スイスのMeierらのグループは潜在性甲状腺機能低下症による症状、血清コレステロール値に対して、血清TSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の投与は有効かどうかを63人の潜在性甲状腺機能低下症(血清TSH値は5〜50mU/L;
11.7±0.8mU/L)について検討した(J Clin Endocrinol Metab 86: 4860-4866,
2001)。
結果は、血清TSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS=85.5±4.3μg/日)投与をした群(31人:血清TSH値は3.1±0.3mU/L)では、総コレステロールとLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が有意に低下した。また、臨床症状も改善した。
結論として、彼らは「この研究はTSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の投与で、LDL-コレステロールと臨床症状の改善がみられたことを示した初めての2重盲検試験である。LDL-コレステロールの減少で、心血管系の死亡率が9〜31%減少することが予想される」と述べている。
このあと紹介するトピック[018]とトピック[019]を読んでもお分かりのように、しばらくはこの分野での論争が続きそうです。ただ、欧米や日本でコンセンサスが得られているのは、血清TSH値が10mU/L以上なら甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の治療を開始するということです。論争の的は、正常上限から10mU/Lまでの軽症例をどうすれば良いかという点です。今後の研究で、結論が出ると思います。 |