ウィッカム(Whickham)研究は、現在存在する論文の中で、スクリーニングで発見された潜在性甲状腺機能低下症患者がどれくらいの頻度で顕性甲状腺機能低下症に進展するのかについての最も信頼おけるものである。ウィッカム研究では、血清TSH6mU/L以上を潜在性甲状腺機能低下症と定義している。血清TSH6mU/L以上を示す女性の2/3が抗甲状腺抗体(MCHA)を持っていた。20年間の観察中に、血清TSH6mU/L以上で抗甲状腺抗体(MCHA)陽性の女性の55%が顕性甲状腺機能低下症に進展した。これらの女性の25%は最初から血清TSH10mU/L以上であった。血清TSH10mU/L以上で抗甲状腺抗体(MCHA)陽性の女性が顕性甲状腺機能低下症に進展する危険率は90%である。
ウィッカム研究では、抗甲状腺抗体(MCHA)陽性を3群に分けている:弱陽性100倍〜200倍、中等度陽性 400倍〜800倍、強陽性800倍以上。この場合の抗体検査は、2倍希釈で行っている。現在は、4倍希釈である。すなわち、100倍未満、100倍、400倍、1,600倍、6,400倍、25,600倍、102,400倍、…となるわけである。しかし、陽性は100倍以上だから、現在と同じである。現在の感覚でいくと、800倍でも弱陽性から中等度陽性と受け取れる。この話は、ウィッカム研究のものであるので、彼らの定義に従うのが妥当であろう。抗甲状腺抗体(MCHA)のみで、20年後の甲状腺機能低下症の発症頻度を比較している。20年の経過観察中に甲状腺機能低下症になる頻度は、1975年の時点で抗甲状腺抗体(MCHA)陰性の場合4%、抗甲状腺抗体(MCHA)弱陽性の場合23%、抗甲状腺抗体(MCHA)中等度陽性の場合33%、抗甲状腺抗体(MCHA)強陽性の場合53%である。 |
|