カナダの研究者HAIPENG XIAOらは、最新のアメリカ内分泌学会誌(J Clin Endocrinol Metab
87: 3583-3589, 2002)にて、バセドウ病の新しい治療法として甲状腺動脈塞栓術について報告している。抗甲状腺剤の副作用のため別の治療(アイソトープ治療や手術)を勧めても、それらの治療を拒む人たちがいる。そのような患者に対する治療として甲状腺動脈塞栓術が有用かどうかを検討した論文である。
甲状腺動脈塞栓術を行う前に、選択的な血管造影を行った。手技はセルジンガー法で、股のところの動脈からカテーテルを入れる方法である。バセドウ病22例に対して甲状腺動脈塞栓術(両側上甲状腺動脈、症例によっては片側の下甲状腺動脈も追加)を施行した。重大な合併症はみられなかった。22例のうち14例(63.6%)は、甲状腺機能正常となり、経過観察期間(平均27ヶ月間;6〜50ヶ月間)もずっと甲状腺機能は正常を保った。6例は、甲状腺動脈塞栓術2〜3週間後に甲状腺亜全摘術を受けた。残り2例は、抗甲状腺薬の服用を必要とした(メルカゾール5〜10mg/日またはPTU50〜100mg/日)。甲状腺動脈塞栓術により、甲状腺重量は1/2〜1/3に減少した。甲状腺動脈塞栓術後に手術を受けた6例の患者から得られた切除甲状腺の組織学的分析から、上下甲状腺動脈、その先の小さな動脈の大部分に塞栓形成が観察された。塞栓された甲状腺組織において、化学的炎症、壊死、線維化の所見が観察された。
血管造影を行い動脈の直径を測定したところ、上下甲状腺動脈に隣接した甲状腺内にある細動脈の直径は、0.12〜0.25mmであった。最も細いものは0.04〜0.11mmであった。以上から、塞栓顆粒の直径は0.15mmが理想的と考えられる(あまりに小さい顆粒だと毛細血管を通り抜けて甲状腺の外に出てしまうため、他の臓器に塞栓を起こす可能性があり危険である)。まず0.15mmの塞栓顆粒で治療し、その後に0.2〜0.3mmの塞栓顆粒を注入すると効果が上がる。
「現在行われているバセドウ病に対するいかなる治療をも受け付けない患者にとって、甲状腺動脈塞栓術は効果的で、侵襲性も少なく、安全な方法であると思われる」と彼らは、締めくくっている。 |