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どのメカニズムが関与しているにせよ、発達中の脳が利用できるT4(そして結果的にT3の利用性)に悪影響を及ぼす可能性がある限り、母親の甲状腺の状態と子供の神経発達不良を関係付ける主なファクターが、TSHの上昇の有無にかかわらず妊娠初期の母親の低サイロキシン血症であることが疫学的、実験的研究で強く示唆されている。様々なメカニズムでT4から作り出されるT3の量が細かく調節されている。この調節は母親あるいは胎児の血中T3とは関わりなく、様々な脳の構造にとって甲状腺ホルモン作用の時間的、空間的に必要なT3の量を合わせている。しかし、これらのメカニズムは十分な基質、すなわちT4がある時にしかうまく働けない。妊娠後期に母親の低サイロキシン血症が続いており、それと胎児の甲状腺が十分なT4を分泌する能力に悪影響を及ぼすような病気が重なり、さらに脳が利用できるT4が減少すると神経発達障害が悪化することになる。【図1】に、低サイロキシン血症、先天性甲状腺機能低下症、未熟児における、脳の発達に障害を受ける時期を示した。 |
甲状腺機能低下症の女性と比較した低サイロキシン血症の女性の子供に起こる神経発達障害の頻度と重篤度 |
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【表4】は妊娠中に不適切なT4、フリーT4、TSHあるいは抗TPO抗体の抗体価を有していた母親から生まれた子供の認知力を定量化しようと試みたものである。このために様々な研究の著者が提供したデータや我々の計算から得られたデータを、これらの研究で報告されている統計や私信(V.
Pop博士)で提供された統計を用いて評価した。我々は、IQ<注釈:知能指数>スコアが85以下(平均-1SD;知恵遅れまたは精神薄弱)あるいは70以下(平均-2SD;精神発達遅滞)の子供の発生率を計算するため、様々な研究に出ているIQスコアを、正常範囲を100±15に取って「正規化」した。ほとんどの研究は神経発達スコアが85以下の発生率を出しているが、70以下のものを分けて出しているものはわずかである。ヨード欠乏地域で得られた結果のメタ分析にはクレチン病患者は含まれておらず、明らかに「正常な」集団しか含まれていない。これらの研究はすべて、混同されやすいファクターの補正がなされている。
未治療の妊婦(対そのコントロール)から生まれた子供のIQ点数減少および対応する確率比から評価したところ、女性の選択基準としてヨード欠乏(研究I)、妊娠初期の低フリーT4(研究IV)、および妊娠中の抗TPO抗体陽性を使用した場合に最大の影響が見られた。Haddow
et al.(1)の研究で示されたデータは妊娠中期のTSH値の上昇を選択基準に用いており、最初はそれほど遅れているようには見えないが、表5にまとめた結果は研究I〜IVに比べ重要な違いを示している。すなわち、このようにして確認された危険性の高い子供の数は5から7倍少ないのである。これは妊娠中期ではTSHの上昇が、他の基準:ヨード欠乏、母親のT4またはフリーT4低下、自己免疫性甲状腺疾患を用いて選択された女性に見つかる頻度に比べて、妊婦に見つかる頻度が少ないことと関係がある。【表5】はもう一つの重要な問題も浮かび上がらせた。
異なった研究でのIQ点数の平均減少度は不適切な治療を受けた先天性甲状腺機能低下症児で先に報告されたものよりも低かった(30)が、罹患児数は150〜200倍多いのではないかということである。
したがって、TSHの上昇にもとづいたスクリーニング(1,44)が、母親の甲状腺ホルモン状態が不適切であることに関係した神経学的発達障害を持つ子供を産む危険がある妊婦を確認するのに最適な方法であるという提唱には完全に同意できないのである。母親の甲状腺が高レベルのhCG<注釈:ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン>のTSH様活性による影響を受け、妊娠初期のTSHの反応が鈍るおそれがあるため、妊娠初期のTSH測定でさえも不適切である可能性がある(125)。さらに、TSHの増加のある妊婦の中には正常なフリーT4レベルである者もいると思われ、そのような人達を研究に含めることで、このグループとそのコントロールグループから生まれた子供の間に見られる神経発達の転帰の差に影響が出るおそれがある。コントロールグループに、TSHは正常であるが妊娠初期のフリーT4が低いかもしれない女性を含めた場合に同じことが起こる可能性がある(126)。母親の抗TPO抗体が高いことも子供の神経心理学的発達不良に関係しているが、かならずしも母親の血中TSHの上昇を伴なっているわけではない(23)。低サイロキシン血症のある未熟児から得られた所見を先に簡単にまとめたが、そのような子供は選択基準として新生児の血中TSH増加を用いても見つからないことも示唆されている。故に、我々は現在の情報は本コメントの目的のポイント1と2に関する答えと認めることとし、そのことから妊婦の甲状腺機能低下症発生率を変更し、妊娠初期の母親の低サイロキシン血症の発生頻度を述べるべきではないかというUtiger(44)が投げかけた疑問と非常に近い立場を取ることになる。
我々が本コメントを出したもっと重要な理由は、世界的に母親の低サイロキシン血症の主要原因がヨード欠乏であるということであり、これはHaddow
et al.(1)の論文に添付したUtiger(44)の最近の論説でもはっきりと力説されている。原発性甲状腺機能低下症患者に通常見られる所見とは対照的に、ヨード欠乏状態、特にそれが軽度または中等度である場合、血中T4レベルの低下に血中TSHの上昇が常に伴なうとは限らないのである。甲状腺は、甲状腺の血流増加や甲状腺の体積の増加、甲状腺のヨードクリアランスの増加、T4よりもT3の甲状腺内合成が優先されること、そしてヨード含有化合物の甲状腺内半減期増加のような血中TSHの増加を必要としない甲状腺内の自己調節メカニズムを通じてヨード欠乏に反応し、正常甲状腺状態を維持する能力を持つ。ヨード欠乏の場合には、血中T4が減少し、血清サイログロブリン(Tg)が増加するが、甲状腺腫のある者もない者も通常はTSHが正常である(127)。これは血中T3が正常か、あるいは上がっているためである可能性が極めて高い。甲状腺の肥大と血清Tgの増加はTSHの増加よりも信頼性の高いヨード欠乏のパラメーターである(128)。神経学的クレチン病患者が生まれるような非常にヨード欠乏のひどい地域であっても、TSHレベル(上昇していても)はヨードが十分な地域の臨床的甲状腺機能低下症患者ほどには高くないのである(129,130)。そして子供の発達の転帰とは関連していない(15)。
母親の低サイロキシン血症の発生頻度はヨード欠乏地域ではるかに高い可能性がある。グレードIII(重度)のヨード欠乏地域では、妊婦の43%で蛋白結合ヨード(PBI)が低値であり(<6μg/dl)、蛋白結合ヨード値と神経発達の転帰には正の相関関係がある。もう少し進んだ国であっても、ヨード摂取量が低いために母親に妊娠初期の低サイロキシン血症が起こる頻度はPop
et al.(3)が研究を実施したオランダより高い場合がある。したがって、ヨード欠乏が中等度(グレードII;妊婦の尿中ヨード平均値が56μg/L)であるブリュッセルでGlinoer
et al.(125)が実施した徹底的な研究では、妊娠初期のフリーT4の濃度低下が30%以上の女性で、これはTSH上昇の発生頻度(2.3%)のほぼ10倍、また甲状腺自己抗体の高抗体価の発生頻度(5.2%)の6倍であった。ブリュッセルよりもヨード欠乏が軽度であるマドリッド(妊娠中を通じて尿中ヨード平均値が90μg/L)では、妊娠初期のフリーT4レベル値が適切なヨード補充を受けている女性の値の10パーセンタイル未満である女性の数が2倍に増加し、ここでもほとんどは血中TSHの98パーセンタイル以上の増加、あるいは甲状腺自己抗体陽性の増加を伴なっていなかった。これらヨード補充を受けている女性の尿中ヨード平均値は190μg/Lであり、これは平均尿量を1.4Lとすると1日270μgの24時間ヨード排泄量に相当する。他の研究(125)でも繰り返し報告されているように、妊娠中はフリーT4が減少しているものの、妊娠期間を通じてヨード補充を受けていない女性に比べて有意に高い。実際に、妊娠各三半期<注釈:妊娠初期、中期、後期のこと>でフリーT4が尿中ヨードと有意に相関しており、妊娠週数やT4結合蛋白の濃度とは無関係であった。ヨード補充を受けていた女性で、出産時に甲状腺腫が見られた者は一人もいなかったが、補充を受けていない女性では24%に見られた。このことから妊婦のヨード必要量は1日200〜300μgであると思われる(少なくとも、以前、妊婦や胎児の必要量を満たすに十分なヨードの蓄積ができなかった軽度のヨード欠乏地域では)。この量は子供や妊娠していない、または授乳していない成人に勧められる量のほぼ2倍である。
ブリュッセルとマドリッドでの研究から、妊娠開始時または妊娠前からヨードの補充を受けていない女性は妊娠中に低サイロキシン血症であった可能性が示唆されている(44,132,133)。Utiger(44)が指摘したようにアメリカは、以前認識されていたよりもヨード欠乏に関連した問題により多く直面している可能性がある。氏のコメントはアメリカでの最近のヨード摂取に関連した研究(134)にもとづいたものである。アメリカのヨード摂取量は過去20年間に著しく減少した。尿中ヨードの平均値は320μg/Lから145μg/Lに減少した。出産可能年齢の女性の15%が50μg/Lに満たない濃度であった。したがって、北アメリカの住民も妊娠中、できうれば妊娠のごく初期か妊娠前からヨード補充を勧められるべきである(44)。
さらに、すでに述べたとおり、ヨード欠乏によりTSHの上昇を伴なう甲状腺機能低下症が起きるとは限らないのである。そして子供に神経発達障害が生じるリスクを持つ女性の選択基準としてTSH上昇を用いた場合、検知できないおそれがある。それでも、かなりの数の女性で母親のフリーT4減少を生じ、精神運動障害のリスクが増加する結果を招くであろう(3)。この相対的ヨード欠乏は簡単に予防でき、費用もほんのわずかですむため、ヨード欠乏が将来の世代に危険を及ぼしつづける恐れのあるこの問題を一般大衆と医学界が完全には理解していないことがなおさらいらだたしいのである。
我々の本コメントは主に母親の不適切な甲状腺機能、特に低サイロキシン血症と子供の神経発達障害との間の関係に焦点を当てているが、自然流産率の増加や胎盤剥離、胎児切迫仮死、奇形、早産、出生時体重低下、周産期転帰不良、および妊娠誘発性高血圧のようなその他のマイナス効果を見逃すことはできない(20,22,26,27,135-138)。自己免疫性甲状腺疾患(AITD)により引き起こされるマイナス効果については、潜在性または顕性甲状腺機能低下症および潜在性または顕性甲状腺機能亢進症、そして一過性の妊娠期甲状腺機能亢進症に関して広範な研究が行われ、Glinor(4,125,139)により再検討がなされている。氏の結論は、妊娠初期の自己免疫性疾患と4mU/L以上または0.1mU/L未満のTSHのシステマチックなスクリーニングは、現在わかっている限りでは、有害な妊娠転帰や周産期罹病率が高まるリスクに関して有効であり、適切な治療により子供と母親の将来の健康状態に益するものであるとなっている。ここで再度、このGlinor(4,125,139)の結論は妊娠中に母親のTPO抗体の抗体価が高いことも子供の神経発達障害のマーカーである(23)、あるいはTSHレセプターブロッキング抗体の抗体価が高い未治療の母親の子供では転帰がきわめて不良である(35,145,141)ことを考慮せずに出されたものであることを述べたい。 |
スクリーニングすべきか、せざるべきか、それが問題である。 |
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現在入手できる疫学的、実験的証拠は、妊娠中の母親の甲状腺状態にもっと注意を払う必要があることを裏付けている。Glinor(125,139)がすでに妊娠初期の自己免疫性甲状腺疾患および潜在性または顕性甲状腺機能低下症と亢進症に対する確実な治療プロトコールだけでなく、システマチックなスクリーニングアルゴリズム(4)を提唱している。提唱されたスクリーニングプログラムは、抗TPO抗体陽性(経済的に実行可能であれば抗Tg抗体の陽性も)とTSHが4mU/L以上または0.1mU/L未満であることにもとづいており、できれば妊娠12週に行うのが望ましい。このアルゴリズムには、子供にきわめて重篤な神経発達障害を起こすリスクが高いにもかかわらず、TSHレセプターブロッキング抗体検査が含まれていない。これはおそらく発生率が低い[1:180,000妊娠(142)]ことと今までに開発されたアッセイ法が簡単に実施できるものではないためであると思われる。今までに我々がここで検討してきた妊娠初期の母親の低サイロキシン血症と神経発達不良の転帰との間の関係を証明する結果を見ると、低フリーT4をスクリーニングに加えることでGlinor(4)が提唱したプログラムに相当な利点が加わるものと信じる。
様々な妊娠月数(および異なった市販のキットの使用)での低サイロキシン血症の程度を定めるに必要なフリーT4値の基準値がまだ決められていない。この基準値の決定は、ヨード摂取量が200〜300μg/日(尿中145〜220μgI/L)以上であることを確認した妊婦を対象として、行われなければならない。不十分なヨード摂取量の女性を対象にすると最低の10パーセンタイルを過小評価することになるであろう。
低サイロキシン血症による神経発達障害に対する治療法も、Pop et al.(123)が最近の論説で強調している通り、今後の比較対照試験やスクリーニング試験で必要になると思われる。しかし、ManおよびSerunian(20,21)とPop
et al.(3)が、ヨード摂取量が十分と思われる女性(ロード島とオランダ出身の女性)で実施した試験では異なった方法と試験デザインが使われていたものの、その女性達の子供の知能指数と知能指数85以下の発生頻度には驚くほどの類似点があった。だが、ManおよびSerunian(20,21)の研究のみが甲状腺抽出物で低BEI(ブタノール抽出ヨード)を直ちに治した女性グループを含めていた。これらの母親から生まれた子供達に知能指数が85以下の者は一人もおらず、平均知能指数が実際に低サイロキシン血症のない女性の子供よりも高かったことは興味深い。これは治療の効果があることを強く示唆するものである。
新生児の甲状腺スクリーニングが開始された頃には提唱されたスクリーニング検査の境界値が明確に定められておらず、陽性のケースに対する最適な治療法もなかった。精神発達遅滞の予防における明瞭な成功例とはなったのにもかかわらず、である。提唱された生化学的マーカーはすべて、現在ブラッドスポット検査として利用できるようになっている(143)。したがって、妊婦の甲状腺スクリーニングを地域の新生児甲状腺スクリーニングプログラム用に開発された算定用施設に結び付けることで、利益対費用の相当な改善がはかれるものと思われる。なぜなら生化学的検査そのものがその手のプログラムで大きな費用を占めることがないからである。
妊娠12週にスクリーニングを行うことをGlinoer(4)が提唱したのは低サイロキシン血症に対しても妥当だと思われる。それ以前に来院することはまれだからである。その時に血液サンプルを採取し、フリーT4、抗TPO(そしておそらくは抗Tg)抗体そしてTSHの測定を行うようにする。この時期にスクリーニングを受けなかった女性も、もっと妊娠が進んだ時期に検査を受けるべきである。なぜなら、特に胎児の甲状腺にも悪影響を与える恐れのある自己免疫性疾患が原因で病気になっているような場合は、まだ検査による利益を受けられるからである。妊娠前のスクリーニングは抗体価が高い女性やTSHの値に異常がある女性、あるいは低サイロキシン血症の女性には利益になると思われるが、それでもなお不十分である場合がある。妊娠自体が胎児へのT4の供給が不十分になったり、もともとあった甲状腺機能不全がはっきりでてきたり、あるいはヨード摂取量が母親と胎児の必要量の増加を満たすことができない原因となりうるからである。
将来、スクリーニングプログラムとしてフリーT4を評価するためには、血液サンプル採取日と同じ日に通常の尿サンプルを採取し、ヨードとクレアチニンを測定して妊婦のヨード摂取量を調べることが大切であろう。費用のかからない尿中ヨードの測定法、実施が容'で高価な器具を必要としない方法が現在利用でき、これらの測定をどのような生化学的'床検査や新生児スクリーニングにも組み込むことは容'である(144)。我々は現在、フィルター紙に尿を染み込ませたものでヨードの測定をする方法を開発中である。これらのデータは、後に様々な地域でその低サイロキシン血症がヨード欠乏に関係している女性の割合として出すことになるであろう。したがって、それ以上の治療をせずとも簡単に予防や矯正ができることになる。
この最初の産前受診時に、全妊婦が通常の食餌に200〜300μg/日のヨードをKI(ヨードカリウム)の錠剤、あるいはビタミン-ミネラル合剤のいずれかの形でヨード補充を直ちに始め、妊娠中と授乳中を通じて続けることにする(44,145)。後に尿中ヨード排泄値が妊娠中に十分であることを示していたとしても、補充による害はないであろう。事実、そのことは妊娠のどの時期であれ、ヨード化オイルの摂取や注射のような形ではるかに大量のヨードを投与しても、胎児の神経発達に害がないことが証明されている(146,147)。スクリーニング時のTSHデータから甲状腺の機能亢進がうかがわれる場合は、補充を中止することができる。プログラムにヨード補充を含めることは、単に一般大衆や医療専門家に情報を与えるプログラムよりも母親のヨード欠乏を確実に治す上ではるかに効果の高い方法であると思われる。
スクリーニング検査で甲状腺自己抗体、TSHあるいはその両方の値に異常がある場合、Glinoer(4)によりまとめられたアルゴリズムを実施することができる。異常値として、妊娠週数に対してフリーT4が低いだけであるならば、2週間以内に改めて血液サンプルを採取して血清フリーT4を測定することとなる。フリーT4レベルの矯正または改善は、食餌にヨードを補うだけで十分であろう。もし、ヨードを補充してもフリーT4が、適切なヨード摂取量であることを確認した同じ妊娠週の正常な妊婦の値の10パーセンタイルよりも低いままであれば、同じ妊娠時期のヨード摂取量が十分な女性で正常と見られているフリーT4レベルにするため、T4による治療を追加することを考慮するのが妥当かもしれない。 |
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低サイロキシン血症、甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺疾患あるいは甲状腺機能亢進症のある妊婦を見つけるためのスクリーニングプログラムは、先天性甲状腺機能低下症のための新生児スクリーニングよりもより多くの機構上の問題が加わる可能性が高い。しかしながら、妊娠転帰に危険を及ぼし、子供の神経発達障害のリスクが高まる可能性のある母親の甲状腺機能の変化が見つかる頻度がはるかに高いため、そのようなスクリーニングを実施するべきである。最近、Fukushi
et al.(143)が日本の札幌で1991年に始められた妊婦の甲状腺機能スクリーニングプログラムのことを報告しているが、これには70,602名の女性のデータが揃っている。著者は妊婦の甲状腺疾患が他の国に比べ日本では少ない可能性があるものの、有益なプログラムであるとの結論を出している(ヨード欠乏による低サイロキシン血症の可能性はきわめて低い)。これらのプログラムは一般医療従事者に妊娠中のヨード欠乏予防の重要性についての意識を大いに高めると思われ、また明確なプロトコールに従った適切な治療を行うため、婦人科医や内分泌病専門医との間の緊密な協力が必要になるであろう(2,4)。 |
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