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甲状腺意識向上月間:2001年<2>

あらゆる年代を通じての甲状腺

出生と乳幼児期(成長)
出生時
北アメリカでは、甲状腺ホルモン欠乏によって発達障害と精神障害を引き起こすクレチン病を見つけるため、生後2日目にヒールパッドテスト<注釈:足の裏に細い針を刺して濾紙に血液を付着させて検査する>による甲状腺機能低下症のスクリーニングがルーチンに行なわれています。治療をしないままでいると、甲状腺機能低下症(不活発な甲状腺)の赤ちゃんにひどい知恵遅れや発育障害、組織や器官の欠陥が起きたり、小人症になることがあります。
アメリカで生まれる赤ちゃんの4,000から5,000人に1人は甲状腺機能低下症です。
新生児の甲状腺機能亢進症はまれで、大抵はバセドウ病の母親からしか生まれません<注釈:これは母親から胎盤を通して甲状腺刺激抗体が移行したために起こります。この抗体は2ヶ月もすると赤ちゃんの体内から消失します。一時的なものですから、ご安心を>。出生時の甲状腺機能亢進症がひどい場合は、赤ちゃんが突出した目やいらいら、赤味の強い皮膚、頻脈を伴なって生まれてくることがあります。
小 児
親は甲状腺疾患が子供の発達時期後半になって出ることもあるということを知っておく必要があります。小児や十代の若者には大人に比べ甲状腺疾患が起きる頻度は低いのですが、それでもこの年代のグループではありふれた病気の原因と考えられています。学校での集中力低下や注意力欠如、説明できない成績の変化、多動性、あるいは説明できない日中の疲労などはすべて甲状腺疾患が原因である可能性があります。甲状腺疾患の家族歴のある子供は特に甲状腺疾患を起こしてくる可能性が高いのです。
糖尿病や慢性関節リューマチ、およびダウン症候群の子供に甲状腺機能低下症が見つかることが多いのです。
甲状腺機能低下症の子供は具合が悪いことを訴えたり、助けを求めたりすることがあまりありません。「正常」とはどういうことかがわからないので、大きな子供であっても自分の感情や体の問題を「正常」だと受け入れてしまう場合もあるのです。
甲状腺機能亢進症の子供は新しい服がすぐに小さくなり、甲状腺機能低下症の子供は成長が遅れます。
甲状腺が腫大したり、甲状腺腫ができたりするのが甲状腺疾患の最初の徴候であることが多いのです。子供と十代の若者では橋本病、すなわち慢性甲状腺が最大の原因です。
他の症状としては、思春期の遅れや永久歯萌出の遅れ、短期記憶の喪失、手の震えや文字がうまく書けない、皮膚が乾燥してかゆい、そして寒さや暑さに敏感になることなどがあります。

子供を産める年代の女性(妊娠)
妊娠中
最近の研究で、妊娠中に未治療の甲状腺機能低下症があると流産のリスクが高くなることが示唆されています。これらの研究に基づき、やがて母親になる人に妊娠前、あるいは標準的な妊婦の初期血液検査の一部としてTSH(甲状腺刺激ホルモン)検査を受けるべきです。
アメリカの女性のほぼ50人に1人が妊娠中に甲状腺機能低下症と診断されます。
甲状腺機能低下症の妊婦は妊娠中期に流産するリスクが4倍になります。
TSHが増すにつれて(これは甲状腺機能が減少することを示します)、胎児死亡率が一定の割合で増加していきます。
流産100症例毎に6例は妊娠中の甲状腺ホルモン不足によるものと考えられています。
妊娠中の甲状腺機能低下症を治療しないでいると、子供の精神発達にマイナスの影響が出て、I.Q.の低下や運動能力、注意力、言語能力、読解力が落ちる恐れがあります。
New England Journal of Medicineに1999年8月18日に発表された研究では、妊娠中に未診断の甲状腺機能低下症がある母親の子供は、知能テストの平均が85以下になる可能性が4倍高いとなっています。I.Q.が85以下の子供は学校についていくのが難しく、仕事の上でも人間関係においてもうまくいかない恐れがあります。
<注釈:このアメリカの研究はその後の検討で、疑問が出されています。日本の百渓先生の反論の論文を参考にしてください>
産 後
甲状腺疾患の症状ははっきり出ないことが多く、うつ病など他の病気と間違えられることがよくあります。出産後数ヶ月以内に産後甲状腺機能障害(あるいは慢性甲状腺炎)と診断される女性もおります。この病気は甲状腺に対する抗体が作られ、それが甲状腺組織を傷つけます。このため、血液中に放出されるホルモンの量が増え、一過性の甲状腺機能亢進症が起こることがあります。
5〜10%の女性が出産後1年以内に産後甲状腺炎と診断されます。
産後甲状腺炎と診断されてから5年以内に約50%の女性が永久的な甲状腺機能低下症を起こしてきます。
産後甲状腺炎の症状には、疲労、うつ病、心悸亢進、いらいらなどがあります。
新たに母親になった女性全員の20%には、出産後に産後うつ病が出ます(産後の憂うつ症)。そして、70%には何らかの形のうつ病が出ます。うつ病は甲状腺疾患の主要な症状であるため、その原因として甲状腺疾患の可能性を知っておく必要があります。
中年(閉経期)
何百万人ものアメリカ人女性がなかなかよくならない更年期様症状に悩まされていますが、実際は甲状腺疾患が原因である可能性があります。皮膚の乾燥やほてり、気分変動、うつ病、体重増加などの更年期症状は、甲状腺機能亢進症や機能低下症の症状にそっくりなのです。甲状腺疾患の症状と更年期が重なり合うことが多いので、この2つの病気が混同され、見つからないままに過ぎることもあります。
女性は男性の5から8倍甲状腺疾患に罹る可能性が高いのです。
甲状腺機能低下症(不活発な甲状腺)の発生率は年齢が進むに連れて高くなってきます。そして、発病のピークは35歳から60歳の間です。
更年期症状のため、女性ホルモン補充療法を受けている40歳以上の女性の3人に1人は、気分変動やうつ病、睡眠障害の症状が続いており、その症状の原因として甲状腺疾患が存在する可能性があります。
長いこと甲状腺疾患が診断されず、未治療のまま放置されると、骨粗鬆症や心疾患のリスクが高くなるコレステロールレベルの上昇など重大な合併症が起きてくる恐れがあります。
更年期の女性はその期間中、最低1度は甲状腺機能検査を受ける必要があります。これは実際には甲状腺ホルモン補充が必要なのに、エストロゲン補充のための薬を出されるようなことがないようにするためです。AACEは、40歳以上の女性全員にTSH検査を受けるよう勧めております。研究でこの年齢グループの女性の10%に未診断の甲状腺疾患があることがわかったからです。
高齢期
一部の高齢者にとっては、疲労やうつ病、忘れっぽさ、不眠、そして食欲や体重の変化が突然起こるため、人生の黄金期が期待はずれのものになってしまいます。ほとんどの高齢者は、本当は甲状腺疾患が元にあってその徴候が出ているのに、誤ってこれが加齢で自然に起きるものだと思ってしまうのです。このような症状を医師に訴える高齢者は、うつ病あるいは軽度の痴呆などと誤診されてしまうことがあります。病気がなければ、加齢に上記の症状がかならず付随するというようなことはありません。年齢が進むに連れて甲状腺疾患の発生率が高くなるため、また60歳以上の女性のほぼ20%に何らかの形の甲状腺疾患があるため、この年齢グループではTSH検査が特に重要となります。
65歳以上の女性の5人に1人は血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH )レベルが高くなっております(甲状腺の機能が落ちてきていることを示すものです)。
高齢者の20〜25%は精神病(うつ病など)の症状に苦しんでおりますが、そのようなケースの一部は甲状腺機能障害に関係している可能性があります。
全甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)患者の約15%は60歳以上です。
65歳以上の患者の甲状腺疾患は、35〜45歳の患者よりも診断されずに見逃されてしまう可能性が高いのです。
高齢患者のほとんどが数年間、甲状腺機能不全の診断を受けないままになっている可能性があるため、コレステロールレベルの上昇や心疾患のリスクが高くなる恐れがあります。その結果、甲状腺が不活発になっている患者は全員脂質レベルのチェックを受け、またコレステロールレベルが高い患者は全員甲状腺機能不全のチェックを受けるようにしなければなりません。

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