正常な状況下では、免疫系は外部からの進入者または腫瘍細胞を“非自己”と認識し、直ちに攻撃し、破壊することによりあなたの体を守るのです。
例えば、以前感染したことのないバクテリアがあなたの血液の中に流れ込んだと考えてみてください。急にそのようなものが出てきたことは、マクロファージとして知られる特別な番犬細胞により検知されます。
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【図10】にあるように、マクロファージは、特にMHCとして知られているあなたの遺伝子システムの一部でコード化された分子で被われています。MHCとは主要組織適合遺伝子複合体のことです(免疫学用語を簡単にしようという約束がなされていなかったのです)。
これらMHCタンパクには、新しいバクテリアが含んでいるタンパク質があなたの体にとって異物であるということがわかるのです。 |
【図10】 |
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バクテリアがマクロファージのレセプターにくっつこうとしているところ |
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そして、マクロファージは機会があれば、バクテリアを捕らえ、飲み込んでしまいます。その結果小胞ができます【図11】。 |
【図11】 |
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マクロファージ内にある小胞の中のバクテリアとMHC |
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この入れ物の中では、酸性度が上がり、酵素の作用でバクテリアの大部分を破壊し、 MHCタンパクにくっついた抗原として知られる大切な部分だけが残ります【図12】。 |
【図12】 |
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小胞内でバクテリアが破壊されるにつれ、その蛋白質の破片であるペプチドがMHC分子にくっつきます。 |
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それから、抗原−MHCタンパク複合体は細胞の表面に上がって行き、そこからタンパクが緊密に結合したバクテリアとMHCタンパクが周辺組織液中に突き出します【図13】。 |
【図13】 |
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小胞は細胞表面に移動し、表面と癒合します。その後MHC-ペプチド複合体が細胞表面に出てこられるよう“開きます”。 |
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丁度その時に通りかかったヘルパーT細胞として知られる白血球がこの突き出した複合体を検知します。このヘルパーT細胞は、どういうわけかMHC-抗原粒子の形とぴったり合い、それと接続できるレセプターがあることを認識するのです【図14】。 |
【図14】 |
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抗原提供細胞表面で、バクテリアのペプチド-MHC複合体にくっついたT細胞リンパ球 |
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この結合でサイトカインとして知られる一連のホルモンが産生され、関連細胞により放出されるカスケード反応が生じます。T細胞はサイトカインのひとつであるインターフェロンガンマを放出します。これが、今では有抗原細胞と呼ばれるマクロファージにインターロイキン-1またはIL-1を含むその他のサイトカインを作らせます。
IL-1はT細胞を活性化し、それが今度はインターロイキン-2を含むもっとたくさんのサイトカインを作ります。それにより、T細胞がさらに活性化され、数も増加します。そのため、ごく短い時間で、しかも非常な特異性をもった防衛隊が侵入したバクテリアに対抗して立ち上がるのです【図15】。
まもなく、立ち上がったT細胞からその他のサイトカイン(インターロイキン4,5,6)が放出され、さらに多くの防衛隊を招集します。これらは別のタイプのリンパ球で、B細胞として知られています。このB細胞こそが侵入したバクテリアを攻撃し、破壊することができる抗体−免疫グロブリンとして知られる蛋白質−を作るのです。また、侵入したバクテリアに対するそれ以外の重要な援軍が出てきますが、これはまた違うタイプのリンパ球で、キラー細胞(殺し屋細胞)として知られているものです。これの細胞はバクテリアに直接作用することができ、バクテリアにくっついて破壊します。
最後に、バクテリアに対抗する 全体的な“戦闘の成果”にある種のバランスを作り出すため、ヘルパーT細胞が先に述べたB細胞の抗体産生を促すと同時に、サプレッサーT細胞として知られる他のリンパ球がB細胞の活動を抑えます。この結果、コントロールされた戦闘となるはずで、そこでは侵入したバクテリア軍は、最終的に完全に破壊されてしまいます。 |