非常によくあることですが、女性が不妊症である場合、夫は妊娠することは妻の責任だと彼女に感じさせます。
ある患者が自分の状況を次のように話してくれました。 |
夫は妊娠するのが私の“仕事”だと言いました。私はセラピストからこう言われたのを覚えています。「毎月妊娠していないことがわかると、とても惨めになる理由は、ご主人がそれが仕事だとおっしゃったからだと思いますよ。つまり仕事に失敗したわけでしょう」
主人はそれが私の唯一の目標だと考えていました。私が自分の値打ちを妊娠検査の結果が陽性か陰性かということで測るようになりました。ですから、検査の結果が陰性と出るたびに、私は完全に打ちのめされたように感じたのです。それで一層落ち込んでしまいました。私は黙って耐えていたので、これらすべての感情に対処するのはとても大変なことでした。心は悲しみで一杯でした。 |
|
一般的に言って、不妊のカップルは自分達の問題を悪いことのように思ったり、悲しんだり、あるいは恥じたりするので、他人とそれについて話すことはありません。親身な支えがないことで、不妊の人またはカップルは孤立したように感じ、この問題によってもたらされる感情の激変により一層苦しむことになるのです。RESOLVEは、不妊の問題を抱える女性のための国の支援グループですが、国内各地のすべての主要都市で定期的に集う会があります。RESOLVEのメンバーは互いに医学情報を交換したり、感情面の支えを行って助け合っています。 |
甲状腺機能障害に罹っている女性への不妊の影響は、その女性が甲状腺ホルモンバランスの乱れに気が付いていない場合はさらにひどくなります。女性の感情に対する甲状腺ホルモンバランスの乱れの様々な影響が、苦しみを耐え難いものにし、配偶者との間の争いを募らせます。大抵の場合、女性が甲状腺機能低下症でなければ、自分の悲しみを友人や親族に隠すことができるでしょう。それが不妊と関係したものであるからです。ところが甲状腺機能低下症だと、例えそれがごく軽いものであったとしても、甲状腺ホルモンバンスの乱れのため、うつ病が悪化し、不妊のストレスに対応できなくなってしまいます。このようなエスカレートを予防する手段をとらねばなりません。不妊の問題で、うつ状態がますます募っていくようであれば、TSH検査を受けてください。 |
女性が不妊治療薬を飲んでいる間に起こる不安のため、甲状腺の病気により引き起こされる不安が、どのような種類であれ、一層ひどくなるのが普通です。今月は妊娠しているのだろうかとか、これで生活がどのように変るのだろうかということを心配しているのです。信じ難いほどの不安に直面しているため、妊娠検査の結果がマイナスであったことに対する失望がさらに大きくなることがあります。その結果、女性の中にはPMS<注釈:月経前症候群>の悪化や怒り、気分変動、いらいら、そして夫との口論が増す人もいます。 |
セックスなどしたくないと思っている時にも性交をしなければならない甲状腺機能低下症の女性は、しばしば罪悪感や不適格感がさらに強くなることがあります。夫に思いやりの気持ちや支えようという気持ちがない場合、あるいは妻にセックスへの興味がないことを誤解するような場合、夫婦の間で口論が起きたり、溝が深まったりするようになります。
ロザリンは33歳の秘書ですが、結婚して5年になります。3年間にわたって妊娠しようと頑張り、つらい不妊治療を受けましたがうまくいきませんでした。しかし、不妊の原因は軽度の甲状腺機能低下症であったのですが、それはもう子供を持つのをほとんどあきらめたころにやっと見付かったのです。
ロザリンが言うには |
妊娠しようと頑張ることから信じられないくらいのストレスを受けました。毎月毎月、私達は何千ドルものお金を費やしました。私は往復2時間かけて、毎月10回から12回診療所に通わなくてはなりませんでした。はっきりした理由もなく、試している不妊治療プログラムは私には効果がありませんでした。さらに悪いことは、他の人が誰も支えにはなってくれないと感じたことです。誰かに私達がやっていることを話したとしても、こう言われるだけですから。「あら、ただリラックスするだけでいいのよ。私と仲のいい友達はご主人と2度目のハネムーンに行ったら、妊娠したのよ」私の場合は、妊娠するかどうかにリラックスすることが無関係だということが分かっていました。とうとう、私はいちばんの親友にさえもそのことを話さなくなりました。 |
私の不妊が生活のあらゆる面に影響していました。主人は極端に内気な人で、私以外の人とは誰とも物事を話し合うことがありませんでした。そのことでさらにつらくなりました。私のPMSはますますひどくなり、自分が泣いたり、悲しんでいることに気付くことが度々ありました。大変な不安を感じ、夜も眠れませんでした。 |
その月のセックスをしなければならない時期が来ると、私はそれを恐れるようになりました。主人に触られることも嫌になり始めました。医者からいつ、どのようにセックスするか、つまり何を、どこに、どれくらいの時間するようにということですが、そのようなことを言われるので、不妊治療を受けているとセックスの重要な面である親密さや自然さがなくなってしまうんです。それは思っているのとは違うんです。私にとって、そんなことはただストレスが募るだけという結果になりました。 |
一体何が起きているのか分かりませんでした。何一つ理解できませんでした。主人との喧嘩や口論は何ヶ月もの間エスカレートしていくばかりでした。私達はセラピストのところへ通い始めました。時には週に5日、あるいは7日通ったこともあります。 |
私はヒステリックになりました。私は大声でわめき散らし、荒れ狂いました。毎月の妊娠していないことに対する失望は大変なものでした。待って、待って、それから考えました。今度こそは妊娠しているだろう。でもだめかも、いいやそんなことない、多分大丈夫…それから、間違いなく妊娠していないことが分かるんです。私は完全に打ちのめされました。
何もかも、医師の診察を受ける必要がある時やあれやこれやしなければならない時に合わせて予定を組まなければなりませんでした。もうやめてしまいたいと思ったことが何度もあります。主人も同じだったと思います。 |
私は自分に問い続けました。「こんなことするだけの値打ちがあるのだろうか」私が費やした時間やその他の不便さは別にして、5万ドル以上は使いました。それは私達のポケットから払ったお金です。 |
|
|
何度も失敗を繰り返していたので、ロザリンは本当に落ち込んでしまいました。彼女はその時のことをこう言っています。「とうとう仕事を辞めてしまい、家にいました。料理もせず、何にもせず、1日中ただ家でごろごろしていました」 |
ロザリンのような女性の多くが自分達の状態が頭から離れなくなり、自分で不妊の原因を探そうとするようになります。
ロザリンも結局は図書館に行って、自分で調べることを思い付きました。 |
私は、ありとあらゆる不妊の本を見ました。ある本に甲状腺のことが書いてありました。今度は先生が、その検査をすると150ドルもかかるといって難色を示しました。私はこう思ったんです。ここに来る度に500ドルもかかっているんだからあと150ドルくらい余計にかかったってどうってことないじゃないかって。先生が検査をしてくれることになって、それから先生が驚いたことに、私に甲状腺機能低下症があるということが分かったんです。この時は私も腹が立ちました。5万ドルも使う前に、1年早くこの検査をしてくれなかったことに対してです。 |
甲状腺ホルモンを飲み始めると、具合がよくなってきました。−寒気とか、乾燥、髪の毛などです。ちょっとばかり悪くなって、それは2ヶ月ほど続きました。甲状腺ホルモン剤を月曜に飲み始めたら、火曜日には妊娠できるだろうと考えるかもしれませんが、そのようなわけにはいきませんでした。それでも、生涯の内で最悪の状態から抜け出す最初の1歩だったのです。 |
また、自分で調べていなかったら、誰か私の甲状腺の病気を見付けてくれる人がいただろうかとも思いました。甲状腺機能低下症との診断を受ける前に不妊のための手術さえ受けていたんです。今では、そのようなことは必要なかったと思っています。 |
|
|
ロザリンが経験したような不必要な苦しみを避けるため、生殖腺内分泌病専門医に不妊の検査の一環として甲状腺の検査をしたかどうかをたずねてください。していないのであれば、検査をするよう頼んでください。 |