オランダのHuysmansのグループは、最近のアメリカ内分泌学会誌に非中毒性多結節性甲状腺腫(日本では、腺腫様甲状腺腫と呼ばれます)に対してrhTSH(遺伝子工学でTSHを大量生産したものです。rh
はrecombinant humanの略です)を注射した後に甲状腺シンチを行い、シンチの取り込む部分に変化がみられるかどうかを検討している(J
Clin Endocrinol Metab 2001 86: 5330-5336)。最近、このグループはrhTSHを注射した後、非中毒性多結節性甲状腺腫患者の放射性ヨード摂取率が2倍に増加したと報告している。放射性ヨード摂取率が増加すれば、アイソトープ治療の治療成績が良くなることが予想される。
以前より(1994 年)このグループは、非中毒性多結節性甲状腺腫に対するアイソトープ治療の有効性を報告している(Ann
Intern Med. 1994 15; 121: 757-62)。
26人(女性23人、男性3人;年令62±9歳;甲状腺重量165±72g)の非中毒性多結節性甲状腺腫患者に対して、123-IシンチをrhTSHを注射しないときとrhTSHを注射した後の計2回行った。rhTSHは123-Iカプセルを投与する24時間前に注射した。rhTSHを注射した場合、全般的には123-Iの取り込みは不均一であったが(rhTSHを注射しない群と同じように)、一部の患者では甲状腺全体に取り込みが増していた。少数だが、取り込みのなかったところ(コールド結節)に取り込みが見られたり(ホット結節)、反対に取り込みのあったところに取り込みが見られなくなった。123-Iシンチの取り込みを詳しく検討した結果、rhTSHを注射した後、123-Iの取り込みが低かったところの取り込みが増加し、取り込みの良かったところではあまり123-Iの取り込みが増えなかった。血清TSHが0.5mU/L未満に症例では、血清TSH0.5mU/L以上の症例と比べてrhTSHを注射した後、123-Iの取り込みが低かったところの取り込みが増加する傾向がみられた。
実際のシンチをお示しします【図】。
結論として、rhTSHを注射することにより、非中毒性多結節性甲状腺腫患者に対するアイソトープ治療の有効率を向上させることができると考える。 |