喫煙と甲状腺疾患の関連については最近、話題になっているが、意見が一致しているわけではない。喫煙によりバセドウ病、慢性甲状腺炎、甲状腺腫になりやすいという研究者もいる反面、喫煙がこれらの甲状腺疾患を引き起こすという証拠はないという研究者もいる。このような正反対の結果が出る原因として、研究対象の数が少ないこと、喫煙有無の定義の違い、ヨード摂取量、甲状腺サイズの測定法や甲状腺機能検査の方法の違いなどが考えられる。一方、従来の研究では、甲状腺疾患になりやすい遺伝的要因を考慮したものがないことも結果が一致しない原因と考えられる。そこで、デンマークのHegedusらのグループは、喫煙と甲状腺疾患の関連について、どちらか一人が甲状腺疾患を持つ132組の双生児(同性)を対象として検討した(Arch
Intern Med. 2000; 160: 661-666)。甲状腺疾患を持たないもう一人をコントロールとした。双生児、特に一卵性双生児は同じ遺伝子を持っているので、遺伝的な要因を除外できる。
結果は、一卵性双生児、二卵性双生児において喫煙は甲状腺疾患になる危険性を有意に増加させる(オッズ比3.0)。喫煙との関連性は一卵性双生児において、より高かった(オッズ比5.0)。自己免疫性甲状腺疾患49組(バセドウ病、慢性甲状腺炎)と非自己免疫性甲状腺疾患83組(単純性甲状腺腫、結節性甲状腺腫)に分けても、基本的には結果は同じである。しかし、喫煙歴のある双生児が有意に自己免疫性甲状腺疾患に罹りやすいが、非自己免疫性甲状腺疾患ではそのようなことはなかった。
結論として、喫煙は甲状腺疾患になる危険性を増加させる。さらに、タバコの累積本数が甲状腺疾患になりやすい危険因子であり、特に自己免疫性甲状腺疾患で明白にみられる。
最初は、甲状腺眼症と喫煙の関係が報告され、最近は甲状腺疾患と喫煙の関係も研究されてきています。今回の研究は、遺伝的要因を除外しているので、純粋に喫煙との関係を論じられている点が評価できます。タバコは百害あって一利なしというのは、甲状腺の分野においても当てはまるのですね。 |