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[023]
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甲状腺腫のある患者を診たら
田尻淳一 田尻クリニック 熊本

[1]病歴から考えられる疾患は
甲状腺腫のある患者を診たら、まず、甲状腺全体が腫れているのか、甲状腺にできたシコリかを区別することが重要である。甲状腺全体が腫れている場合(びまん性甲状腺腫)は甲状腺ホルモンが高いか低いか、すなわち甲状腺機能が問題になり、甲状腺にシコリがある場合(甲状腺結節)は悪性かどうかが問題になるからである。甲状腺全体が腫れる疾患と甲状腺のシコリを示す疾患を以下に示す。
甲状腺全体が腫れる疾患
甲状腺にシコリを触れる疾患

[2]見落としやすい疾患は
バセドウ病の5〜10%、甲状腺機能低下症を示す慢性甲状腺炎の10〜20%は甲状腺腫を触れない。そのような場合は、触診のみで診断するには限界がある。このときには、症状が病気の存在を疑わせる重要な要因になる。体重減少、不眠、 疲れやすい、 汗をかきやすい、暑がり、手指振戦、動悸、下痢、 神経質、眼球突出などがバセドウ病を疑わせる。反対に、寒がり、 体重増加、便秘、集中力低下、乾燥肌、脱毛、浮腫、嗄声、物忘れ、意欲低下などの症状は甲状腺機能低下症を疑わせる。甲状腺機能異常を疑ったら、甲状腺機能検査をオーダーすることが大切である。内分泌の病気は、疑えば診断は90%付いたようなものである。あとは、結果を見れば医学部を出たばかりの研修医でも診断ができる。甲状腺腫のないバセドウ病や慢性甲状腺炎では、病気を疑わない限り甲状腺機能異常は発見できない。

[3]診察のポイントは
正常では甲状腺は軟らかいために触知しない。もし、甲状腺を触れたら甲状腺の病気を持っていると考えて間違いない。診察の第一歩は、甲状腺の触診をしっかりすることである。基本的には2つのポイントがある。男性と女性では甲状腺の位置が違うこと、輪状軟骨を確認することである。びまん性甲状腺腫にしても甲状腺結節にしても、大きいものは目で見て分かる。
  1. 『男性と女性では甲状腺の位置が違う』
    男性は女性と比べて、甲状腺の位置が低い【図1】。そのため、触診が難しいことがある。
  2. 『輪状軟骨の確認』
    甲状軟骨の下にある輪状軟骨をまず確認する。両手の親指の腹を輪状軟骨の下で気管の両側にあて、気管壁に沿って下へ移動させ、気管壁の外壁がたどれなくなったときや左右差を感じたら、その部位から辺縁をたどっていく。びまん性の小さい甲状腺腫は、気管壁をたどっていって厚みを感じたら、そこで患者さんに唾を飲み込んでもらう。甲状腺腫が気管と一緒に持ち上がってくるので、確認できる。燕下運動で上下しないものは甲状腺以外のものである。シコリ(結節)の場合は、指に左右差を感じるので分かりやすい。
【図1】
図1
現在では、超音波でびまん性甲状腺腫や甲状腺結節の体積が簡単に測れるようになっている。しかし、触診による甲状腺腫の大きさをカルテに記載すべきである。この大きさが、今後の経過をみていく上で基準となる。びまん性甲状腺腫では、甲状腺両葉の縦径と横径の長さを、甲状腺結節では、縦径と横径の長さを記載する。

次に、びまん性甲状腺腫と甲状腺結節の触診所見について簡単に述べる。
甲状腺全体が腫れる疾患
バセドウ病
若い人では甲状腺腫は軟らかいことが多く、中年以降は甲状腺腫が硬いこともある。男性は、胸鎖乳突筋の発達した人は触れにくいので、燕下などしてもらって注意深く触診することが必要である。このことは全ての甲状腺腫の触診で共通した注意事項である。
慢性甲状腺炎
基本的には、甲状腺腫は硬い。表面の凹凸があったり、結節のように触れることもある。そのような場合には、超音波で確認する必要がある。
単純性甲状腺腫
軟らかく小さな甲状腺腫である。慢性甲状腺との鑑別は、触診では不可能である。
亜急性甲状腺炎
痛みを伴う甲状腺腫なので、診断は簡単である。しかし、稀に痛みのない亜急性甲状腺炎がみられ、この場合は硬い甲状腺腫を触知し、甲状腺癌との鑑別に穿刺吸引細胞診を必要とする。
甲状腺にシコリを触れる疾患
甲状腺以外の腫瘍は、燕下運動で動くことはない。甲状腺結節の触診で良性・悪性の鑑別には、結節の大きさ、硬さ、周囲組織との癒着、表面が平滑か不正であるか、形が球状であるか不整であるかなどであるが、例外も多い。結節が、単発性か多発性かは良性・悪性の鑑別には重要である。結節が多発している場合は、癌のことは少なく、たいていは腺腫様甲状腺腫である。
腺 腫
球形をしており、表面が平滑で、上下によく動く。ほとんどは単発性である。大きなもの、最近大きさが増大してきているものは濾胞癌の可能性がある。
嚢 腫
嚢腫はしばしば周囲炎や内部への出血を繰り返すうちに硬度を増し、気管と癒着して動きが悪くなり、癌と間違いやすい。しかし、一般的に表面が平滑である。
腺腫様甲状腺腫
しばしば両葉に結節を多発性に触れる。単発性のこともある(腺腫様結節)。甲状腺がびまん性に腫大して触れることもあり、慢性甲状腺炎との鑑別が触診では難しいことがある。腺腫様甲状腺腫では、時として大きく腫大することがあり、前縦隔に腫大が及び、甲状腺下縁を触知出来ない。このようなことは、慢性甲状腺炎ではめったにないので、腺腫様甲状腺腫の可能性が高い。
甲状腺癌
触診上、癌を疑わせる所見としては、硬い、可動性がないこと、転移リンパ節を触れるなどである。しかし、硬い、可動性がないことなどの点から癌と紛らわしいものとしては、結節状に触れる慢性甲状腺炎、痛みのない亜急性甲状腺炎、発生してから長期間経っている嚢腫がある。

乳頭癌は上記の癌の触診所見が一番みられるものである。濾胞癌は触診上では、良性結節の所見を呈し、触診で癌を診断することは難しい。髄様癌は頻度も少なく、触診で診断するのは困難である。未分化癌は急速に増大し、受診時にはすでに気管圧迫症状として呼吸困難などが出現していることがある。
悪性リンパ腫
急速な甲状腺腫大が特徴である。甲状腺腫大は片葉のこともあり、両葉のこともある。未分化癌と比べて、炎症所見がないことも特徴である。慢性甲状腺炎を発生素地としているので、慢性甲状腺炎と触診所見が似ており、紛らわしいことがある。

[4]最低限度必要な検査は
甲状腺全体が腫れる疾患
この場合は、甲状腺機能が問題になるので、甲状腺ホルモンを調べるのは当然である。FT4とTSHだけで十分である。しかし、甲状腺結節の合併もあるので、一度は甲状腺超音波をすべきである。
FT4高値、TSH低値の場合
甲状腺ホルモンが高いとき、一番よく見られるのはバセドウ病である。バセドウ病の診断には、TSHレセプター抗体(TRAb)が必要である。最近は甲状腺刺激抗体(TSAb)もコマーシャルベースで測定可能になり、保険も適応されている。しかし、この2つの抗体を同時に測ることは保険で認められていない。最初は、どちらかの抗体を測るべきである。

TSHレセプター抗体や甲状腺刺激抗体が陰性の場合、無痛性甲状腺炎との鑑別が必要になる。この場合、症状が強ければ、バセドウ病として抗甲状腺剤で治療開始してみる。経過をみれば、無痛性甲状腺炎なら2〜3ヶ月で甲状腺機能低下症になるのですぐ分かる。理想的には、123-I摂取率をすれば、100%鑑別できるが、どこでもできる検査ではないので、上記のやり方が実際的であろう。症状が軽ければ、抗甲状腺剤を投与しないで経過をみる。また、抗甲状腺剤の副作用が心配な場合は、ヨードカリウムを使用する。

亜急性甲状腺炎の場合には、有痛性の甲状腺腫なので触診で診断がつく。検査は血沈、CRPなどの炎症反応をみれば十分であろう。理想的には、123-I摂取率で低値であることを確認したいが、実際問題として難しいであろう。一応、慢性甲状腺炎の急性増悪との鑑別のためにマイクロゾームテスト(MCHA)、サイロイドテスト(TGHA)を調べておく方がよい。最近は、感度のいい抗TPO(甲状腺ペルオキシダーゼ)抗体や抗サイログロブリン抗体なども保険適応になっている。。
FT4正常、TSH低値の場合
この場合を潜在性甲状腺機能亢進症と呼ぶ。基本的には、検査は上記の場合と同じである。
FT4正常、TSH正常の場合
この場合は、慢性甲状腺炎がほとんどであろう。検査する項目は、上記に述べたようにマイクロゾームテスト(MCHA)、サイロイドテスト(TGHA)である。感度のいい抗TPO(甲状腺ペルオキシダーゼ) 抗体や抗サイログロブリン抗体を測るとよりよいが、マイクロゾームテスト(MCHA)と抗TPO(甲状腺ペルオキシダーゼ)抗体は同時には測れない。保険で認められていないのである。同じ理由で、サイロイドテスト(TGHA)と抗サイログロブリン抗体は同時には測れない。通常は簡単なマイクロゾームテスト(MCHA)、サイロイドテスト(TGHA)で十分と考える。これらが陰性の時に抗TPO(甲状腺ペルオキシダーゼ) 抗体や抗サイログロブリン抗体を測るというのがいいであろう。感度が一番いいのは抗サイログロブリン抗体である。

上記の甲状腺自己抗体が陰性なら単純性甲状腺腫という診断名になるが、多くは抗体陰性の慢性甲状腺炎と思われる。
FT4正常、TSH高値の場合
この場合を潜在性甲状腺機能低下症という。検査項目は基本的には次に述べるFT4低値、TSH高値の場合と同じである。そちらをみて欲しい。
FT4低値、TSH高値の場合
この場合も、ほとんどは慢性甲状腺炎である。検査はマイクロゾームテスト(MCHA)、サイロイドテスト(TGHA)、抗TPO(甲状腺ペルオキシダーゼ) 抗体や抗サイログロブリン抗体である。保険で認められている抗体検査の組み合わせは、上記に述べたとおりである。
甲状腺にシコリを触れる疾患
基本的には、触診、超音波、穿刺吸引細胞診で診断がつく。診断が難しいのは、濾胞癌である。幸いに、日本では濾胞癌の頻度は甲状腺癌のうち3〜4%と少ないことである。甲状腺癌の頻度は触診可能な甲状腺結節の5%である。まず、ほとんどは良性結節であることを念頭に置いていただきたい。シンチグラムでは良性・悪性の診断はできないので、高価な検査でもあり、最初からしてはいけない。同様にCT、MRIもルーチンに行うべきではない。専門医と相談して、行うべきである。甲状腺癌を疑えば、胸部X線を取り、肺への転移の有無をみるべきである。

機能性甲状腺結節があるので、一度はFT4とTSHは測定すべきである。これは、あとで述べるチラーヂンSによるTSH抑制療法を行う上にも必要である。すでに、TSHが抑制されている結節にはTSH抑制療法の適応がないからである。

わたしは、初診時にはサイログロブリンを測定している。これは、良性・悪性の診断には役立たないが、異常高値を示す場合には濾胞癌も考慮に入れる。髄様癌を疑ったら、カルシトニンを調べる。

[5]治療法および治療薬の選択は
甲状腺全体が腫れる疾患
バセドウ病
薬物療法、放射性ヨード治療、手術が治療の3本柱である。薬物療法、放射性ヨード治療、手術の長所と短所を【表】に示す。それらを考慮して、患者さんを交えてよく治療法の長所と短所を説明して、最終的には患者さんに治療法を選択してもらうべきである。医師の独断で治療法を決めるべきではない。ただ、二つの抗甲状腺剤で副作用が出た場合には、放射性ヨード治療か手術を選択しなければならないが、年令、他疾患の有無などを考慮に入れて、患者さんに一番いいと思われる治療法を勧める。この場合も、きちんとその治療法を勧める理由を説明するのは当然のことである。
【表】治療法の比較
  抗甲状腺剤治療 放射線治療 外科治療



  • あらゆる年齢
  • 妊 婦
  • 甲状腺の腫れが小さい人
  • 病気の程度が軽い人
  • 高齢者
  • 心臓や肝臓の悪い人
  • バセドウ病手術後に再発した人
  • 薬で治りにくい人
  • 薬の副作用が出た時
  • 若い人
  • 甲状腺の腫れが大きい人
  • 甲状腺癌の疑いがある時
  • 早く治りたい人
  • 薬で治りにくい人
  • 薬の副作用が出た時


  • 簡単
  • 日常生活が可能
  • 甲状腺の腫れが小さい人
  • 薬の量を加減できる
  • 早く治る
  • 癌・白血病にならない
  • 生まれてくる子供に影響がない
  • 早く確実に治る
  • 再発が少ない


  • 治りにくい
  • 長期間かかる
  • 副作用がある
  • 効き方が不確実
  • 甲状腺機能低下症になる
  • 施設が限られる
  • 手術の傷が残る
  • 後遺症がある
  • 入院を要する
薬物療法は抗甲状腺剤であるメルカゾールPTU(チウラジールまたはプロパジール)が使用される。日本では切れ味がいいので、メルカゾールが好んで使われる。アメリカではPTUを好んで使われる。どちらでもいいと思う。好みの問題である。抗甲状腺剤には服用2〜3ヶ月以内に副作用が出やすいことはよく説明しておく。具体的にどのような副作用(じんま疹、無顆粒球症、肝障害など)であるかも説明する。その他に、ヨード剤、ベータ遮断剤を補助療法として使うこともある。甲状腺ホルモン値が高い時期に、精神的に不安定なばあいには精神安定剤を使用する。不眠があれば、積極的に眠剤を使用する。

放射性ヨード治療は、平成10年6月から13.3mCi(500MBq)までなら、外来で治療可能になったので、患者さんにとっては福音である。無駄な入院が避けられるからである。このことは、医師はもっと患者さんに知らせるべきであろう。一部の医師は、入院させるために外来治療ができるようになったことを患者さんに説明しないものもいると聞く。このようなことはあってはならないことである。放射性ヨード治療の欠点は10年後に約50%の人が甲状腺機能低下症に陥ることである。このことは、治療前に患者さんにちゃんと話しておく必要がある。このことを説明していないと、後々、トラブルのもとになることがある。

手術は甲状腺専門外科医が行えば、確実にそして安全に行える。しかし、術後副甲状腺機能低下症、反回神経麻痺などの後遺症は皆無にはならない。それと、約10%で再発をするという欠点がある。再発すると、放射性ヨード治療で治療する。アメリカでは、再発をさせないために全摘する。この場合は、術後に100%が甲状腺機能低下症になる。日米の手術法のどちらがいいかは分からない。これも患者さんの希望を聞いて、決めるべきであろう。
慢性甲状腺炎
甲状腺腫が大きいとき、甲状腺機能低下症のあるときにはチラーヂンSを使用する。潜在性甲状腺機能低下症に対しては、TSHが10mU/Lを越えたら、チラーヂンSによる治療を開始すべきという考え方が主流になった。
亜急性甲状腺炎
軽い場合は、アスピリン2〜3g/日を投与する。症状が強い場合には、躊躇なく副腎皮質ホルモン剤を使用すべきである。30mg/日から始めて、漸減しながら6週間で中止する。このような治療では、約2割が副腎皮質ホルモン剤を中止したら、また痛みを訴える。その場合には、また30mg/日から始めて、6週間で中止する。このやり方だと、8割の患者は不必要に長期間、副腎皮質ホルモン剤を飲むことから免れる。副腎皮質ホルモン剤を投与するときには、胃薬を一緒に服用してもらう。不眠を訴えた場合には、眠剤を投与する。副腎皮質ホルモン剤をこの程度の短期間投与するときに問題になる副作用は、胃腸障害と不眠である。
甲状腺にシコリを触れる疾患
腺 腫
充実性の結節に対しては、チラーヂンSによる【TSH抑制療法】を試みるべきである。わたしの経験では、TSHが十分に抑制されていれば、約30%の症例で腫瘍の体積は50%以下になる。医学的に効果ありと判断するのは、腫瘍の体積は50%以下になった場合である。効果ありと判断した中で、最初の腫瘍体積が一番大きかったひとは83.0mlである。あと50ml前後の人が2〜3人いる(実際に治療した人の超音波を提示る)。米国のGharibとMazzaferriは最近の総説(Ann Intern Med 1998; 128: 386-394)で、大きな結節にはチラーヂンSによるTSH抑制療法は効かないと記載しているが、私はまず試みる治療法と考える。
【TSH抑制療法】
TSH抑制療法
嚢 腫
2〜3回の穿刺吸引(月1回のペースで)のみで、85%の症例で体積が30%以下になる。以上の理由から嚢腫に対しては、わたしは経皮的エタノール局注療法(PEIT)は行わない。効果が同じであるからである。安全な穿刺治療の方が優れていると考える。
腺腫様甲状腺腫
チラージンSによるTSH抑制療法と穿刺療法で治療する。
良性結節に対する上記の治療を3〜6ヶ月続けてもサイズが変わらなければ、経過観察に切り替える。腫瘍径が5cmを越えるものや超音波で濾胞癌が疑われるもの、治療中にシコリが増大してくる場合には手術を勧める。
甲状腺癌
甲状腺癌は基本的には手術である。手術後にチラーヂンSを服用する。広範囲に甲状腺を切除するため、甲状腺機能低下症になっているので服用が必要となる。チラーヂンSによるTSH抑制療法が甲状腺癌の再発を予防する効果については、まだ結論が出ていない。TSHを抑制する量のチラーヂンSを投与すると心臓や骨に悪影響を及ぼす可能性があるので、TSHを正常にする量のチラーヂンSを投与するのが無難であろう。術後副甲状腺機能低下症があれば、ビタミンDを投与する。

甲状腺癌が遠隔転移していれば、甲状腺全摘後に放射性ヨード100mCiを服用して内部照射で治療する。転移巣に取り込むうちは、毎年治療を続ける。
悪性リンパ腫
通常は放射線の外部照射で治る。病期によっては抗癌剤を使用する。通常はCHOP療法である。
未分化癌
抗癌剤も効果はない。放射線頻回投与も一時的には効くだけである。

[6]専門医に送るときとは
甲状腺全体が腫れる疾患
バセドウ病
無痛性甲状腺炎との鑑別が難しいとき、甲状腺中毒症の症状がひどいとき、甲状腺眼症があるときなどである。しかし、抗甲状腺剤の副作用が出る可能性のある投薬開始2〜3ヶ月間は、甲状腺専門医が治療することが望ましい。そのあとは、近くの内科医に紹介して服薬を続けてもらう。4〜6ヶ月ごとに専門医が診察を行いながら、抗甲状腺剤を減量、中止にもっていく。中止時期は専門医が決定することが望ましい。
慢性甲状腺炎
甲状腺腫が非常に大きいとき、甲状腺機能低下症のひどいときなどであろう。年に一度は、超音波で甲状腺内に結節がないことをみる必要がある。これは、専門医がみるべきである。
亜急性甲状腺炎
ステロイドを使用する場合には、一度専門医と相談して決めるべきであろう。アスピリンでいいような軽症例にはステロイドは使うべきではない。
甲状腺にシコリを触れる疾患
良性結節
触診で触れる結節は、すべて専門医に一度は紹介すべきである。超音波、穿刺吸引細胞診で癌かどうかをちゃんと診断しておくことが大切である。特に、触診で上記に述べたような癌の所見があるときには特に、専門医の診察が必要になる。
甲状腺癌
すべて専門医に紹介すべきである。組織型を決めることが治療法を決める上でも重要である。

[7]その疾患に使用してはいけない薬剤は
授乳時および妊娠時にはアイソトープカプセルは投与してはいけない。乳児や胎児がアイソトープにより甲状腺を破壊され甲状腺機能低下症になるからである。

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