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AACE甲状腺認識月間:2002年
田尻淳一 田尻クリニック 熊本

01:『首の世代』:医師は、甲状腺と遺伝の関係を理解してもらうために声を大にして叫びましょう。
http://www.aace.com/pub/press/releases/index.php?r=20020115

毎年一月はAACEの甲状腺認識月間です。

ニューヨーク、2002年1月15日−多 くのアメリカ人は、心臓病や癌は遺伝する可能性があることを知っています。しかし、AACEが行った全国規模のアンケート調査では、国民の3/4(76%)が甲状腺疾患は遺伝することがあるという事実を知らないことが分かりました(1)

この事実を知らない人たちが、甲状腺疾患を持っているかどうかを知るために家族歴を調べる勇気を出し、そして甲状腺疾患の遺伝を理解してもらうために、AACEは『首の世代:甲状腺家系図』というキャンペーンをはります。様々な研究から、甲状腺疾患は、例えばあるタイプの糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、貧血、慢性関節リウマチなどの別の自己免疫疾患と強い関連性が証明されている(2)。事実、1,300万人以上のアメリカ人が甲状腺疾患にかかっており、その約半数は診断されないままでいる(3)

「AACEが今年やるべきことは、自分の家族歴の調べ方を教えること、その家族歴を知ることで甲状腺疾患にかかる可能性を推定できることを国民に対して示していくことです。甲状腺疾患か他の自己免疫疾患を持っている人が家族内にいたら、かかりつけ医に相談して、簡単な甲状腺に関する検査を受けることで甲状腺疾患を持っているかどうかを知ることができる」とAACE会長であるRhonda Cobinは述べている。

健康に対する関心は、その病気が家族性かどうかに向かっている。家庭医学委員会によれば、一般大衆は自分の健康を管理したり、病気を治療する上で重要な役割を果たすようになってきている(4)。自己免疫疾患は遺伝性であるか家族集積性が強いために、AACEでは健康に関して(まだ診断されていない甲状腺疾患の教育も含めて)、家族内で話し合うことを勧めている。

「娘とよく話し合うことが、甲状腺疾患を早期に見つける重要な鍵である。わたしの母が甲状腺機能低下症と診断を受けてすぐに、母とわたしが話し合いを持たなかったら、診断の助けになる症状を知ることもなかったし、わたしの娘も同じように甲状腺機能低下症になる可能性があることを理解することもできなかったでしょう」とニュージャージー州Waldwick在住の甲状腺機能低下症患者Wanda Rockwellは言う。

甲状腺はチョウチョの形をしており、首の「のど仏」と「鎖骨」の間にある臓器です。甲状腺の病気を治療しないで長期間放置していると、高コレステロール血症や心臓病、不妊、筋力低下、骨粗鬆症などの合併症を引き起こす。

「甲状腺疾患患者の子供の50%は、甲状腺疾患の遺伝子を受け継ぐ。甲状腺ホルモンはすべての細胞、組織、臓器にとって必要なものなので、特に疲労、物忘れ、うつ状態、体重や食欲の変化など甲状腺疾患に特徴的な症状があるなら、甲状腺疾患に対する検査を受けることは大切なことである」とメイヨー医学校・内科教授であり、AACE副会長でもあるHossein Gharibは言う。

AACEの調査によれば、半分以上(56%)のアメリカ人は甲状腺疾患の検査を今までに一度も受けたことがない(5)。数百万人の甲状腺疾患患者が診断されないで放置されている事実は、一日一回甲状腺ホルモンを服用し、甲状腺ホルモンを正常にすれば重篤な合併症を防ぐことができるということを知らない人がいかに多いかを示している。

糖尿病と甲状腺の関連
AACEの調査によれば、アメリカ人の79%は甲状腺疾患と糖尿病の関連について知らない(6)。事実、糖尿病患者本人およびその兄弟や両親は一般の人(4.5%)と比べて、甲状腺疾患を持つ頻度が高い(15〜20%)(7)

甲状腺疾患を持つ患者およびその血縁者は、タイプ1といわれる子供や若年者にみられる糖尿病に罹りやすい(8)。同じ人がこの2つの疾患に罹ることは希であるが、家族内のメンバーがこの2つの疾患のいずれかを持っている頻度は一般の頻度より高い。例えば、タイプ1糖尿病と甲状腺疾患は同じ自己免疫疾患であるので、祖母がタイプ1糖尿病を持っており、その孫が甲状腺疾患を持っているということは希なことではない。

慢性関節リウマチと甲状腺の関連
AACEが行ったアンケート(9)から、回答者の90%は慢性関節リウマチを持っている人が甲状腺疾患にかかりやすいということを知らないと判明しているので、関節に炎症を持っている人が甲状腺の検査を受けることは希であるということを聞いても驚きはしない。甲状腺疾患患者の6.7%で肩の関節痛がみられると報告されているが、一般の頻度は1.7%でみられるのみである(10)。症例によっては、甲状腺の病気を治療すると肩の痛みは改善することがある。
慢性関節リウマチ患者は、一般人と比べて甲状腺疾患を持っている頻度が高い。383人の慢性関節リウマチ患者を対象としたある研究によると、9.3%が甲状腺自己抗体を持っていた(11)。慢性関節リウマチ患者では全身の多くの関節、特に指関節、手首、肘などの炎症がみられる。甲状腺疾患を治療すると、これらの関節の炎症は改善することがある<注釈:慢性関節リウマチと甲状腺機能低下症は別の病気であり、これは間違いだと思う。関節痛が甲状腺機能低下症の症状として出ているのなら、理解できるが…>。

貧血と甲状腺の関連
AACEが行ったアンケートによると、アメリカ人の15%が貧血と甲状腺の関連について知っているのみである。しかし、研究によれば、悪性貧血<注釈:胃壁に対する自己抗体のため、ビタミンB12不足になって貧血を起こす病気。「悪性」という名称はもうそろそろ止めるべきである>を持つ患者は甲状腺自己抗体の陽性率が高いことが分かっている。悪性貧血は通常、60歳以上の人に起こりやすく、ビタミンB12不足が原因の自己免疫疾患である。60歳以上という年令は、甲状腺疾患の頻度が増える年令でもある。実際、65歳以上の女性の20%は血清TSH値が増加しており、これは甲状腺機能が落ちていることを示している。
多数の悪性貧血患者を対象とした研究で、約半数(48.3%)が甲状腺疾患を持っていることが分かっている(12)。悪性貧血患者の子供、兄弟、両親、両親の兄弟における悪性貧血の頻度は2.5%であり、一般の頻度の約20倍である。この頻度は、年令や血縁の濃さを考慮するともっと増加する。

その他のAACEによるアンケートで分かったこと(14)
  • 回答者の多くは、多発性硬化症(75%)やてんかん(73%)が遺伝性疾患ではないと回答をしている。しかし、甲状腺疾患は遺伝することもあると回答したのは回答者の24%のみである。
  • 回答者の47%は、甲状腺疾患は女性に多いと回答している。実際、女性は男性の5〜8倍以上頻度が高い。
  • 多くの回答者は、甲状腺疾患の症状として体重増加や減少(70%)、疲労感(62%)があると回答している。しかし、毛髪皮膚そして爪(40%)、うつ状態(37%)、暑さや寒さに弱い(34%)などの甲状腺疾患に伴う症状を知っている人は少なかった。
  • 同様に、一般大衆の多くは甲状腺疾患の合併症について知らない。甲状腺機能と血清コレステロール値の関係を知っていたのは、回答者の28%にすぎない。甲状腺疾患と不妊の関係について知っていたのは回答者の24%で、甲状腺ホルモン値と骨粗鬆症の関係について知っていたのは回答者の22%である。

AACEと甲状腺の自己チェック
血清TSH値は、甲状腺疾患の診断に一番有用な検査であるが、AACEでは“甲状腺の自己チェック”という簡単な自分でできる検査を勧めている。1997年にAACEによって発表されたこの簡単ですぐにできる自己チェックは、甲状腺が腫れているかどうかを知ることができる。もし甲状腺が腫れていたら、かかりつけ医に相談して甲状腺の検査をしてもらうべきである。“甲状腺の自己チェック”のやり方はAACEのウェブサイト(www.aace.com)を訪れると説明してある<注釈:“甲状腺の自己チェック”はわたしのHPで紹介しています>。『首の世代』のキャンペーンの一環として、AACEウェブサイトでは甲状腺疾患の家族歴を書き込むシートや自分自身や他の人が甲状腺疾患と遺伝について勉強するのに役立つ質問状を用意している。

アメリカ臨床内分泌病専門医会(AACE)は1991年に設立された、アメリカ最大の臨床内分泌病専門医の組織です。会員は内分泌疾患を持つ患者の治療に努めている3,500名以上の臨床内分泌病専門医からなっております。当会は内分泌疾患に対する一般の理解と意識を高め、その疾患を診断し、治療する臨床内分泌病専門医の価値を高めるよう努力をしております。

. Dr.Tajiri's comment . .
. 以下も参考にしてください。

甲状腺疾患の家族歴や合併しやすい疾患に関するページです。
甲状腺の病気と合併しやすい病気
あなたの家族はどうですか?
バセドウ病、橋本甲状腺炎、およびいくつかの関連疾患

自己免疫に関するページです。
自己免疫性甲状腺疾患:元は一つ
自己免疫の患者ガイド
自己免疫疾患
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参考文献]・[もどる