この本は皆さんのために書かれたものです。 |
■ |
もし、あなたが活動が強すぎる、あるいは活動の弱すぎる甲状腺のために苦しんでおり、そのことを知らないとしたら… |
アメリカ合衆国だけでもそのような人が800万人近くもいます。そして、そのような状態に気が付いたら、どちらの症状に対しても良い治療法があるのです。 |
もし、あなたの近い親族の誰かが甲状腺腫にかかっているか、または甲状腺の病気で治療を受けたことがある場合… |
甲状腺の病気の多くは家族内に伝わるため、あなたも調べてもらう必要があります。 |
年配の親族の中に甲状腺機能の不全がある人がいる可 能性があります。若い人と一緒に年配の人も甲状腺の検査を受けるべきです。 |
出産後最初の1年間に、甲状腺の問題を起こすことはきわめて普通のことなのです。簡単な血液中のTSH検査で甲状腺の機能に異常があるかどうかわかります。 |
もし、子供時代に、にきびや扁桃腺炎、あるいは大きくなった胸腺のような病気でX線治療を受け、首にX線照射を受けたことがあれば… |
良性の甲状腺腫瘍または甲状腺癌を起こすリスクが高くなります(ほとんどの甲状腺癌は治すことができます)。 |
もし、あなたが原発の事故により、健康上のリスクがある可能性を心配しているのであれば… |
そのような事故で放出される放射性ヨードのために甲状腺の問題を生じる可能性があります。 |
もし、あなたが過去に甲状腺の治療を受けている場合… |
甲状腺の問題の多くは生涯にわたって治療を受ける必要があるということがわかります。 |
もし、あなたが肥満や不妊、無気力、あるいは欝病で甲状腺の薬を飲んでいる場合… |
その治療は見直しをして、もっと新しいものに変える必要があると思われます。 |
もし、あなたがこれから甲状腺の検査や治療、あるいは手術を受ける場合… |
この本によりその意味やどのようなものかがわかります。 |
もし、あなたがケルプ(昆布。ヨードを沢山含んでいる)を服用しているか、または服用することを考えている場合… |
ケルプの中のヨードのため、甲状腺が腫れ、危険な状態まで活動が高まることがあります。また、あなたが妊娠中であれば、生まれる前の子供の甲状腺が大きくなり、機能不全になる可能性があります。 |
もし、あなたが自宅の近くで原発事故が起こる可能性について心配しているのであれば… |
甲状腺を保護するために少量の非放射性ヨードを取らなければ、放射性降下物の中に甲状腺に有害な影響を及ぼすおそれのある、放射性ヨードが含まれています。 |
もし、あなたが糖尿病のためにインスリンを使用していたり、貧血のためビタミンB12を必要としたり、若白髪があったり、あるいは白斑症として知られている白い斑点が皮膚にある場合… |
甲状腺が活発になり過ぎたり、または不活発になるリスクが高くなる可能性があります。おそらく、甲状腺を調べてもらう必要があるはずです。 |
ほとんどの医師は、正規の医学研修を終えるずっと前に、優れた患者教育の大切な事を経験します。我々の場合は、バーバラという名前の女の子がこの本を書き始めようと決心したことに大いに関係があると思います。彼女はある夜ペンシルベニア大学付属病院の診療室に到着しました。その時L.C.W.は若いインターンでした。
彼女はコントロールされていない糖尿病のため重篤な状態になっていました。
ケトアシドーシスとして知られている状態です。治療を行った最初の晩に、バーバラは自分の状態を驚くほどよく理解し、そのことは明らかに彼女にとって大きな利益となりました。気分が悪くなりはじめた時に、血糖をコントロールするための適切な方法を自宅で行うのに、糖尿病に対する知識が大いに助けとなったのです。
また、その知識があるために彼女は病状が悪化した場合、限界に気付き、いつ病院に行くかがわかったのです。病院では、治療が進むにつれ、何が起こるか知っていたため病気のことを心配することはありませんでした。その代わり、自分で治療にいつでも参加できるようにしていたのです。彼女は現在の問題に至るまでの経過をはっきり話すことができましたし、投与されている薬の量も名前も、食餌の内容についてもよく知っていました。また、今までに経験した糖尿病の合併症のことも熟知していました。最後に、彼女は自分の状態がよくわかっていたために、入院している間に、糖尿病のことについてもっと詳しく学び、将来彼女がよりよい健康管理を行うための知識を得ようとしたのです。バーバラは医師と話すことで一部自分の病状について学んだのですが、自分の病気に対する知識の相当な部分は、Henry
Dolger,M.D.とBernard Seemanによって書かれた糖尿病患者のための本 「糖尿病と共存する方法」を読むことで得たものです。
マサチュウセッツ総合病院甲状腺科で一緒に診療を行いながら、私共は患者教育と甲状腺の病気を持つ患者のために同じような本を書きたいという関心があることが互いにあることに気が付きました。そのようなことから、この本は甲状腺に問題があることを知っている患者、また医師により与えられた病状についての情報を検討したり、広げたりするためにこの本を使える人を対象にしたものです。
しかし、この本をもっとたくさんの読者、すなわち甲状腺の病気がありながらそれに気付いていない多くの人に読んでいただきたいと思っています。病気の初めの段階から、患者がすぐに気付くほど気分が悪くなることが多い糖尿病と違って、甲状腺の病気は徐々に始まり、何ヶ月、あるいは何年も気付かれないままでいることがあるのです。この本が、読者自身またはその親類の中に以前気付かれなかった甲状腺の問題がある場合に、それを見分けるための、また、適切な看護や治療の手引きとしてお役に立つことを願っています。それ以外の読者には、我々の命が宿っている、この素晴らしい身体の魅惑的な部分への手引き書としてお楽しみいただければと思っています。
マサチュウセッツ総合病院の甲状腺疾患臨床研究基金を通じて、この本を出すことを可能にしてくださった多くの患者さんや友人の皆様に深く感謝いたしております。また、それ以外に、自分自身の病状を観察し、そのことを私共に話してくださることにより、甲状腺やそれに関連する問題について多くのことを教えてくださり、有意義なご協力をいただいた患者さんにもお礼を申し上げたいと思います。さらに、自分自身の甲状腺の問題についての経験を書いてくださっただけでなく、甲状腺疾患の特徴をはっきり示すために、この本への写真掲載を許してくださった患者さん方に特に感謝の意を表したいと思います。そのような記録、それは甲状腺の病気にかかっている間にどんな風に感じたかということを伝えるものですが、それが同じような問題を抱えている人にとって特別な意味を持つ可能性があるのです。
特に、この本の各部に目を通していただき、専門分野に関連した有益な助言をくださった甲状腺分野の仲間に感謝しております。この中には、Gerard
Burrow、David Becker、 Earle Chapman、John Crawford、Delbert Fisher、William
Green、 Alvin Hayles、Sidney Ingbar、Farahe Maloof、Edward Rose、Paul Walfish、およびRobert
Volpeの皆様がおります。同じように、親しい友人だけでなく、家族からの助力やコメントにも感謝しております。彼らの多くは甲状腺の病気やそれに関連する症状を持っており、夥しい原稿を見直している間、時に価値のある批評をしていただきました。
また、Linda Hoffman-KimballとAlex Gray両氏の美術方面へのご尽力に謝意を表したいと思います。Linda氏の創造的な絵は、さまざまな工夫をこらして、この本を引き立ててくださり、Alex氏は医学的イラストで、甲状腺の解剖学や機能の多くの面をはっきり示してくれました。
Houghton Mifflin社の出版担当スタッフ、特に有能な編集者であるRuth HapgoodとLois Randall両氏との友情とよい仕事上の関係を享受することができましたことに感謝いたします。また、熟練した事務職としてお手伝いいただいたRuthDiBlasi、Kelly
Gritz、Dianna Lynch、およびSharon Melansonの皆様には大変お世話になりました。 |