第1部は甲状腺−精神とのつながりについて新しくわかってきた知識と甲状腺ホルモンバランスの乱れが体の健康だけでなく、気分や感情、そして行動に対しても、どれほどの影響を与え得るものかということについて述べております。甲状腺ホルモンバランスの乱れを起こしうる様々なタイプの甲状腺疾患を挙げて、その病気が感情や体の健康に及ぼすと思われる影響の概略を述べております。ここで、甲状腺機能低下症(不活発な甲状腺)や甲状腺機能亢進症(活動し過ぎの甲状腺)の見分け方と正しい診断を得るための医師との協力の仕方がわかるようになっております。第1部では、広範な脳の機能として、脳が甲状腺ホルモンを使うため、神経科学者がどのようにして甲状腺を“付加的な脳”と見るようになったかということも示しました。また、ストレスへとの折り合いのつけ方や健康で安定した気分を維持する方法、そして甲状腺が正しく機能しているか、また適切な量の甲状腺ホルモンが脳に運ばれ、脳内に拡散しているかどうかということに大きく影響される生活への対処法なども学べるようになっております。ストレスと甲状腺ホルモンバランスの乱れは手に手を携えております。甲状腺ホルモンバランスの乱れがストレスの感じ方に影響を与え、ストレスが甲状腺ホルモンバランスの乱れの引き金を引く場合もあります。この甲状腺や免疫系と脳内の化学成分との間の関係は非常に込み入ったもので、それゆえ、ストレスの管理は甲状腺ホルモンバランスの乱れの突発を防ぐためにきわめて大切なことです。多くの医師は身体的影響にのみ注意を向ける傾向がありますが、甲状腺ホルモンバランスの乱れが体や精神にどのように影響するかということも学べるようにしております。 |
また、残念なことに、甲状腺ホルモンバランスの乱れが診断されないままであったり、誤診されたりすることが多いのですが、その様々な理由についても知ることができるようになっています。その理由の一つは、甲状腺ホルモンバランスの乱れに罹っている患者は気分障害や不安の症状を持つことがよくあり、そのためうつ状態や不安症と誤診される場合があるのです。脳内の甲状腺ホルモンバランスの乱れは甲状腺自体の機能不全か、ホルモンが脳内に拡散される道筋が断たれたためかのどちらかが原因となって起こると思われます。どちらにせよ、異なったタイプのうつ病や不安障害が起こることになります。脳内の甲状腺ホルモンのバランスが気分や感情、行動の安定を維持するのに欠かせません。甲状腺ホルモンは本当に抗鬱剤として使うことができます。正しい量の天然または合成のホルモン剤をある種の抗鬱剤と一緒に投与すると、奇跡的と言ってよいほどの気分の高揚が起こる場合があります。これは特にうつ病に罹っていて、プロザックやその他の選択的セロトニン再取り込み阻害剤のような従来の抗鬱剤に完全に反応しない人に本当に起こりうることです。 |
第2部は、甲状腺ホルモンバランスの乱れがどのように体重や性生活、また人間関係に影響するかについて詳しく述べております。甲状腺ホルモンバランスの乱れが私生活を妨げ、性生活や人間関係双方に破滅的な影響を与えることがあるため、このような私生活への影響についてどのように医師と相談すればよいかを学ぶことが大切であります。そのような影響がホルモンバランスの乱れを治療した後になくなるとは限りません。そのため、このような問題に対処し、配偶者に必要な支援を頼むやり方も学ぶことになります。 |
第3部は、女性の健康問題、特に不妊と流産、産後うつ病、そして月経前症候群ならびに更年期について頁を割いております。甲状腺ホルモンバランスの乱れが妊娠可能年齢にある女性の月経前症候群の原因となったり、あるいは症状を悪化させることがあり、また更年期になって女性がどのように感じるかということにも影響してきます。今後20年の内に、4,000万人の女性が更年期に入ることになり、その中の相当数が甲状腺ホルモンバランスの乱れに悩むことになります。閉経した女性のほぼ10から12%が甲状腺機能低下症になります。更年期症状と甲状腺ホルモンバランスの乱れの症状には多くの共通点があるため、女性にとっては、いつ甲状腺の病気を疑い、いつエストロゲン療法を考えるかを知ることが大切なことです。 |
ほんの些細な甲状腺ホルモンバランスの乱れが不妊を引き起こすことがあります。そして、この不妊症により生じたうつ病が甲状腺ホルモンのバランスの乱れで悪化することがよくあります。女性が性欲をなくしてしまうこともあります。
不妊と甲状腺ホルモンバランスの乱れが精神に及ぼす影響の相互作用と、どうしたら甲状腺の病気によって生じる、この費用のかかる悪循環を断ち切れるかということを説明します。 |
第4部は、この『甲状腺の悩みに答える本』の中でもいちばん直接役立つ部分です。
甲状腺がどの程度健康であるかの測り方や甲状腺ホルモンバランスの乱れに悩んでいる場合どうすればよいかということがわかるようになっています。また、簡単にできる様々な自己診断法だけでなく、体の中にどれくらいの甲状腺ホルモンがあるかを測定するのにいちばん多く使われている検査法についても述べております。ここでは、この分野での主な議論の的となっている事柄についても調べております。血液検査では正常だと思われるのに甲状腺ホルモンバランスの乱れが起こりうるのでしょうか?また、将来甲状腺ホルモンバランスの乱れを生じてくるリスクを増大させるような、様々な疾患をまとめております。すでに甲状腺の病気の診断を受け、その治療をしている人も同じ病気に注意する必要があります。 |
甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症の治療中に生じてくる従来の甲状腺治療薬の使用に伴う副作用から、放射性ヨード治療中に起こることのある多くの問題まで、様々な問題の中で主なものもいくつか学んでいただくことになります。 |
あなたの病気にいちばん合った治療をしてもらうためにはどのように医師と協力したらよいかということ、また甲状腺ホルモンバランスの乱れを治療した後に残ることのある記憶喪失やその他の認知障害の予防法も学べるようになっております。このような甲状腺ホルモンバランスの乱れの影響が、治療をして血液検査が正常に戻った後でさえ付きまとうことが何百万人という人に起こっており、その治療を求め続けることが必要な場合があります。私の患者の多くは
私が甲状腺ホルモンバランスの乱れの長期的影響から回復できるよう提唱した“健康サークル”モデルに従うことで効果を上げております。 |
甲状腺機能低下症や甲状腺に関連したうつ病、線維性筋痛、あるいは長引く影響に悩んでいる場合でも、症状を和らげたり、全身の健康を取り戻す方法をずっと捜し求めてきたのであれば、私が2種類の主要な甲状腺ホルモンを組み合わせて開発したまったく新しい治療プロトコールがあなたの甲状腺治療に革命を起こすことになるかもしれません。『甲状腺の悩みに答える本』は、この治療法とその効果を素人向けに解説した最初の本であります。 |
最後に、全体的な甲状腺の健康を維持するための包括的なプランを示しました。毎日あなたが行なう様々なライフスタイルの選択のやり方で、甲状腺ホルモンバランスの乱れを予防したり、あるいは緩和することができます。甲状腺の健康に最適な食餌法を見てみますと、その食餌が偶然ではなく、他の内分泌腺や体の器官の健康をも支えることになります。また、いちばん甲状腺にやさしい栄養と抗酸化剤や必須脂肪酸、および健康食品の効果についても学べるようにしております。甲状腺特異性ミネラルであるヨードと甲状腺に影響を及ぼす可能性のある薬に対しては特に注意を払っております。運動や定期的な身体活動の効果とアルコールやニコチンが特に甲状腺に害になる理由について、さらに詳しく述べております。 |
最終章では我が国の公衆衛生全般に役立つよう、甲状腺と精神、および気分との間の重要なつながりについて、医師や一般の人を教育するための8つの方法を挙げております。患者は甲状腺のルーチンな検査を求め始める必要がありますし、コレステロールレベル検査が当たり前のことになってきているように、一般へのスクリーニング導入が個人的にも、全体的にも大変な利益をもたらすことになるでしょう。 |