癌細胞を完全に切除できなかった症例に対する放射性ヨード(131-I)治療 |
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放射性ヨード(131-I)治療の効果は、いかに癌細胞の中に放射性ヨード(131-I)が取り込まれ、そこでどれくらいの期間とどまるかで決まる。転移の1/2〜2/3は、放射性ヨード(131-I)を取り込むが、残りの症例では治療前にいかに細心の注意をして<注釈:甲状腺ホルモン剤を中止し、ヨード制限すること>大量の放射性ヨード(131-I)を投与したとしても、治療効果を発揮するのに十分な癌細胞への放射性ヨード(131-I)の取り込みは期待できない(82-84)。この癌細胞への取り込みの低下は、40歳以上の患者やHurthle細胞癌<注釈:濾胞癌の一種>の患者でみられることが多い(84)。一部の甲状腺癌、特にステージの高い進展した甲状腺癌では、ナトリウム-ヨードシンポーター(hNIS)遺伝子<注釈:ヨードを甲状腺内に取り込む働きをする蛋白を作る遺伝子>が少ない(85,86)。ナトリウム-ヨードシンポーター(hNIS)の転写後の異常がナトリウム-ヨードシンポーター(hNIS)の働きを阻害している可能性もある(87)。 |
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一日約50μgにヨード摂取を制限すれば、放射性ヨード(131-I)摂取率が増加し、100mCiの131-Iを投与した場合、甲状腺への照射量は2倍に増える(88)。しかし、131-Iの排泄が延長するために体全体の放射線被曝量が増えるかもしれない。ヨード制限は単調な食事を強いられることになるが、一日約50μgのヨード摂取は、ヨード含有食塩、乳製品、卵、魚などの海産物を制限することで達成できる(89)<注釈:日本ではこの量のヨード制限は不可能である。なぜなら、日本でできる作物にはすべてヨードが含まれている。どうがんばっても一日約200μgが精一杯ではないでしょうか。以前、野口病院で入院中のヨード制限食をしている患者さんの尿中ヨードを測定しましたが、200μg前後でした>。ヨード制限は放射性ヨード(131-I)治療2週間前から始め、治療後数日間は続けるべきである。利尿剤も使用されることがあるが、通常は不必要である(89)。甲状腺癌生存者協会(Thyroid
Cancer Survivors Association)から出版されているヨード制限食に関する本(90)が役立つと思う。 |
癌細胞を完全に切除できなかった症例に対する放射性ヨード(131-I)治療の効果 |
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放射性ヨード(131-I)治療は、甲状腺があった場所に癌がある場合や転移がある場合に適応がある(91)。手術が一番最良の治療法であるが、もし手術ができない場合、癌細胞が放射性ヨード(131-I)を取り込むなら放射性ヨード(131-I)治療が適応になる(6)。1,599人の分化型甲状腺癌を対象にした大規模研究で、放射性ヨード(131-I)治療は生存率に影響を及ぼす一番重要な因子であることが報告されている(92)。低リスク群の分化型甲状腺癌では、甲状腺ホルモン剤投与のみと比べると放射性ヨード(131-I)治療を受けたグループの方が再発や死亡が有意に低いことが分かっている(p<0.001)。しかし、高リスク群の分化型甲状腺癌患者では放射性ヨード(131-I)治療は、ほんの少しだけ利益があるだけである(92)。1,510人の遠隔転移のみられない分化型甲状腺癌を分析した結果では、放射性ヨード(131-I)治療は癌細胞を完全に切除できなかった症例に対して、再発、遠隔転移、癌死を有意に減少させる独立した因子であることを、我々は報告している【表2】。 |
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放射性ヨード(131-I)治療には3つの方法がある。1番目は経験的な固定量を投与する方法、2番目は血液と全身の放射線量を測定して投与量を決める方法、3番目は腫瘍の放射線量を測定して投与量を決める方法である(65)。 |
[固定量を投与する方法] |
この方法が最も一般的で、簡単である。利点は、簡便さと安全性である。欠点は、癌細胞を破壊するのに不十分な投与量になる可能性である(23)。手術するには小さすぎる頸部リンパ節転移に対しては、100〜150mCiで治療する。甲状腺被膜を破って癌細胞が浸潤している症例には、150〜200mCiを投与し、遠隔転移のみられる症例には通常200mCiを投与するが、重篤な放射線障害や重要な臓器へのダメージは起こらない(44,65)。著明に放射性ヨードを取り込む肺転移に対しては、肺へのダメージを避けるために48時間後に全身の放射線量が80mCi以下になるように投与する。200mCi投与すれば、肺へのダメージを避けることができる(91)。小児に対する放射性ヨード(131-I)治療は症例数が少ないが、別の部位の癌になる危険性が少し増すだけで、肺転移やリンパ節転移に対しては有効である(91)。Reynolds(93)は、小児に放射性ヨードを投与する場合、成人投与する場合と同じで、体重や体表面積によって照射量を決める。体重が10kg、25kg、40kg、55kg、70kgまたは体表面積が0.4m2、0.8m2、1.2m2、1.4m2、1.7m2の場合、投与量はそれぞれ成人の投与量を1とすると0.2、0.4、0.6、0.8、1.0を投与する(91)。癌細胞を破壊するには、24時間後に投与した放射性ヨードの少なくとも0.1%が腫瘍に取り込む必要がある。しかし、肺転移があり、診断時に放射性ヨードの取り込みはなくても血清サイログロブリン(Tg)が高値なら、治療量の放射性ヨードを投与すればそのときの肺への取り込みは少なくても治療できる(57)。 |
[腫瘍の放射線量を測定して投与量を決める方法] |
2番目の方法は、腫瘍の放射線量を測定して投与量を決めるやり方である。この方法は、固定量を投与するやり方から比べると、不十分な場合や過剰投与を避けることができるので、好まれることがある。投与量は骨髄抑制などを起こす危険量を考慮せずに、リンパ節転移や遠隔転移巣に合わせた投与量を決めることができる。測定は一日一回以上、72〜96時間まで外来で行われる(91)。腫瘍への照射量が3,500rad(35Gy)以下なら、効果はないので、そのような症例では手術、外照射、内科治療を考慮すべきである(23,65)。ある研究では(23)、リンパ節転移が計算上8,500rad以上照射された症例の74%で治療が成功した。リンパ節転移に対しては、病変部に少なくとも14,000rad照射すれば、84%の患者で治療がうまくいく。病変部への照射が8,000rad以下だと、治療の成功率が低下する(23)。目的部に30,000radの照射をすれば、入院患者で84%、外来患者で79%が残置甲状腺を一回の放射性ヨード投与で破壊できる(23)。照射量を決めるためには、腫瘍や残置甲状腺のサイズを計算する必要があるが、肺のびまん性転移ではサイズの計算はできない。このような症例では、骨髄抑制の来ない最高量の投与をすることになる。 |
[血液と全身の放射線量を測定して投与量を決める方法] |
3番目の方法は照射量を計算して、安全な放射性ヨード最大量を投与するやり方である。Benuaらによるパイオニアー的研究(94)により、血液に200radを越える照射を受けたとき、300mCi以上を服用したとき、治療48時間後の全身の放射線量が150mCiを越えているときには重大な副作用がでることが分かった。300mCiという限度量が決められた根拠は、300mCi以上を服用した29例中8例(28%)に重大な生命を脅かす副作用が出たが、300mCi未満を服用した93例では6例(6%)にのみ、そのような重篤な副作用がみられたという報告から導き出されたものである。一人の患者では、血液への照射や治療48時間後の全身の放射線量はクリアーしていたが、投与量が300mCi以上投与したことで重篤な副作用を起こしていた。この患者は骨転移を持っており、324mCiを服用したが、血液への照射は170rad、治療48時間後の全身の放射線量は81mCiであった。治療48時間後の全身の放射線量が120mCi以下である場合、またはびまん性肺転移があるときは治療48時間後の全身の放射線量が80mCi以下である場合、現在の血液への照射の許容量は200radである(95)。このような大量投与した場合の重篤な副作用は希であるが(96)、なくならない(97)。 |
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放射性ヨード治療を行う1週間前から炭酸リチウム<注釈:商品名リーマス、通常、うつ病の治療に使う>を一日300mg(または10mg/kg、一日1〜3回に分けて)投与すると、正常甲状腺組織の取り込みは少し増すだけだが、転移巣の取り込みは有意に増加させる。リチウムは正常甲状腺や癌細胞からヨード放出を阻害することで細胞内にヨードを蓄積させる作用がある(98)。他の臓器の被爆量を増やさないで、腫瘍への放射線照射(ヨードの生物学的半減期は6日未満である)が増加する。腫瘍への放射線照射は、ヨードの生物学的半減期が3日未満の場合に一番多い(98)。リチウム投与中は、放射性ヨードの貯留は腫瘍において50%増し、残置甲状腺において90%増す。転移巣においては、通常のやり方の2倍の照射量を与えることができる(98)。血清リチウム濃度は、毎日測定すべきで、0.8〜1.2nmol/Lの間に保つ必要がある。リチウムは、治療後も5〜7日間投与することもあるが、放射性ヨード治療直後には血清リチウム濃度を測定することはできないので、この時期は注意深く観察してリチウム中毒を起こさないように注意する必要がある。 |
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放射性ヨードを取り込まない分化型甲状腺癌患者のほんの一部にとって、レチノール酸(ビタミンA)は利益をもたらす可能性がある。レチノール酸(ビタミンA)は試験管内の実験で、濾胞癌の再分化<注釈:正常甲状腺の機能を一部持つようになること>を引き起こすことが分かっている。どんな治療もできない分化型甲状腺癌患者12人にレチノール酸(ビタミンA)を経口で最低2ヶ月間投与すると(1.18±0.37mg/日)、2人で有意に癌細胞に放射性ヨードの取り込みがみられるようになり、3人ではほんの少しであるが放射性ヨードの取り込みがみられるようになった(99)。放射性ヨードの取り込みは血清サイログロブリン(Tg)の増加を伴っていた。これは、腫瘍細胞の再分化を示している。 |
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200mCi以上の放射性ヨード(131-I)を投与された場合、2/3が頭痛、吐き気、嘔吐などの軽度の放射線障害がみられる。これらの症状は、放射性ヨード(131-I)服用4時間後から出始め、24時間以内に消失する(65,96)。 |
[放射性ヨード治療時の放射線被爆による軟部組織への障害] |
放射性ヨード治療の最も重要な急性副作用は、放射性ヨードにより引き起こされる腫瘍の浮腫と出血である。この急性副作用は投与してすぐ起こり、特に脳、脊髄、気道の転移巣に起こると重大な問題を引き起こす可能性がある(100)。副腎皮質ホルモン剤やマニトールを放射性ヨード治療前に投与するとこの障害を最小限に食い止めることができるかもしれないが(101)、患者は入院させて、注意深く観察するべきである。脊髄転移巣は外科的にできるだけ切除して、放射性ヨード治療を行う方が賢明である。手術可能な部位の脳転移に対しては、外科的切除で治療する方がいいかもしれない(102)。放射性ヨード治療後すぐに遠隔転移している場所に痛みを訴えることがある。これは、放射性ヨード被爆による炎症のためである。放射性ヨード被爆による炎症は、放射性ヨードを取り込む大きな甲状腺組織が声帯や反回神経に近接していたら、声帯麻痺を起こすかもしれない(65,101)。大量の放射性ヨード服用後に2例で一過性の顔面神経麻痺を起こしたと報告されている(103)。これは、顔面神経が耳下腺の近くを通っているために引き起こされたと考えられる。 |
[放射線被爆による甲状腺炎] |
大きな残置甲状腺組織が残っていて、約50,000rad(500Gy)の照射を受けた場合、20%の患者で放射線被爆による甲状腺炎が起こる(43,104)。放射線被爆による甲状腺炎は放射性ヨード治療後一週間以内に起こる。症状は、頸部および耳の痛み、燕下痛、甲状腺の腫れや圧痛、一過性の甲状腺中毒症<注釈:甲状腺ホルモンが高くなること>である。軽度の痛みならサリチル酸<注釈:アスピリンのこと>、非ステロイド系鎮痛剤、アセトアミノフェンなどで治まるが、強い痛みや腫れに対しては副腎皮質ホルモン剤を必要とする。 |
[放射線被爆による唾液腺炎と舌の症状] |
耳下腺や顎下腺に起こる唾液腺炎は、放射性ヨード治療を受けた患者の33%くらいに起こり、急性と慢性がある(105)。症状は放射性ヨード治療後24時間以内に起こり、甲状腺組織にほとんど取り込まない患者に大量の放射性ヨード治療を投与した場合に起こりやすい(105)。放射性ヨード治療時にチューインガムをかんだり、レモンキャンディーをなめたり、水分を摂取することで唾液腺炎や口内乾燥感<注釈:唾液が出ないために口の中がカラカラになる>を予防できるかもしれない。一過性の舌の痛みや味覚障害が起こることもある(105)。食事のときに食物残査が導管に詰まったときに一時的唾液腺が腫れて痛くなることが、数ヶ月間、断続的に起こるかもしれない。栓としての食物残査が圧力で抜けて、溜まった唾液が一気に出るときには塩味がするが、その味は自然に消失する。これらの症状があるにもかかわらず、特別な治療は必要ないし、通常は一年以内に症状は自然に消失する。しかし、一部の人では口内乾燥感がずっと続くこともある。実際には放射性ヨード治療を受けた患者の半数以上で唾液腺分泌異常があり、再発性の結膜炎も報告されているが、それらは臨床上問題になるようなものではない(105)。 |
[放射性ヨード治療の急性骨髄障害] |
放射性ヨード治療後に血小板や白血球の軽度減少がみられるが、一過性であり症状が出ることはない(96)。大量の放射性ヨード投与後に、貧血までみられるような重症の骨髄抑制がみられることもあるが、可逆性であり、輸血をすることはない(96)。血液への照射が200radを越えなければ、重大な骨髄抑制が起こることはない(94)。 |
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放射性ヨード治療の重大な晩発性障害は、性腺、骨髄、肺への障害、別の部位の癌の発生である。 |
[卵巣への障害] |
放射性ヨード治療後一年以内に、閉経前後の女性の約25%で一過性の無月経や性腺刺激ホルモンの増加がみられることがある(106)。計300mCi未満の放射性ヨードを投与された女性が不妊症になるという報告はないが、計800mCiの放射性ヨードを投与された女性の60%が不妊症になるかもしれない(107)。術後に放射性ヨード治療をするしないにかかわらず、甲状腺癌の手術を受けた年には流産の頻度が2倍になる。100mCi以上の放射性ヨードを服用した年にも流産の頻度が2倍になる。この流産の頻度が高くなる原因として、性腺への放射線被曝や治療後に甲状腺機能のコントロールが不十分であったためかは不明だが、100mCi以上の放射性ヨードを服用した女性は100mCi未満の放射性ヨードを服用した女性と比較して、流産の頻度が2倍であるという事実は、性腺への放射線被曝との関連性を疑わせる(108)。長期間の研究では、放射性ヨード治療を受けたときの年令が30歳以下の女性30人では、不妊はみられなかった。放射性ヨード治療後に44回妊娠したが、流産はなかった。 |
[精巣への障害] |
精巣は卵巣以上に放射線に対して弱い。50〜100mCiの放射性ヨードを服用した場合、一過性の精巣機能不全(永久性かどうかは分かっていないが)を引き起こすに十分な照射量が精巣に当たる(110)。若い男性は投与された放射性ヨードの量に比例して、精子の数が減少していく(111)。無症状で、血清FSH値<注釈:性腺刺激ホルモンの一種>が高いだけかもしれないが、数回放射性ヨード治療を受けると、血清テストステロン値<注釈:男性ホルモンのこと>は正常でも(112)、精子の運動能が低下するかもしれない。計300mCiの放射性ヨードを服用した場合、10%未満で永久性不妊症になり、計800mCiの放射性ヨードを服用した場合、90%以上で永久性不妊症になる(107)。これらの理由で、若い男性の場合、計100mCi以上の放射性ヨードを服用するときには、前もって精子を冷凍保存していた方が賢明かもしれない。 |
[放射性ヨード治療により引き起こされる先天性異常] |
放射性ヨード治療を受けた小児や妊娠可能年令の女性に、先天性奇形を産む危険性が高いという証拠は今までに報告されていない。平均196mCiの放射性ヨードを服用した平均年齢14.6歳の小児33人を長期間観察した研究によると、平均19年後に調べたところ、不妊症(12%)、流産(1.4%)、早産(8%)、奇形(1.4%)の頻度は、普通の妊婦の頻度と差はなかった(113)。甲状腺癌で治療を受けた女性の2,113妊娠について研究した結果、死産、早産、低体重児出産、奇形児、生後一年以内の死亡などは放射性ヨード治療前と後では差はみられなかった(108)。 |
[骨髄障害と癌や白血病の発生] |
骨髄障害と癌発生は、放射性ヨード治療における晩発性副作用の最も重篤なものである。計1000mCiを越えた場合、膀胱癌と白血病による死亡の頻度がほんの少しだが有意に増加する(109)。首や遠隔転移への放射性ヨード取り込みが少ない例が、膀胱癌になりやすい傾向にある(109)。放射性ヨード治療後5年を過ぎると、投与した放射性ヨードの量に関連して、大腸・直腸癌の頻度が増加する(101)。これは、特に甲状腺機能低下状態の時に大腸内の放射性ヨードが蓄積していることに関与していると思われるので、放射性ヨード治療後数日間は、便通を良くすることの重要性を強調すべきである。場合によっては、ヨードを含まない下剤を使用することもある。クエン酸マグネシウム<注釈:商品名マグコロール>はリチウムを使用している場合には、注意を要する<注釈:薬品情報集で調べたが、特に相互作用を起こすとの記載はなかった>。
計1,000mCiを越えた場合、赤血球、血小板、顆粒球(白血球の一種)の異常がみられるかもしれない。13の研究発表の甲状腺癌計2,753人を分析したところ、14人で白血病がでた(101)。これは1,000人あたり5人(0.5%)で、一般人の頻度より高い。放射性ヨード治療と関連しているのは急性白血病であるが、放射性ヨード治療2〜10年後に起こる。急性白血病の発生は、数ヶ月毎に治療している例より毎年治療をしている例で起こりにくい。また、血液への放射線被曝が200rad以下の症例では起こりにくい(101)。
これらの報告にもかかわらず、一生で起こる白血病の危険性は大変低く(0.33%)、放射性ヨード治療の利益を損なうものではない(114)。放射性ヨード治療を受けた年令にもよるが、甲状腺癌の再発で死亡する危険性は白血病で死亡する危険性の4〜40倍高い(114)。もし放射性ヨード治療を年一回受け、総投与量も600〜800mCiくらいなら、長期間の骨髄障害も最小に抑えられ(114)、白血病になる危険性も低くなる。平均195mCi服用した1,771人の患者を10年間経過をみた研究では、白血病になった例は一例もない(115)。一般住民を対象とした研究においても放射性ヨード治療を受けた甲状腺癌患者が白血病になる危険性が高いという結果は得られないので、白血病になる危険性はあっても非常に低いものであると思われる(116)。 |
[肺線維症] |
肺線維症は、肺にびまん性に転移している症例が放射性ヨード治療を受けた場合に起こるかもしれない(94,117-119)。診断で行う放射性ヨードシンチで肺への取り込みが強い症例には、治療量の放射性ヨードを少な目(100〜200mCi)に投与することで肺線維症を予防できる。 |
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妊娠中の管理は、特に治療の時期に関して心配を伴うかもしれない。妊娠が病気を悪化させたという症例報告はあるが、多数例を検討した結果では、妊娠中に分化型甲状腺癌と診断された症例の予後は、同じ年令の非妊婦の予後と変わりがない(120)。もし手術を行うのなら妊娠中期に行うべきである。手術や放射性ヨード治療は、産後に延期する方が安全である。 |