中等度の甲状腺眼症に対する治療は、副腎皮質ホルモン単独、球後照射、副腎皮質ホルモンと球後照射の併用のうち、どれが最良の治療かは結論が出ていません。MouritsらはLancet(355:
1505-1509, 2000)で、甲状腺眼症に対する球後照射単独の効果を検討しました。無作為に選び出した中等度甲状腺眼症を持つ患者60例を、本当の球後照射30例(一回2Gy、計20Gy)と放射線のない球後照射(偽球後照射)30例(一回0Gy、計0Gy)に分けた。どちらの治療を受けたかは医師および患者には分からない。これを、無作為プラセボ・コントロール研究といい、研究結果が一番信頼おけるものと考えられています。
彼らは、24週間後の治療効果を眼裂の大きさ、眼球突出度、眼球運動などで評価しました。24週間後の甲状腺眼症の改善は、球後照射例では30例中18例(60%)、一方、偽球後照射例では29例中9例(31%)でした。この差は複視の改善が主でした。特に上方視の改善がみられました。眼球突出、眼瞼浮腫には改善はみられませんでした。視野の改善も、球後照射例では17例中11例、一方、偽球後照射例では15例中2例のみでした。しかしながら、球後照射例の75%が眼位矯正手術を必要としました。
彼らは、結論として「中等度の甲状腺眼症に対しては、球後照射は眼球運動の改善を治療する目的でのみ行うべきである」と述べています。
副腎皮質ホルモンと球後照射の併用が一番効果的と考えられています。それでも効かない場合に、手術をするというのが最良の方法と思います。 |