何故、内分泌専門医はシントロイドを勧めるのでしょう? |
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内分泌専門医は他の科の専門医に甲状腺機能低下症の治療について信用するように指示します。そのような信念のひとつに、甲状腺ホルモン剤の治療目標はTSHを正常範囲に入れることであるというのがあります。内分泌専門医にとっては、患者のTSHが正常範囲になれば、患者がまだ甲状腺機能低下症の症状で調子が悪いにもかかわらず、TSHが正常範囲になったこと自体で、患者は元気になったと思うのです(4,6,7)。
上記の診断基準で甲状腺機能低下症の治療を行えば、数百万人の患者が不調を訴え、早死にするかもしれません(4)。理由は簡単です。甲状腺機能低下症があれば、脳下垂体はTSHの分泌を増やし、血清TSH値は正常値より高くなる。下垂体はT4に感受性が高く、少量のT4を投与すると下垂体からのTSH分泌が減少し、血清TSH値は正常範囲に入る。下垂体以外の臓器では、少量のT4投与に対する感受性は下垂体から比べると低い。これらの臓器では、その臓器の代謝を正常にするにはもっと多くのT4を必要とする。しかし、T4はどんなに多い量を投与しても、下垂体以外の臓器の代謝を正常にすることができない。T3を含んだ甲状腺ホルモン製剤だけがこれらの患者の代謝を高めることができる。こういう理由で、T4で血清TSHを正常にしても、代謝はまだ正常より低いわけである。当然、このような患者は血清TSHが正常化しても、症状は取れないわけである。これらの事実から、わたしも含めた研究者は、医師に血清TSHを目安にして患者の甲状腺ホルモン剤投与量を決めるべきではない(4,6,7)と勧めることになる。
この観点からみると、医師は何故、甲状腺機能低下症患者に対してシントロイドを唯一のブランドとして頑なに推奨するのか不思議に思える。理由は、複雑な要因が絡み合っているように思える。資金援助を受けたアメリカ甲状腺学会の研究結果は、Knollからの資金援助の影響を受けるようにみえる。企業の利益に沿わない研究には資金を出さないように思える。このような相互利益をもたらす関係は、研究機関と資金援助する会社の間の関係を保証するものである。
有名な甲状腺患者の代表者であるメアリー・ショーモン(2)は最近、アメリカ臨床内分泌学会(AACE)は長い間、シントロイドを作っている会社から資金援助を受けていること(9)を公にしました。アメリカ臨床内分泌学会(AACE)のwebサイトのスポンサーのリストをみると、シントロイドがアメリカ臨床内分泌学会(AACE)に資金援助している(12)ことは分かる。Knoll社はAACEの甲状腺機能低下症治療のガイドライン作成のために資金を提供している(16)。甲状腺機能低下症治療のガイドラインにおいて、T4以外の治療について全く記載がないことは驚くことではありません(14)。このT4の推奨は、内分泌医が度ある毎に一般民衆にシントロイドを推奨することと符合する。
アメリカ臨床内分泌学会(AACE)の会長を務めているDr. Rhoda Cobinは最近のウォールストリートジャーナル紙で、アメリカ臨床内分泌学会(AACE)は特定の薬物を推奨することはないと言っている(10)。にもかかわらず、彼女は同じ記事の中で、シントロイドを次のように推奨している(10)。「我々の団体に所属する3700人の医師、甲状腺専門医全員はシントロイドは長年にわたり、安全性、効果、信頼性、堅実性を持ち合わせていると認識している」メアリー・ショーモンは、シントロイドwebサイトで、AACEがマスコミでシントロイドを推奨していることを記事にした(9)。
『健康学』は新しく、強力に推進されたwebサイトです。そこでは、内分泌医は甲状腺機能低下症についての情報を提供している。わたしは、そのwebサイトの推進者が教えてくれるまで、その存在を知りませんでした。『健康学』webサイトは、わたしのHP(www.drlowe.com)のように質の高い甲状腺専門HPに自分たちのHPをリンクして欲しいと依頼してきた。『健康学』webサイトをみて、わたしはリンクすることを辞退した。そのHPでは、甲状腺機能低下症について討論している内分泌医のリストを載せていた。そのリストに載っている人数も少なく、宣伝文句のみが目立った。宣伝のウィンドウは数秒ごとに変化した。ウィンドウは2種類で、一つはAbbott社の名前が、もう一つはこのプログラムはAbbott社からの寄付で行われているというものであった。ウィンドウが交互に出てくるたびに、女性の声で書かれている文字を読むのである。その文字を見たくない人でもAbbott社の名前を聞かされるわけである。
『健康学』webサイトのパネルディスカッションで、Loren Greeneはシントロイドを推奨している。彼女は次のように主張している(8)。「シントロイドに関する論議は科学的なものではない。この論議はシントロイドが安全か、効果があるかという問題を論争しているのではない。つまり、シントロイドは40年も使われてきて、安全で効果があることは分かっている。論議の的は、FDAの法的な要求に応ずるかどうかの問題なのです」
内分泌専門医によるそのような保証にもかかわらず、また会社が30年間もシントロイドを発売しているにもかかわらず、FDAはシントロイドを甲状腺機能低下症の治療薬として認めていません(13)。最近、Knoll社はFDAがシントロイドに関して十分な数のコントーロール研究を提出するよう求めている要求を撤回して、シントロイドは一般的に安全で効果的であるということを承認して欲しいとFDAに要請した。FDAはその要請を拒否し、Knoll社に対してシントロイドの安全性と効果について適切な試験を行って、新しい薬剤として申請するように要請した(17,18)。
FDAがシントロイドに対して下した決定の理由は、内分泌専門医の再承認を否定するものである。FDAは次のように書いている。「シントロイドを服用している患者では、服用量の変更を経験することがある。たとえ服用量を変えても、甲状腺機能低下症の適切なコントロールができるとはかぎらない」(17)
FDAはまた、シントロイドについて次のように書いている。「薬物の製造方が、市場に出回った後にも何回か変わっている」
FDAは、シントロイドの製造過程における力価、安定性、信頼性などの問題について以前から指摘してきた。FDAは次の点も言及している。「1989年8月に、Knoll社はシントロイド錠を21ロット分の回収を始めた」回収の理由は、分析試験で力価が低いことが判明したからである。1991年、Knoll社は低力価のシントロイドを26ロット分、6月に別のロットを回収した。シントロイドを製造している工場を視察した結果、優良な製造工場とはかけ離れたものであることが分かった。視察は、1991年4月に2回、12月に9回行われた。その間も、Knoll社は1990年〜1992年まで低力価のシントロイドを市場に出していた。FDAは最終結果を次のように報告している。
「過去の低力価の問題は、シントロイドが安定した力価を持っていないことを示している。Knoll社が、不安定な薬物を何年間も漫然と市場に出していたことは、シントロイドが安定性、力価、均一性に関して問題があることを示唆する。いくらKnoll社がシントロイドを注意深く製造していると主張しても、上記で論じられた現在推奨されている製造工程での違反行為は、Knoll社が現在、推奨されている製造工程にのっとってシントロイドを製造しているとはかぎらないことを示している」(17)
2001年8月、Knoll社を買収したAbbott社はシントロイドを新薬としてFDAに申請した(13)。シントロイドに関する問題を、Knoll社に対するFDAの対応と平行して、メアリー・ショーモンは『われわれの首を目立たそう』というwebサイトでこの問題の経過を報告してきた(19)。
まとめると、シントロイドを作っている会社からの資金援助により内分泌専門医がこのクスリを推奨しているという事実が存在する。シントロイドは過去に製造、安定性、力価に関して問題を起こしたことがある。そして、シントロイドはFDAが示した安全性の基準を満たしていない。製造上の問題があるためにFDAはシントロイドを承認していない。代替え医療を行っている多くの医師は、T4とT3を含んだ製剤やT3のみの製剤と比べて、シントロイドは治療効果が低いことを報告している。これらの報告は、多くの臨床家や研究者によって立証されている。シントロイドで治療を受けている患者の筋肉系の問題は、指圧治療に反応しにくい。しかし、シントロイドからT4とT3を含んだ製剤やT3のみの製剤に変更すると、この筋肉系の問題は改善する。このシントロイドに関する論争点を甲状腺機能低下症を治療している医師に知ってもらうことで、指圧師はよりアクティブな役割を果たせる。そうすることで、患者は効果的な甲状腺ホルモン治療を受けることができる。 |
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