情報源 > 書籍の翻訳[D]甲状腺の悩みに答える本
<第2部・第10章>
第2部<第10章>
重なり合う症状や症候群:疲労、慢性疲労、低血糖症、線維性筋痛
「疲れて、くたくたなんです。以前のように働けません」私はこのような訴えを始終患者さんから聞いています。多くは、かなり長いこと前のように働けないという理由で私の元へやってきます。疲れや疲労感が彼らの日常生活のどのような喜びをも奪い、あらゆるレベルで生活の妨げとなっています。明らかに、疲労に苦しんでいる人が甲状腺疾患の専門家の診察を受ける際には、甲状腺ホルモンの乱れが原因となっているのではないかと思っていることが多いのです。患者さんの表現の中に、私は頻繁に最後の希望を見ることがあります。
一般的に、これらの患者は同じ訴えで、すでに何人もの医師に診てもらっており、大抵はカルテの写しや他の医師が行った検査の写しを携えてきます。その検査や原因と考えられていたことは、医師によって様々に異なりますが、これは避けられないことです。疲労の解釈は、医師のトレーニングや経験、医師が興味を持っている特定の医学分野に応じて、異なる傾向があります。ほとんどの医師は、ひどい疲労の症状に直面した場合、まず疲労を引き起こす主な身体的な疾患を見分けることを考えます。医師の頭を横切る病気でいちばん多いのは、肝炎(アルコール性か、ウィルス性のどちらか)、結核やHIV<注釈:エイズのこと>のような急性または慢性の感染症、ライム病、糖尿病または腎疾患、貧血、癌、多発性硬化症、あるいは心疾患です。もっと一般的に見れば、疲労の原因と考えられるもののリストはほとんど終わりがないほど長くなります。
しかし、結局のところ、主要な医学的疾患は疲労に苦しんでいる人のごく少数にしか見付かりません。毎年、5億人近くの人が疲労のため医師の診療所を訪れると記録されています。
人々が疲れていると言うことがあまりにも多いため、その訴えは無視されがちです。疲れたと感じることは、正常な生活の一部となっています。もし、他にいくつか症状がある場合、まず最初に疲れと極度の疲労だけを訴えるかもしれません。なぜなら、他の症状は皆、疲れの一部として出ているか、あるいは疲れによって引き起こされているという認識があるからです。多くの人がこう思います。「これはストレスだ。どこも悪くない」また多くの医師も、患者にもっと運動して、よい食事を摂るようにとか、体重を減らすように勧めることで疲れの訴えを簡単に片づけてしまうことが多いのです。このために、しばしばはっきりと言い表せないような症状に苦しみ続けることとなります。
疲れているというのは、本当にありふれた訴えです。ですから、ただ疲れきっているという以上であると言い張る場合にのみ、友人や親族、あるいは医師があなたの症状をまじめに考えてくれるのです。疲労の研究では、“健康で、正常”な疲労から重篤で、衰弱を招く疲労まで連続した範囲にあることが示唆されています。ヨーロッパとアメリカ地域社会での調査では、疲労はありふれた症状であり、男性の6.9%から33%、また女性の10.9%から42%に起こることが示されています(1)。初期医療の現場で行われた研究では、1ヶ月以上続く疲労が、男性の18%、また女性の28%で主な問題であるとして報告されています(2)
しかし、ほとんどの人で、疲労は1つ以上のファクターが原因となっています。疲労の原因と思われるものを絞り込むために、症状のチェックリストを全部記入しなければなりません。時に、このプロセスは探偵の仕事に携わっているように思えます(この章の終わりにある疲労の原因と考えられるもののリストをご覧ください)。
医師は疲労をうつ病の顕著な特徴の一つと考えます。内分泌系がうまく働いている場合、疲労の症状の現れは、大抵の場合、隠れたうつ病を探すことにつながります。医師が従来の医学基準を用いている場合、最終的にうつ病の診断に行き着くかもしれません。非常に多いのですが、睡眠障害や娯楽に対する興味が減り、食欲の変化が起きた場合、医師がうつ病のすべての基準を満たすと考えることがあります。しかし、その疲労が感染や身体的疾患、栄養不良、あるいは毒素で生じたものであるかどうかに関わりなく、やらなければならないことができないということについて、フラストレーションや罪悪感を生じるようになります。疲れにより、睡眠の問題が増します。睡眠は心配や波のように押し寄せる不安により妨げられます。消耗しきったように感じている時、エネルギーを増強しようと食べる量が増えがちです。疲れが睡眠や自尊心、そして体重に及ぼす影響により、必然的に、一体何に苦しんでいるのかわからなくなってしまいます。
もし、疲労の主な理由がうつ病、または不安障害であれば、同じような戸惑いがあります。これらの病気は痛みや消化器症状のような身体症状を引き起こすことがあります。このような身体症状が起きることで、医師が身体的疾患を探すということも起こります。
健康の三本柱  
私達の健康は、3つの主要システムの監視下にあります。脳、内分泌系、そして免疫系です(これを健康の三本柱と言います)。これら3つのシステムは、常に相互に作用しあいながら、私達の精神的または身体的健康を脅かしたり、妨げたりするものが環境内にあれば、それと私達が適切に反応したり、闘ったりできるようにしています。これら3つのシステムの相互作用は非常に緊密なので、時には、1つのシステムだけの障害が、最終的にこの健康の三本柱の他の2つの機能まで変化させてしまうことがあります。
内分泌病専門医として、人間の生理学の最大かつもっとも重要な部分を司る主要な器官を専門としていることに優越感を感じます。内分泌系は絶えず私達の健康のほとんどの面に影響を与えています。
内分泌系の機能障害による疲労に苦しんでいる数え切れないほどの患者は、血液検査をしさえすれば、その苦しみの源がすぐにみつかったでしょうに、助けを求めて医師から医師へと渡り歩きます。
甲状腺ホルモンバランスの乱れが、内分泌腺の病気に関連した疲労の最大の原因であることは疑いありませんが、脳下垂体のホルモン欠乏や副腎のホルモンも考慮しなくてはなりません。いずれにせよ何らかの形で、ほとんどのホルモンが体のエネルギーレベルを制御しているのです。これらは化学物質であり、ほとんどの重要臓器に分散し、体内の細胞の基本的な機能を監督します。内分泌腺の機能障害の一般的な例では、極端な疲労や消耗は副腎皮質ホルモンの欠乏、つまりアジソン病によって起こります。ほぼ70%のケースで、この病気が副腎への自己免疫攻撃のために起こっています。副腎で起こる攻撃と破壊のプロセスは、やはり自己免疫疾患であり、甲状腺機能低下症の最大の原因である慢性甲状腺炎を思わせるものです。事実、慢性甲状腺炎やバセドウ病を含む自己免疫性疾患に罹っている人は、アジソン病にも罹りやすい傾向があり、また逆のことも起こります。
病気とコルチゾルの欠乏が危険なレベルまで進んでからやっと、医師がアジソン病の診断を下すことがよくあります。最近、私は2年間で20ポンド(9キロ)近くやせてしまった42歳の女性を診ましたが、ひどい疲労と消耗のため、衰弱しておりました。筋力低下と食欲喪失があまりにもはなはだしいので、今までに10人もの医師の診察を受けておりました。うつ病の診断を下した者もいるし、慢性疲労症候群(CFS)あるいは食物アレルギーの診断を下した者もおりました。彼女の謎は、副腎ホルモンの欠乏のためであることが判明しました。これも抑うつ状態を引き起こします。私は彼女にハイドロコーチゾンの治療を行い、彼女の疲労と他の症状は翌月にはよくなりました。
脳下垂体は、甲状腺や副腎、および生殖腺を含むほとんどの内分泌腺をコントロールしている主内分泌腺ですが、脳とここがコントロールしている内分泌腺の両方からメッセージを受け取ります。脳下垂体は、頭蓋骨の底のところにある小さな凹みの中に隠れたちっぽけな腺ですが、体機能の様々な面に甚大な影響を及ぼします。例えばこの腺が腫瘍や突然血液供給を断たれる(これは大出血の際に起こることがあります)ことにより破壊されるようなことがあると、脳下垂体機能不全症、脳下垂体が作り出すホルモンの欠乏に苦しみ始めることになります。脳下垂体機能不全の結果起こる幅広い影響の中には、不活発な甲状腺、不活発な副腎、性ホルモン欠乏、および成長ホルモン欠乏があります。最終的には、疲労やうつ病、低血圧などを含む多岐にわたる症状が起こります。成長ホルモンは子供の成長を促しますが(幼小児期に成長ホルモンが欠乏すると小人症になります)、大人での成長ホルモン欠乏は最近まで健康に影響しないと考えられていました。しかし、最近行われた研究では、成長ホルモンの欠乏が原因で、疲労や運動能力の低下、筋力低下、認知障害、軽いうつ病、および筋量減少が起こることが示されました(3)
別の研究では、一部の患者で、脳下垂体機能障害による成長ホルモン欠乏が線維性筋痛(4)の原因であり得るという結論が出ました。この病気は衰弱を招くようなひどい疲労と数多くの身体的、感情的症状を引き起こします。正常な場合には成長ホルモンの影響を受け、肝臓で作り出される化学物質であるインスリン様成長因子(IGF-1)のレベルがこれらの患者では低いことが分かりました。インスリン様成長因子(IGF-1)は成長ホルモンを機能させるようにするものです。この研究では、成長ホルモン欠乏が線維性筋痛の全症例の3分の1を占めている可能性があることが示されました。
甲状腺ホルモンバランスの乱れや成長ホルモンの欠乏のような内分泌系の機能障害が起こると、健康の三本柱の他の2つの部分(脳と免疫系)に悪影響が出るのはまず避けられません。例えば、甲状腺ホルモンバランスの乱れ、または脳下垂体機能不全症のある人は、うつ状態になったり、ストレスに圧倒されてしまうことがあります。うつ病は免疫系を弱め、感染症が起こります。うつ病と感染症のため、さらに疲労がひどくなります。
このように一つのシステムが他のシステムに影響し、それにより疲労が悪化する段階的連鎖反応は、広い範囲に影響を及ぼします。まず、すでに体の他のシステムも関わっているので、医師が病気の源として内分泌系を考える可能性が減ります。2番目に、もし疲労を起こす病気が1つ以上ある場合、どちらの病気の症状もますますエスカレートし、片方の病気が見逃されるようになる可能性が非常に高くなります。最後に、症状のエスカレートが一部の患者では極端なところまで行くことがあり、結局、慢性うつ病や線維性筋痛、また慢性疲労症候群に苦しむはめになる場合があります。
線維性筋痛または慢性疲労症候群と診断され、後で甲状腺機能低下症であることが分かった多くの患者が、2つの病気があるのは単なる偶然の一致なの、あるいは甲状腺の病気が線維性筋痛あるいは慢性疲労症候群の引き金となったのかどうかを私に尋ねます。
答えが必ずしもはっきりしているわけではありません。甲状腺ホルモンバランスの乱れや線維性筋痛、および慢性疲労症候群の間にある関係は、甲状腺ホルモンバランスの乱れとストレスの間にある関係に似ています。甲状腺ホルモンの乱れにより生じたストレスやうつ病が免疫系を弱め、患者を線維性筋痛や慢性疲労症候群にかかりやすくさせるのでしょうか。それとも疲労や線維性筋痛の身体症状、あるいは慢性疲労症候群によって引き起こされた圧倒的なストレスやうつ病が免疫系に悪影響を及ぼし、それが原因で甲状腺ホルモンのバランスの乱れが生じたのでしょうか。ストレス、うつ病、そして線維性筋痛や慢性疲労症候群の間の関係は複雑ですが、脳と内分泌系、および免疫系の間の相互作用を反映しています。レトロウィルスのようなウィルス感染が、慢性疲労症候群の発症に大きな役割を果たしているようです。高いレベルのストレスに曝されている人は、ストレスレベルの低い(あるいはストレス対応メカニズムが優れている)人と同じくらい早くウィルス性の病気から回復しない場合があります。今では、一部の人で免疫系を弱めるのは、心理的に傷つきやすいことであり、そのためいつまでもウィルス感染が治らないということが分かっています(5)。要するに、心理的ファクターとストレスが慢性疲労症候群の発病を促すようだということです。うつ病の症状は、慢性疲労症候群患者の35から70%に見られ(6)、うつ病が慢性疲労症候群の発症に先立つ場合もよくあります。
研究者は、慢性疲労症候群が特定のタイプの慢性うつ病を表わしていることもあるという証拠を次々に明らかにしています。うつ病と慢性疲労症候群で起こる免疫障害は、実際にまったく同じものです。しかし、一部の患者では疲労やこの病気の慢性的性質、診断に付きまとう汚名、そしてまだ治療法が見付かっていないという事実のためにうつ病が起こる場合があります。これはストレス/甲状腺の悪循環のエスカレートを思い出させるものではありませんか。慢性疲労症候群に罹っている人のほとんどで、どの問題がこの連続的な出来事−ストレス、うつ病、免疫系の障害、あるいは内分泌系の障害をスタートさせたかを確かめることは事実上不可能です(7)
一連の研究で、慢性疲労症候群に罹っている患者では内分泌系の障害が起こることが多いということもはっきりしました。例えば、多くにコルチゾルレベルの低下が見付かっており、これは副腎機能が落ちていることを示すものです。しかし、繰り返しますが、そのような障害が病気の原因なのか、あるいは病気に関連したうつ病やストレスの結果生じたものかは分かっておりません。
同様の関係が脳内の化学作用の変化ともう一つのひどい疲労の原因である線維性筋痛の発症の間に存在します(8)。線維性筋痛は、自動車事故や仕事に関係した事故のような感情的ストレスを受けた後に始まることがあります。中には、以前感情的に動揺したり、落ち込んだり、あるいはうつ病に罹ったことのある人もおります。ストレスが脳下垂体の成長ホルモン産生を抑えるために、線維性筋痛が引き起こされるのではないかと思われます。
ストレスが如何に成長ホルモンに影響しうるかという別の例は、虐待を受けた子供達に見られる発育不全です。虐待によって加えられたストレスのため、脳下垂体が作り出す成長ホルモンがうんと少なくなるのです(9)
甲状腺ホルモンバランスの乱れも、線維性筋痛や慢性疲労症候群を悪化させるファクター、あるいは直接の原因である可能性があります。まったく同じように、これら2つの病気が甲状腺の自己免疫反応を引き起こす可能性もあります。これが線維性筋痛の診断を受けた人の中に不活発な甲状腺が見付かる場合がある理由です。甲状腺ホルモンバランスの乱れをすぐに治せば、症状の悪循環や線維性筋痛の悪化を食い止めることになります。患者の中には、甲状腺機能低下症が原因で典型的な線維性筋痛が起こる人がおり、この場合甲状腺ホルモンで治すことができます。また、他の人では線維性筋痛がそれ自体独立した病気となり、不活発な甲状腺を治療した後でも治らないことがあります。
線維性筋痛は、活発すぎる甲状腺を治療した後にも起こることがあります。活発すぎる甲状腺の調整がうまくいかない場合、あるいは治療中に甲状腺ホルモンレベルの急激な変動が繰り返される場合(甲状腺機能亢進症から突然重篤な甲状腺機能低下症への移行を引き起こす)は、線維性筋痛の発病を誘発することがあります(<第15章>参照)。この理由は、このような急激な移り変わりにより、大変な量のストレスや感情の乱れが引き起こされるためと考えられます。
医師が、甲状腺機能低下症の診断を下した後、何ヶ月、時には何年も経ってから、その人に線維性筋痛の診断を下すことがよくあります。患者が疲労や痛みを治療前に訴えることが多いのですが、最初はこれらの症状が甲状腺機能低下症のためと思われるのです。しかし、甲状腺ホルモンが適切に調整された後も患者はこれらの症状を訴え続け、それを考え合わせると線維性筋痛に合致するのです。
甲状腺ホルモンバランスの乱れと線維性筋痛  
線維性筋痛には人口の5%が罹患しており、リューマチ専門医や炎症あるいは筋肉と関節の痛みが特徴の病気を専門としている医師への紹介患者の20%を占めています。甲状腺疾患でもそうですが、この病気も圧倒的に女性が多く、この病気に罹っている人の80%以上が女性です。また、大体の年齢範囲は20歳から50歳です。
甲状腺ホルモンバランスの乱れがある患者に起こるように、身体的症状、特に痛みにより引き起こされるものと、感情的苦痛、なかなか眠れない、痛み、そして疲労が混ざり合い、増幅していく悪循環が延々と続きます。
何年もの間、線維性筋痛を見分けるための根拠がなかったために、多くの医師がこの病気の存在さえ否定することになったのです。多くの患者が、自分の症状が“想像上のもの”だということにしたのではないかと思われます。しかし、1990年にアメリカリューマチ学会が線維性筋痛の分類と診断の基準を出しました(10)。この基準には、体の数箇所に少なくとも3ヶ月続く筋骨格の痛みがあり、指で押して調べると少なくとも18ヶ所の疼痛誘発部位の内11ヶ所に圧痛があるということが含まれています。増減はあるものの、痛みが続くことが多く、痛みのある部位に加わる圧に敏感になり、時には衣類にさえ敏感になることがあります。また、頭痛や朝のこわばり、疲れも起こり、日中は軽減しますが、夕方から夜にかけてまた起こります。普通、線維性筋痛によりすっきりしない眠りを経験するようになります。多くは、眠りが浅く、何度も目が覚めると言っています。ちょっと動いただけですぐに疲れきってしまうため、家庭だけでなく、職場での生活が変ってしまうことがあります。過敏性大腸症候群や頻尿、感情的苦痛、不安、およびいらいらのような、他の症状をいくつか伴う場合もあります。
線維性筋痛の診断を受け入れる前に、医師と他の病気についても話し合うようにしてください。線維性筋痛の症状のいくつかは、慢性関節リューマチやシェーグレン症候群、リュウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、狼瘡<注釈:SLE>のような結合組織疾患の症状でもあるのです。これらの病気もまた、副甲状腺疾患や骨関節症のように汎発性の疼痛症候群を起こすことがあります。また、線維性筋痛のある患者の多くが同時にレイノー現象やシェーグレン症候群のような結合組織疾患にも罹っています。
医師は甲状腺機能低下症によって引き起こされた線維性筋痛を“甲状腺機能低下性線維性筋痛”と呼び、この反対を“甲状腺正常線維性筋痛(甲状腺の機能障害により引き起こされた線維性筋痛ではないことを意味します)”と呼びます。線維性筋痛の全症例の12%近くが、不活発な甲状腺により引き起こされます(11)。線維性筋痛と診断を受けたのであれば、甲状腺機能低下症でないことを確かめるため、TSH検査を受ける必要があります。甲状腺機能低下症が診断されないまま、線維性筋痛が長引くと、不活発な甲状腺の治療がやっと行われたとしても、線維性筋痛の症状がいつまでも続くことがあります。
42歳のメリンダは、顕著なうつ病の要素を伴う線維性筋痛に、きわめて普通に見られる数多くの症状に苦しんでいました。3年にわたる“医師巡り”の末、やっと甲状腺機能低下症であると診断された時に、自分の問題はすべて甲状腺のためだったのだと考え、彼女は喜び、安心しました。甲状腺ホルモンバランスの乱れを治したことで幾分改善は見られましたが、彼女の苦しみから完全に開放されることはありませんでした。
メリンダが初めて私の診察を受けている間、彼女が甲状腺治療薬を飲み始める前に、彼女の夫がこう言いました。
60日、あるいは120日毎に、彼女は新しい医師にかかることを見越して、座って、自分がどのように感じているかというリストを書くんです。その症状は、ふらふらするから片方の頬がしびれる、この筋肉にコントロールできない痙攣が起きる、膝に力が入らない、うつ病、目の乾燥、関節の痛み、こわばり、睡眠の問題、筋肉の痛み、そして足やつま先がじんじんするというものにまで渡っていました。このリストは簡単にタイプできるのでめったに医師の手に渡されることはありませんでしたが、それを医師に渡すのが恐いということもあるんです。メリンダがいつか始終経験しているという症状のこんな長いリストを先生が見たら、身体的にも精神的にも不健全な御託屋と思われるか、手におえないとか、そんなことあるわけないと言われるかのどちらかですよ。
私の所見では、メリンダは2つの別々の病気に罹っていることがうかがえました。線維性筋痛と甲状腺機能低下症です。彼女の甲状腺機能低下症がおそらく線維性筋痛を引き起こし、その症状が悪化したのだと思われます。先に述べたように、甲状腺ホルモンバランスの乱れを治療した後、メリンダの症状の多くは改善しましたが、線維性筋痛に関連した症状の多くは残りました。
医師がメリンダのような患者を相手にしなかったり、支援や教育が欠けていること、そして症状をちゃんと認めてもらえないことから、医師巡りにつながっていくことが多いのです。医師から医師へと渡り歩いた後で、線維性筋痛のある人の多くがやぶ医者に身を委ね、信頼できない治療者からの助けを求めているのです。有効性が証明されていない危険な治療を多くの患者が受け入れていると思われます。
線維性筋痛は、不活発な甲状腺が原因であるにせよ、併発したものにせよ、必ずしも身体をひどく損なう病気というわけではありません。症状をコントロールする方法はあります。アミトリプチリン(エラビール<注釈:日本での商品名はトリプタノール>)のような三環系抗うつ剤を少量使うことで、眠りの質を回復させたり、痛みや疲労を改善するのに相当の効果が出る場合があります。筋弛緩剤を夕方に飲むのも、線維性筋痛患者の痛みや睡眠障害の改善に効果があると思われます。エアロビクスで鍛え、じっと座ってばかりいるような生活習慣を避けると徐々に症状が改善します。一方、過度な運動は症状を悪化させることがあります。マッサージは多くの患者に効果があります。午後や夕方はカフェインを避けると眠りの質が高まることがわかりました。また、患者は夜間ひどい騒音を避けるようにしなければなりません。催眠療法はなかなかよくならない線維性筋痛で、理学療法よりも効果が高いようです。カウンセリングや鍼、バイオフィードバックも多くの患者に効果があります。最近の研究では、T3(サイトメル<注釈:日本では商品名チロナミン>)を高い用量(120マイクログラム)で毎日投与すると、線維性筋痛のすべての症状がよくなり、病気が治ってしまうことさえあることが示されています(12)。しかし、高用量のT3は副作用を起こす可能性があります。それよりも低い用量だと耐性もよくなり、患者の症状の一部はよくなると思われます。
最近の治験で、毎日成長ホルモンの皮下注射を行うと、線維性筋痛の症状改善、特にIGF-1レベルが低い患者での痛みや疲労、運動能力の現象に効果があることがわかりました(13)
甲状腺ホルモンバランスの乱れと慢性疲労症候群  
疾病管理センターは慢性疲労症候群を横になって休んでもよくならない持続性、または反復性の衰弱性疲労または易疲労などの新たな発症と定義しています。慢性疲労症候群の権威は、疲労が以前の“正常な”活動レベルの50%未満まで平均的な日常生活の活動が減るほどにひどく、少なくとも6ヶ月は続いていることという基準を設定しています(14)。慢性疲労症候群で起こることがあるその他の症状には次のようなものがあります。
  • 寒気
  • 喉の痛み
  • 疼痛
  • 全身性筋力低下
  • 筋肉痛
  • 運動後に疲労がなかなか取れない。
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 神経心理学的症状
  • 睡眠障害
ほとんどの症状は突然生じます。慢性疲労症候群の診断を誤りなく下すための基準では、先ほど述べたように少なくとも症状が6ヶ月続いているということに加え、次に挙げるものが少なくとも2つあることが要求されます:微熱、咽頭炎、および頚部と腋下リンパ節の腫脹(15)
数ヶ国で実施された疫学調査では、慢性疲労症候群の発生率は0.3から1%であることが示されています(16)
心理的障害が社会的圧力や孤立を招くことがあります。患者が頭がおかしいとか、怠け者と言われることもあります。したがって、甲状腺疾患患者のケースでもそうですが、慢性疲労症候群に苦しんでいる患者は、やっと自分の症状が“想像の産物”ではなく、身体的な疾患によるものであることがわかるとほっとすることが多いのです。うつ病と慢性疲労症候群のどちらも、その神経心理学的症状が似ており、時には見分けがつかないこともありますが、ある種の身体的影響により病気の鑑別ができる場合があります。うつ病では、身体的影響は多岐にわたることが多く、患者が睡眠障害や性的障害、罪悪感、自己批判、および悲哀感に加え、頭痛や筋骨格の痛み、また消化器の不快感を合わせて呈する場合があります。CFSを特徴づけるものであるが、他の衰弱性疲労を起こす病気にはない症状は、微熱、リンパ節肥大、咽頭炎、および寝汗です。慢性疲労症候群と甲状腺機能低下症は、同じ症状を多く共有しているため、ひどい疲労や睡眠障害、また痛みに苦しんでいる多くの患者が誤って慢性疲労症候群と診断されています。
39歳のメリッサは1年前に、カイロプラクティック療法士から慢性疲労症候群があると診断されました。彼女は疲労や他の多くの症状に苦しんでおり、友人がメリッサの症状の多くが甲状腺機能低下症の特徴であることに気付き、私の元に紹介したのです。
彼女が初めて私の診察室にきた時、メリッサはこう言いました。
私は以前と同じように感じられたらなあと思います。以前のようにエネルギーがあったら、また気分の変動が消えてなくなればどんなにいいでしょう。まるで自分の体の中に他人がいるみたいなんです。
カイロプラクティック療法士は私が慢性疲労症候群だと言いました。“エプスタイン−バー症候群”だと言ったんです。そしてその治療法はないと言われました。髪の毛もずっと抜け続けているんです。
カイロプラクティック療法士がメリッサの病気に、慢性疲労症候群だとレッテルを貼ったために、彼女は丸1年も不必要な苦しみを味わったのです。私は彼女の症状は、事実、慢性疲労症候群というより、甲状腺機能低下症とうつ病の特徴を持っているという結論をだしました。そして、血液検査で不活発な甲状腺であることが確認されました。触診では、頚部と腋下にリンパ節肥大は見られず、メリッサには慢性疲労症候群に高頻度に見られる微熱や咽頭炎もありませんでした。甲状腺ホルモンによる適切な治療で、彼女の苦しみはすべて解決されました。
数ヶ月して、メリッサが再来しましたが、彼女の甲状腺ホルモンレベルは正常でした。
そして、こう言いました。
何もかも変ったみたいです。ただ一つ残っているのは腰痛ですが、それ以外は全部消えました。エネルギーレベルもうんと上がったし、疲れたなんてもうとても言えません。まるでこんな大きな鉛の重石が頭から取り除かれたみたいな感じです。視力の問題もずっとよくなりました。点滅する光を見るのを止めました。
慢性疲労症候群を治す方法はありませんが、いくつか一部の患者に効果が見られた治療法があります。これには、高用量の免疫グロブリンの注射や硫酸マグネシウムの筋注、および高用量の必須脂肪酸摂取があります。セロトニンの先駆物質である5ハイドロキシトリプトファンも一部の患者で効くことがあります。
低血糖症:血糖の謎  
低血糖症は、血糖のレベルが正常より低いことですが、疲労や頭痛、頻脈などの非特異的な症状を生じることがあります。他の一般的症状には、集中できない、錯乱、奇妙な行動、震え、不安、発汗、そして飢餓感があります。症状の多くは脳が十分な糖分を貰っていないことから起こるもので、通常は炭水化物を食べるとすぐによくなります。
低血糖症の症状の多くは、自律神経系の腑活によるもので、その同じ神経系が不安障害の身体症状の一部を引き起こします。低血糖症は素人向けの雑誌や本の中で広く取り扱われており、しばしば疲れや仕事や勉強の成績が振るわない、また性的機能障害の原因として引用されています(17)。その結果、うつ病や不安障害による症状に苦しんでいる多くの人が、誤って低血糖症と診断されています。
低血糖症の標準的な試験は、経口ブドウ糖負荷試験です。これはブドウ糖を摂取する前と摂取した後に数回血糖値を測定する検査です。低血糖症に罹っていない健康な人では、ブドウ糖を摂取した後に血糖値が上がり、その後徐々に下がっていき、ブドウ糖摂取から2〜3時間後に低いレベルになります。このレベルは普通、正常に戻ります。ただ、正常で健康な人の20%が食物を摂取してから2〜3時間後に反応性低血糖になると見積もられていますが、症状はありません(18)。ブドウ糖負荷試験で、血糖値が低い時だけに症状が出る場合にのみ、医師が真の反応性低血糖症と診断します。
低血糖症と診断された人で、医師から1日5〜6回に分けて少量ずつ食餌を摂るように言われた人をずいぶんたくさん診てきました。これらの人の中には長いこと低血糖症とされていたのに、症状の原因が結局はうつ病または甲状腺機能低下症であったと判明した人もおります。1970年代から1980年代にかけて、低血糖症らしい人には、誰にも彼にもこの病名を誤って付けることが爆発的に広がったのですが(19)、これは徐々に治まって来ています。それでもこの問題が相当数の人に影響を与え続けております。
しばしば、炭水化物を摂取した後で症状が改善するので自分は低血糖だと思い込む人がおります。私が指摘しましたように、うつ病や不安、あるいは甲状腺ホルモンバランスの乱れがある患者は、頻繁に食べたり、炭水化物を摂取すると気分や不安レベルの改善を経験することがよくあります。これは例えば、セロトニンレベルを上げるような脳内の生化学反応によるものです。
症状だけに基づいて低血糖症であると診断されたか、あるいはブドウ糖負荷試験が正しく解釈されていない場合は、その診断そのものが原因で衰弱してしまうことがあります。低血糖症だと思われている多くの人が、レストランで食べることを拒んだり、車の運転をしない、あるいはある種の食べ物を選ぶことを死ぬほど恐れる“食餌性不具者”となってしまいます。
タミーのことを見てみましょう。彼女は神経質や大量の発汗、いらいら、および震えで一般医の元へ行きました。これはすべて不安と低血糖症のどちらにもあてはまる症状です。彼女を診た医師は、彼女に低血糖症の診断を下し、フルーツまたは砂糖を食べないように指示しました。彼女は、やはり低血糖症と診断された父親に同じような発作が起こったのを見ていたため、タミーは低血糖症に対する強迫観念から常にタンパク質の食べ物を持ち歩くようになりました。これは彼女が最終的にバセドウ病であると診断されるまで、丸々1年続いたのです。
真の低血糖症が疲労の症状や食後の不安の原因でないのであれば、それならなぜ一部の人に疲労や不眠、集中力の低下、そして頻脈や発汗までも出ることがあるのでしょうか。糖分の吸収が早ければ、糖分の急激な上昇に反応してインスリンレベルも一般的に高くなります。血糖値が急速に上がる結果、血液中のインスリンレベルが一挙に高くなります。このため、通常は、突然上昇した後で血糖が急速に下がります。明確な低血糖を経験しなくても、血糖の急速な低下がアドレナリンで活性化される神経系の過剰な反応を引き起こし、それが症状として現れるのです。
要するに、実際には低血糖症ではなくても、低血糖症の症状が出る場合があるのです。一般的に、急速な血糖低下とそれが引き起こす症状は、食後1から2時間の間に起こります。食物摂取と関連して、いつ症状が起こるかを見てください。
症状が出るタイミングが、真の低血糖症と私が言うところの“急速血糖低下症候群”を鑑別する上で重要です。真の反応性低血糖があれば、症状は普通、食後3時間して出始めます。これは血糖値の低下と一致します。これに対して、急速血糖低下症候群では、症状が出るのが早く、血糖値の低下と一致しません。毎日は起こらず、気分や食べたものによって症状が異なる場合があります。
摂取した食べ物のタイプにより、血糖の上昇程度が決まります。研究者が血糖インデックスと呼ばれるスケールを開発しましたが、それはものを食べた後に起こる血糖上昇の程度に応じて食物に点数をつけるようになっています。血糖インデックスが高ければ高いほど、インスリンの反応も高くなり、その結果起こる血糖低下もより早くなります。単純な糖類は複雑な炭水化物より血糖インデックスが高くなります。血糖インデックスを決定するものは、炭水化物のタイプ(単純対複雑)だけでなく、脂肪や蛋白質、および線維の量もありますし、また食べ物の加工や調理法もあります。したがって、血糖の急速な低下を避けるためには、もっとも低い血糖インデックスを持つ食べ物を選ぶことです(様々な食べ物が血糖に及ぼす影響について<第18章>にもっと詳しく述べているのでご覧ください)。
同じくらい困るのが、低血糖症と甲状腺機能低下症とをいいかげんに結び付け(20)、低血糖症が甲状腺機能低下症によく起こるものだと示唆することです。このために中には低血糖症に罹っている人を甲状腺ホルモンで治療できると思い込んでいる人もおります。甲状腺疾患専門医は、疲労や頭痛、睡眠障害などの症状のため低血糖症の診断を受け、それからその病気の治療のために甲状腺ホルモン治療を受けている患者をよく見ます。
 診断をつける 
慢性疲労症候群、線維性筋痛、甲状腺機能低下症、あるいはこれらの病気が組み合わさったものに罹っている可能性があるかどうかを確かめるため、次のアンケートをすべて記入し、経験している症状毎に自分で点数をつけてください。
[アンケートA]:線維性筋痛、慢性疲労症候群、および甲状腺機能低下症に共通する症状  
次に挙げた症状毎に経験しているかどうかを示してください。「いいえ」と答えた場合は次に進んでください。「はい」と答えた場合は、次に進む前にそのひどさに応じて点数をつけてください。[1=軽度][2=中等度][3=重度]
  疲労 はい<1・2・3>・いいえ
  耐久力がない はい<1・2・3>・いいえ
  めまい はい<1・2・3>・いいえ
  関節のこわばり はい<1・2・3>・いいえ
  うつ病 はい<1・2・3>・いいえ
  不安 はい<1・2・3>・いいえ
  集中困難 はい<1・2・3>・いいえ
  筋力低下 はい<1・2・3>・いいえ
  頭痛 はい<1・2・3>・いいえ
  月経前症候群の悪化 はい<1・2・3>・いいえ
  気分の変動 はい<1・2・3>・いいえ
  いらつき はい<1・2・3>・いいえ
  言葉が混乱する はい<1・2・3>・いいえ
  関節痛 はい<1・2・3>・いいえ
  指の腫れ はい<1・2・3>・いいえ
  頭がはっきりしない はい<1・2・3>・いいえ
  パニック発作 はい<1・2・3>・いいえ
  記憶の空白 はい<1・2・3>・いいえ
    総点数  
点数を合計してください。15点以上であれば、線維性筋痛、慢性疲労症候群、あるいは不活発な甲状腺に罹っている可能性があります。アンケートB、C、DとEに進んでください。
[アンケートB]:慢性疲労症候群/線維性筋痛  
安静時にも生じ、休んでも軽減せず通常の仕事や社会的、個人的活動に支障をきたすような疲労が6ヶ月間続いていますか?(はいと答えた方は10点を付けてください) はい<10>・いいえ
熱いシャワーを浴びた後で、疲れきったように感じたり、ふらふらしたり、気を失いそうになりますか?(はいと答えた方は5点を付けてください) はい<5>・いいえ
運動した後、24時間以上経ってもまだ消耗して、疲れきっているように感じますか?(はいと答えた方は15点を付けてください) はい<15>・いいえ
症状は突然始まりましたか?(はいと答えた方は15点を付けてください) はい<15>・いいえ
疲労が始まってから、始まる前にはなかったのに、次に挙げた症状のどれかが持続的に、あるいは繰り返し起こるようになりましたか。そうであれば、そのひどさに応じてそれぞれの症状に次のように点数を付けてください。[1=軽度][2=中等度][3=重度]
  あちこち場所が変る関節痛 はい<1・2・3>・いいえ
  気分のよい日と悪い日がある はい<1・2・3>・いいえ
  夜中になかなか寝付けない はい<1・2・3>・いいえ
  喉の渇きが増した はい<1・2・3>・いいえ
  目や口の乾燥 はい<1・2・3>・いいえ
  ものがぼやけて見える はい<1・2・3>・いいえ
  頻脈 はい<1・2・3>・いいえ
  食欲がない はい<1・2・3>・いいえ
  吐き気 はい<1・2・3>・いいえ
  ひどい倦怠感 はい<1・2・3>・いいえ
    総点数  
点数が25点以上であれば、線維性筋痛か慢性疲労症候群のどちらかに罹っている可能性があります。アンケートCに進んでください。
[アンケートC]:線維性筋痛  
少なくとも過去3ヶ月間、体のあちこちに痛みがあり、それは体の両側(右側と左側)、ウエストの上下と中央部(すなわち、脊椎のいずれかの部分)を襲うものでしたか?(はいと答えた方は5点を付けてください) はい<5>・いいえ
医師が18ヶ所のトリッガーポイント(疼痛誘発点)と呼ばれる場所の内、11ヶ所を押して痛みを引き起こすことができましたか?(はいと答えた方は10点を付けてください) はい<10>・いいえ
次に挙げた症状のいずれかがありましたか?そうであれば、そのひどさに応じてそれぞれの症状に、次のように点数を付けてください。[1=軽度][2=中等度][3=重度]
  筋肉の痙攣 はい<1・2・3>・いいえ
  しびれやじんじんした痛み はい<1・2・3>・いいえ
  光に対する目の過敏性 はい<1・2・3>・いいえ
  内出血 はい<1・2・3>・いいえ
  過敏性膀胱 はい<1・2・3>・いいえ
  過敏性大腸 はい<1・2・3>・いいえ
  目の痛み はい<1・2・3>・いいえ
    総点数  
点数が25点以上であれば、線維性筋痛に罹っている可能性があります。点数に関わりなく、アンケートDとEに進んでください。
[アンケートD]:慢性疲労症候群  
繰り返し、あるいは持続的に熱が出ていますか?(はいと答えた方は10点を付けてください) はい<10>・いいえ
リンパ節の圧痛があり、それが数週間続いたことがありますか?(はいと答えた方は10点を付けてください) はい<10>・いいえ
次に挙げた症状のいずれかがありましたか。そうであれば、そのひどさに応じてそれぞれの症状に、次のように点数を付けてください。[1=軽度][2=中等度][3=重度]
  寝汗 はい<1・2・3>・いいえ
  喉の痛み はい<1・2・3>・いいえ
  喉の渇きが増した はい<1・2・3>・いいえ
  頻繁に感染する はい<1・2・3>・いいえ
    総点数  
アンケートDの点数が25点以上であれば、慢性疲労症候群に罹っている可能性があります。アンケートB、C、またはDの点数に関わりなく、アンケートEに進んでください。
[アンケートE]:甲状腺機能低下症  
次に挙げた症状のいずれかが少なくとも1ヶ月間出ましたか?答えがいいえであれば次の質問に進んでください。答えがはいであれば、次の質問に進む前に症状のひどさの点数を付けてください。[1=軽度][2=中等度][3=重度]
  脱毛 はい<1・2・3>・いいえ
  皮膚の乾燥 はい<1・2・3>・いいえ
  便秘 はい<1・2・3>・いいえ
  徐脈 はい<1・2・3>・いいえ
  食欲が増した はい<1・2・3>・いいえ
  体重増加 はい<1・2・3>・いいえ
  睡眠無呼吸(睡眠中にひどいいびきと短い間欠的な呼吸停止がある) はい<1・2・3>・いいえ
  手のひらが黄色い はい<1・2・3>・いいえ
  筋肉がつる はい<1・2・3>・いいえ
  睡眠時間が増えた はい<1・2・3>・いいえ
    総点数  
アンケートEの点数が10点以上であれば、甲状腺機能低下症に罹っている可能性があります。また、アンケートCまたはDの点数も25点以上であれば、甲状腺機能低下症と慢性疲労症候群、あるいは線維性筋痛に罹っている可能性があります。
 疲労の原因と考えられるもの 
慢性疲労症候群、線維性筋痛、甲状腺機能低下症、あるいはこれらの病気が組み合わさったものに罹っている可能性があるかどうかを確かめるため、次のアンケートをすべて記入し、経験している症状毎に自分で点数をつけてください。
内分泌系の疾患
  • 甲状腺機能低下症
  • 甲状腺機能亢進症
  • アジソン病
  • 脳下垂体ホルモン欠乏症(成長ホルモンの欠乏)
  • 脳下垂体多機能障害
  • クッシング症候群
  • 糖尿病
免疫系の疾患と感染
  • 狼瘡(SLE)
  • 多発性筋炎(希な筋疾患):皮膚筋炎(筋力低下と皮疹を起こす希な疾患)
  • シェーグレン症候群
  • リューマチ性多発性筋痛
  • 悪性貧血
  • 慢性関節リューマチ
  • エプスタイン−バーウィルス感染症
  • HIV感染症:AIDS(エイズ)
  • その他のウィルス性疾患
  • 結核
  • ライム病
  • 菌類病
脳内化学反応の障害
  • すべての抑うつ性障害
  • 気分変動障害
その他の病気
  • 線維性筋痛
  • 慢性疲労症候群
  • 貧血
  • アルコール中毒
  • 重金属中毒
  • 薬剤(「ベータ・ブロッカー」:抗うつ剤)
  • 薬物中毒
  • 肝臓病
  • 心不全
  • 慢性肺疾患
  • 睡眠時無呼吸
  • パーキンソン病
  • 多発性硬化症
  • リンパ腫
覚えておくべき重要なポイント
疲労に苦しんでいる場合、他の症状も疲労のせいだと思ってはなりません。医師が疲労の原因を見つけ出しやすくするため、すべての症状をできる限り正確に述べてください。
疲労を引き起こしているものを見つけ出すため、医師と一緒に疲労を起こしうるたくさんの器官を探偵のような手順で、徹底的にチェックしなければならない場合があります。
疲労を引き起こす明らかな疾患が見付からない場合、脳下垂体や副腎のホルモン欠乏のような内分泌系の疾患を考慮しなければなりません。
疲労を引き起こす疾患が複数である場合もあることを覚えておいてください。甲状腺ホルモンバランスの乱れが、線維性筋痛や慢性疲労症候群を含む、疲労を起こす他の病気と共存していることがあります。
疲労を引き起こしているものを見付けだそうしている間、健康の三本柱(内分泌系、免疫系、脳)のことを頭に入れておくようにしてください。
線維性筋痛がある場合、甲状腺ホルモンバランスの乱れが原因であることがあります。
症状が低血糖レベルと一致して起きない限り、簡単に低血糖症の診断を受け入れてはなりません。
誤診を避けるため、3つの重なり合う症候群(線維性筋痛、慢性疲労症候群、甲状腺機能低下症)の内、どれが症状を引き起こしているのか確かめる、症状の質問表を使うようにします。
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