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放射性ヨード摂取率試験:最短1.5時間でバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別は可能か?
田尻淳一 田尻クリニック 熊本

まとめ
びまん性甲状腺腫の有無にかかわらず(小さな結節性病変を持っているものも含む)、血清TSHが0.1mU/L未満に抑制されている甲状腺機能亢進症患者で機能性結節を除外した532例に対して、1.5時間後の放射性ヨード摂取率をみることで390例(73.3%)はバセドウ病と診断できた。2時間後の放射性ヨード摂取率をみることでバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別が可能である。2時間後の摂取率増加が1.0%以上ならバセドウ病であり、2時間後の放射性ヨード摂取率増加が1.0%未満なら、その条件を満たす症例の83.6%は無痛性甲状腺炎である。2時間後の放射性ヨード摂取率増加が1.0%未満でも、バセドウ病を疑わせる症状がある場合やバセドウ病の確診を付けたいときには2.5時間後の放射性ヨード摂取率試験を行うことも必要になることがある。

ヨード制限の必要もなく、抗甲状腺薬を服用中でも放射性ヨード摂取率試験は行うことができ、1.5時間、場合によっては2時間かかることもあるが短時間で検査が終了するので、実地臨床で有用な診断ツールになると考える。診断がつくとすぐに治療が開始でき、患者にとっては時間的負担が軽減されるので、医療費の削減にも貢献するものと考える。

はじめに
バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別は、甲状腺診療をおこなっている医師にとっては日常的に遭遇する問題である。採血して、TSHリセプター抗体(TRAbまたはTBII)や甲状腺刺激抗体(TSAb)を調べれば90%は鑑別できる。注意を要するのは、TSHリセプター抗体陰性のバセドウが存在し、TSHリセプター抗体陽性の無痛性甲状腺炎が存在することである。さらに、TSHリセプター抗体や甲状腺刺激抗体の測定には時間がかかり、検査センターに出せば結果が分かるには数日を要す。網野先生たちが報告しているT3/T4比や高松先生が報告しているTSH感度以下などの鑑別法もあるが、絶対的なものではない。抗甲状腺薬を投与するか、投与しないで経過をみていれば、バセドウ病なのか無痛性甲状腺炎なのかは自ずと分かる。しかし、それには早くても1ヶ月、通常2〜3ヶ月かかる。もし、無痛性甲状腺炎に対して抗甲状腺薬を投与していて副作用が出たら、医師も患者も後味が悪い。バセドウ病を抗甲状腺薬も投与しないで経過だけみていたら、患者は辛い思いをする。

バセドウ病診断のゴールデン・スタンダードである放射性ヨード摂取率試験を行えば、バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別は簡単である。しかし、この設備はどこにでもあるわけではない。設備があったとしても、検査前のヨード制限や検査に2日間かかるとなると、患者には負担になる(通常、放射性ヨードを服用して3時間後と24時間後に摂取率を測定する)。幸いなことに当院は1999年7月から放射性ヨード摂取率試験が行える設備を整えた。平成13年4月から平成15年5月までの期間中に、TSHが0.1未満に抑制された甲状腺機能亢進症で機能性結節を除外した940例に対して放射性ヨード摂取率試験を行った。この940例のうち放射性ヨードを服用して1.5時間後に放射性ヨード摂取率試験を行った532例を対象として、最短1.5時間でバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別は可能かどうか検討した。

この研究で特に注目に値するのは、ヨード制限をしなかったこと、抗甲状腺薬を服用しながら放射性ヨード摂取率試験を行ったことである。実地臨床で利用する場合、ヨード制限や抗甲状腺薬を中止することは診察を煩雑にして、つい検査のオーダーを出すのが億劫になりがちである。ものごとは簡単な方がいいに決まっている。

今回の研究で1.5時間後に放射性ヨード摂取率試験を行い、バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別が可能ならば、3つのメリットがある。短時間で診断がつく、抗甲状腺薬を服用中でも診断可能、ヨード制限の必要がないことである。

対象と方法
平成13年4月から平成15年5月までに当院外来で、TSHが0.1mU/L未満に抑制された甲状腺機能亢進症患者に対し、全例で超音波を行い、中毒性多結節性甲状腺腫または中毒性単発性腺腫を疑った場合は、放射性ヨード131(131-I)摂取率試験は行わないでテクネシウム(99m-Tc)もしくは放射性ヨード123(123-I)シンチを行った。びまん性甲状腺腫の有無にかかわらず(小さな結節性病変を持っているものも含む)、機能性結節を除外したTSHが0.1mU/L未満に抑制された甲状腺機能亢進症患者940例に対して放射性ヨード(131-I)摂取率試験を行った。初診時、甲状腺機能検査にて甲状腺機能亢進症と診断された時点で放射性ヨードカプセル(131-I)を服用してもらい、放射性ヨード摂取率試験を行った。前医にて甲状腺機能亢進症が指摘されていても、TSHリセプター抗体などの自己抗体が不明な場合は、来院時にすぐ放射性ヨードカプセルを服用してもらい、放射性ヨード摂取率試験を行った。再来患者の場合、再発や無痛性甲状腺炎を疑ったときには甲状腺機能検査を行い、甲状腺機能亢進症が判明したら放射性ヨード摂取率試験を行った。すでに前医にて抗甲状腺薬を投与されており、診察当日も抗甲状腺薬を服用して来院してきた患者も、バセドウ病の診断を確定するために放射性ヨード摂取率試験を行った。

当院は予約制であるが、初診患者に対して来院時にヨード制限は特に指示しない。今回の研究でも全例、ヨード制限は行わないでその日のうちに放射性ヨード摂取率試験を行った。ヨード摂取量は、尿中ヨードをイオン電極法で測定して確認した。

放射性ヨード(131-I)100μCi(3.7MBq)を服用して、AZ-800; Thyroid uptake system(安西メディカル,Ltd)にて放射性ヨード摂取率を測定した。1.5時間後に放射性ヨード摂取率を測定できた532例を対象とした。1.5時間後の摂取率が低い場合には、30分後に2回目の摂取率測定を行った。症例によっては、3〜5回まで摂取率測定を行った。ガンマカメラによるシンチは行っていない。

バセドウ病は、TSHリセプター抗体、TSAb、その後の経過から診断した。無痛性甲状腺炎はTSHリセプター抗体、経過から診断した。

結 果
今回対象とした甲状腺機能亢進症532例のうち、369例(69.4%)は1.5時間後の測定のみで診断した。全例、バセドウ病であった。摂取率は、20.8±13.5%(4.4〜68.9%)で、362例は摂取率が5.5%以上であった。残り7例の摂取率はそれぞれ、4.4%, 4.9%, 5.0%, 5.1%, 5.4%, 5.4%, 5.4%であった。

残り163例(30.6%)は1.5時間後の摂取率が低いために30分後(服用して2時間後)に再度、放射性ヨード摂取率試験を行った。この163例の1.5時間後摂取率は、2.0±0.2%(0.2〜9.3%)で、134例(82.2%)が5.4%以下であった。163例中107例はバセドウ病であり、1.5時間後摂取率は3.9±2.1%(0.3〜9.3)であった。163例中56例は無痛性甲状腺炎であり、1.5時間後摂取率は1.9±1.0%(0.2〜5.3)であり、バセドウ病と比較して有意に低かった(p<0.001, Welch's t test【図1】)。

2回目(服用して2時間後)の摂取率が1回目より1.0%以上増加した91例は、全てバセドウ病であり、増加した摂取率は2.6±2.3%(1.0〜13.0%)であった。2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であった72例のうち、56例は無痛性甲状腺炎であった。無痛性甲状腺炎では、2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は0.1±0.3%(-0.6〜0.8%)であった。2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であった症例の残り16例はバセドウ病であった。バセドウ病では、2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は0.8±0.3%(-0.1〜0.9%)であった(無痛性甲状腺炎と比較;p<0.001, Student's t test)。

バセドウ病のうち、摂取率検査を2回目で終了した7例の2回目(服用して2時間後)の摂取率増加は、0.3%,0.4%,0.6%,0.6%,0.7%,0.8%,0.9%であった。摂取率増加0.3%例と0.9%例は1回目の摂取率がそれぞれ7.9%と6.1%と高値で、摂取率増加0.7%例は眼症があったので、バセドウ病と診断して治療した。残り4例は、時間がないために同様にバセドウ病と診断して治療した。

2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であったバセドウ病の残り9例(A〜I)では、2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は、-0.1%, 0.1%, 0.1%, 0.3%, 0.3%, 0.5%, 0.7%, 0.7%, 0.8%であった。7例(A〜G)で服用してから2.5時間後に3回目の摂取率試験を行った。うち5例(A〜E)は、服用1.5時間後からの摂取率増加が1.0%を越した。2例(F, G)では、服用1.5時間後からの摂取率増加が1.0%未満であったが、1回目の摂取率がそれぞれ5.8%, 5.8%と高値であり、バセドウ病と診断して治療した。別の1例(H)は、3回目は24時間後(摂取率8.0%)で摂取率増加が4.2%となり、もう1例(I)は2.5時間後、3時間後、24時間後と計5回、摂取率試験を行い、3時間後(摂取率3.0%)で摂取率増加が2.6%になった。因みにこの症例(I)では、24時間後は摂取率5.0%で摂取率増加4.6%であった。

2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%未満であったバセドウ病患者9例(A〜I)で、3回目の摂取率試験を行った理由は、2例はアイソトープ治療をする予定だったので、診断をしっかりつけるため。1例は、初診時にメルカゾールが効き過ぎて医原性甲状腺機能低下症に陥っていたため、メルカゾールを中止して1ヶ月後に来院した際に甲状腺機能亢進症になっていたので診断を確定するため。3例は、FT4が5.0ng/dlと高値であり、バセドウ病を疑ったため。残り3例は1回目の摂取率がそれぞれ5.8%, 5.8%, 6.1%と高値であり、バセドウ病を強く疑っていたためである。

放射性ヨードカプセルを服用して1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%以上なら、全例バセドウ病であることが今回の研究で分かったので、1.5時間後の放射性ヨード摂取率5.5%を指標にして、改めて今回の結果を検討してみた。

532例中、1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%以上の症例は390例(73.3%)であり、全例バセドウ病である。1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%未満の症例は142例で7例(摂取率; 4.4%, 4.9%, 5.0%, 5.1%, 5.4%, 5.4%, 5.4%)はバセドウ病として治療した。この7例を除いた135例で、2回目(服用して2時間後)の摂取率試験を行った。68例は2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加が1.0%以上でバセドウ病である。残り67例が2回目(服用して2時間後)の摂取率の増加は1.0%未満であり、56例(83.6%)が無痛性甲状腺炎であった。バセドウ病11例のうち6例は2.5時間後の放射性ヨード摂取率が必要であった。この6例で2.5時間後の放射性ヨード摂取率が必要であった理由は、アイソトープ治療を予定していること、再発の診断を確実に付けるため、FT4が5.0ng/dlと高値であったことなどである。あとの5例のうち1例は眼症があったため、4例は時間がなかったために2.5時間後の放射性ヨード摂取率試験ができなかった。1回目の摂取率が5.5%未満であったバセドウ病7例は、2回目(服用して2時間後)の摂取率試験を行うべきであった【図2】

放射性ヨード摂取率試験時におけるバセドウ病476例のFT4は、4.21±2.78ng/dl(0.61〜15.66ng/dl)であり、無痛性甲状腺炎56例のFT4は、2.34±1.17ng/dl(0.93〜8.46ng/dl)であった(p<0.001, Student's t test)。バセドウ病476例のうち、放射性ヨード摂取率試験時に抗甲状腺薬を服用中であったのは149例であった(メルカゾール130例、PTU19例)。抗甲状腺薬中止後の再発例は58例であった(メルカゾール55例、PTU3例)。バセドウ病術後再発例は16例、アイソトープ治療後再発例は2例であった。

無痛性甲状腺炎56例のうち3例は以前、バセドウ病で抗甲状腺薬(メルカゾール2例、PTU1例)を服用していたが中止後経過観察中であった。1例は、バセドウ病術後であった。

バセドウ病476例中、女392例で年令は41.5±16.0才(9〜85才)、男84例で年令は43.5±16.4才(15〜73才)であった。無痛性甲状腺炎56例中、女46例で年令は39.0±12.3才(10〜65才)、男10例で年令は45.6±13.1才(23〜65才)であった。

今回の結果に対する検討
今回の研究で一番知りたかったことは、日常臨床の場でよく遭遇することだが、ヨード制限はしていないし、さらには抗甲状腺薬さえ服用している状態で来院した甲状腺機能亢進症患者に対して、その場で短時間のうちにバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別ができるかどうかという点であった。結論からいえば、その答えはイエスであった。放射性ヨードカプセルを服用して最短1.5時間で73.3%は、バセドウ病かどうかの診断が可能である。1回目の摂取率試験から30分後(2時間後)に無痛性甲状腺炎とバセドウ病の鑑別はできる。

ポイントは、1]1.5時間後の放射性ヨード摂取率が5.5%を越えていればバセドウ病、2]2回目の摂取率試験(2時間後)で摂取率の増加が1.0%を越えていればバセドウ病、3]2回目の摂取率試験(2時間後)で摂取率の増加が1.0%未満なら無痛性甲状腺炎の確率は83.6%、4]2回目の摂取率試験(2時間後)で摂取率の増加が1.0%未満でも、バセドウ病を疑ったら3回目(2.5時間後)の摂取率を行う、の4つである。

バセドウ病と診断するには、二つのキーワードがある。一つは1.5時間後の放射性ヨード摂取率5.5%以上、もう一つは2回目の摂取率試験(2時間後)で摂取率の増加が1.0%以上。この二つを満たせば、バセドウ病476例中459例(96.4%)が診断できる。残り17例中6例は3回目(2.5時間後)の摂取率試験を行い診断できた。1例は眼症があったためにバセドウ病と診断できた。10例は3回目(2.5時間後)の摂取率試験を行えば、診断できたと考えられる。すなわち、2.5時間あれば、全例バセドウ病と診断可能である。

無痛性甲状腺炎に関しては、少なくとも1回目の摂取率では診断はできない。摂取率がバセドウ病とかなりオーバーラップするからである【図1】。2回目の摂取率試験(2時間後)を行ってはじめて診断ができる。摂取率の増加が1.0%未満なら無痛性甲状腺炎の確率は83.6%である。摂取率の増加が平均0.1%と低く、バセドウ病の場合の0.8%と比べると異常に低いのでほとんど鑑別可能である。

今回の研究で分かったことで重要な点は、1]甲状腺機能亢進症患者の約3/4は、1.5時間後の放射性ヨード摂取率でバセドウ病と診断でき、長くても2.5時間までにはすべてのバセドウ病の診断が可能である、2]患者が抗甲状腺薬を服用中でも診断に影響は与えない、3]ヨード制限の必要がないことの3点である。これは、今回の研究で一番知りたかった疑問点である。1.5時間後の放射性ヨード摂取率試験は日常臨床に即、使えると考える。

抗甲状腺薬の作用は、ヨードの有機化を阻害することである。ヨードの取り込みは阻害しない。そのために1.5時間後の放射性ヨード摂取率で診断が可能なのである。実は、もっと短時間に診断ができないかと1時間後の摂取率も検討した。バセドウ病26例で1時間後の摂取率を検討したところ、21.3±13.5%(5.4〜48.8%)であった。1時間後でも十分に診断できる可能性がある。今後は、もっと短時間で診断可能になるかどうかを検討していきたいと思う。従来の24時間後まで摂取率を測定すると2日間の診察を要す。短時間で診断がつくとすぐに治療が開始できるので、患者にとっては時間的負担が軽減され、医療費の削減にも貢献するものと考える。

今回の研究で放射性ヨード摂取率試験に131-Iを使用したのは、いつでも検査ができるからである。すなわち、検査のために改めて来院する必要がなく、その場で放射性ヨード摂取率検査ができ、バセドウ病か無痛性甲状腺炎かの鑑別ができるからである。131-Iカプセルは半減期が比較的長いため(約8日間)に最近は、放射性ヨード摂取率試験に使われることが減ってきている。しかし、131-Iカプセルは1ヶ月間、使用が可能である。一方、最近よく使われている123-Iカプセルは半減期が13時間と短いので、使用できるのはその日か次の日までである。そのため、検査のために予約が必要で改めて診察に来る必要がある。患者にとっては、面倒である。131-Iカプセルと123-Iカプセルの比較で、131-Iカプセルが有利なもう一つの長所はコストの問題である。131-Iカプセルは1カプセル850円である(昨年の改正で、520円から850円に値上げされた。現在の厳しい医療事情では例外的出来事であった。あまりにも安いので、役人も可哀想になったのであろう)。131-Iカプセルは、検査に使用するときも1カプセルである。一方、123-Iカプセルは1カプセル3,320円である。加えて、検査に使用するときは通常2カプセルを使用する。これには医療機関の経営的な問題も絡んでくる。すなわち、123-Iカプセルは注文する際、3カプセル以上でないと受け付けてくれないのである。これは、東京から飛行機で空輸するためにコストがかかるからであろう。だから、放射性ヨード摂取率試験に123-Iカプセルを使用すれば、2カプセル6,640円のコストがかかることになる。内部事情をすべて話すと、この放射性ヨードカプセルにかかわらず、アイソトープ試薬はすべて定価そのままで購入する。すなわち、消費税5%分は医療機関の赤字である。放射性ヨード摂取率診断料などがあるので、どうにかやっていけるという検査である。当然、123-Iカプセルを放射性ヨード摂取率試験に使用しても今回の結果はそのまま当てはまる。

バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別に、テクネシウムシンチ(99m-Tc)を使用する医療機関もあるが、この場合はコストがずっと高くなる。加えて、静脈注射なので結構、面倒である。小さなクリニックで行うには、ちときつい。シンチをすると131-Iや123-Iであろうとも、コストが大変高くなる。今回の研究では、超音波で機能性結節を疑ったときのみ、テクネシウムシンチもしくは123-Iシンチを行った。バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別には、放射性ヨード摂取率試験のみで十分である。このやり方だと、やはり医療費の削減に貢献すると考える。

尿中ヨードをみてみると、ヨード摂取量は実に様々で大量のヨードを摂取していた人もいれば、結構ヨードを摂っていない人もいた。中には、その日の朝にルゴール液(ヨウ化カリウム)を服用してきたバセドウ病患者に対して放射性ヨード摂取率試験を行ったが、1.5時間後の摂取率で診断ができた。単にバセドウ病か無痛性甲状腺炎かの鑑別のために放射性ヨード摂取率試験を行うにあたって、ヨード制限は必要ないと考える。今回の研究から、無痛性甲状腺炎も放射性ヨード摂取率試験を行うにあたってヨード制限の必要がないことが分かった。以上のことは臨床上、重要なことである。患者に無駄なヨード制限を強いる必要がなければ、患者にとっては負担が軽減すると考える。ただ、アイソトープ治療を行う場合は、一定期間(通常1週間)のヨード制限が必要であることは当然である。

. Dr.Tajiri's comment . .
. 初診時またはバセドウ病の再発時に、如何にしてバセドウ病と無痛性甲状腺炎を簡単に鑑別することができるかということを3〜4年前から試行錯誤してきた。当院は放射性ヨード摂取率ができるので、3時間後もしくは24時間後の摂取率をみれば、確実に診断はできる。しかし、それでは患者の時間的負担が軽減されない。短時間に診断できるには、どこまで時間を短縮できるか検討してみた。まず、従来の3時間後で行ってみた。鑑別はできるが、時間がかかりすぎる。2.5時間、2時間、1.5時間と短くしていった。今回は、1.5時間での検討である。しばらくの間、1時間でやってみたが、1時間ではまだ摂取率が高くならない症例が多く、現在は1.5時間で最初の摂取率をみる。それで、5.5%以上ならバセドウ病である。5.5%未満なら2時間後に再度摂取率をみる。1.5時間から摂取率が1.0%以上増加していれば、バセドウ病である。1.5時間から摂取率が1.0%未満なら、無痛性甲状腺炎の確率が83.6%である。バセドウ病を疑わせる症状やどうしてもバセドウ病の診断を確実につけたいときには2.5時間後まで摂取率をみる。ただ、そのような症例は、11例(2.1%)である。

今後は、再度、1時間後での検討を行ってみたい。この時点ですでに摂取率が5.5%を越えている症例が存在することは分かっている。今後の課題である。
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