142例で7例(摂取率;
4.4%, 4.9%, 5.0%, 5.1%, 5.4%, 5.4%, 5.4%)はバセドウ病として治療した。この7例を除いた135例で、2回目(服用して2時間後)の摂取率試験を行った。68例は2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%以上でバセドウ病である。残り67例が2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は1.0%未満であり、56例(83.6%)が無痛性甲状腺炎であった。バセドウ病11例のうち6例は2.5時間後の放射性ヨード摂取率が必要であった。この6例で2.5時間後の放射性ヨード摂取率が必要であった理由は、アイソトープ治療を予定していること、再発の診断を確実に付けるため、FT4が5.0ng/dlと高値であったことなどである。あとの5例のうち1例は眼症があったため、4例は時間がなかったために2.5時間後の放射性ヨード摂取率試験ができなかった。1回目の摂取率が5.5%未満であったバセドウ病7例は、2回目(服用して2時間後)の摂取率試験を行うべきであった【図2】。
放射性ヨード摂取率試験時におけるバセドウ病476例のFT4は、4.21±2.78ng/dl(0.61〜15.66ng/dl)であり、無痛性甲状腺炎56例のFT4は、2.34±1.17ng/dl(0.93〜8.46ng/dl)であった(p<0.001,
Student's t test)。バセドウ病476例のうち、放射性ヨード摂取率試験時に抗甲状腺薬を服用中であったのは149例であった(メルカゾール130例、PTU19例)。抗甲状腺薬中止後の再発例は58例であった(メルカゾール55例、PTU3例)。バセドウ病術後再発例は16例、アイソトープ治療後再発例は2例であった。
無痛性甲状腺炎56例のうち3例は以前、バセドウ病で抗甲状腺薬(メルカゾール2例、PTU1例)を服用していたが中止後経過観察中であった。1例は、バセドウ病術後であった。
バセドウ病476例中、女392例で年令は41.5±16.0才(9〜85才)、男84例で年令は43.5±16.4才(15〜73才)であった。無痛性甲状腺炎56例中、女46例で年令は39.0±12.3才(10〜65才)、男10例で年令は45.6±13.1才(23〜65才)であった。 |
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