アルゼンチンのグループは、最新のアメリカ甲状腺学会誌に顕性および潜在性甲状腺機能低下症が妊娠に与える影響について報告している(M.
Abaloich et al. Thyroid 12: 63-68, 2002)。甲状腺機能低下症を持つ妊婦114人(16〜39歳)の150妊娠の結果について検討した。51(34%)妊娠では、妊娠中、甲状腺機能低下症であった。内訳は顕性16妊娠(T4:2.44±0.7μg/dl、TSH:33.4±8.43mIU/L)、潜在性35妊娠(T4:6.93±1.88μg/dl、TSH:12.87±8.82mIU/L)であった。99妊娠では、甲状腺ホルモン剤で治療していたので甲状腺機能は正常であった。甲状腺ホルモン剤による治療が不十分であった場合には、顕性甲状腺機能低下症では60%が流産、20%が早産、満期産が20%、潜在性甲状腺機能低下症では71.4%が流産、7.2%が早産、満期産が21.4%であった。甲状腺ホルモン剤による治療がうまくいっている場合には、顕性甲状腺機能低下症では100%、潜在性甲状腺機能低下症では90.5%が満期産であり、どちらにも流産はみられなかった。妊娠時に甲状腺ホルモン剤治療で甲状腺機能が正常であった妊婦では、流産が4%、早産が11.1%、満期産が84.9%であった。妊娠前に甲状腺ホルモン剤で治療していた人では、69.5%が甲状腺ホルモン剤の服用量を増やす必要があった(平均46.2±29.6μg/日)。生後、経過をみることができた126人の新生児のうち110人は満期産で、16人が早産であった。8人(6.3%:4人は早産であった)が先天性奇形をもっており、そのうちの4人は死亡した。
結論として、彼らは「妊娠がどのような転帰をとるかを決定するのは、甲状腺機能低下症が顕性か潜在性かではなく、治療がうまくいっているかどうかである。妊娠中に甲状腺ホルモン剤で適正な治療を行っていれば、リスクを最小限に抑えることができ、通常は問題もなく満期産を迎えることができる」と締めくくっている。 |