|
|
甲状腺自己抗体高値と甲状腺腫を特徴とする橋本病は、甲状腺炎の中で最も頻度が高いタイプである。ヨード摂取が十分である米国や他の国では(平均尿中ヨード濃度が100μg/L以上)、橋本病は甲状腺機能低下症と甲状腺腫の一番多い原因である。橋本病の患者で稀に、甲状腺刺激型抗体が甲状腺阻害型抗体に変化して、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症が交互に起こることがある(25)。
固くて、表面が凹凸、左右対称な痛みのない甲状腺腫は、しばしば橋本病を診断するきっかけになる。自己免疫による持続性甲状腺機能低下症患者の約10%は、甲状腺萎縮(橋本病で甲状腺機能低下症の最後の段階)によるものである(26)。甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)高値は橋本病患者の90%でみられ、サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)高値は橋本病患者の20%〜50%でみられる(27)<注釈:日本では、抗Tg抗体で陽性率が高い。人種差があるのかもしれない>。超音波では、甲状腺が低エコーにみえる。24時間の放射性ヨード(ヨード-123)摂取率は、診断には有効でない<注釈:橋本病の場合、摂取率は低値から高値までみられるためである>。
顕性甲状腺機能低下症があれば、レボサイロキシン<注釈:日本ではチラーヂンS>で治療すべきである。潜在性甲状腺機能低下症は顕性甲状腺機能低下症に進展する可能性が高いこと(9)や潜在性甲状腺機能低下症では高脂血症と虚血性心臓病になりやすいという(28,29)理由から、我々は潜在性甲状腺機能低下症と甲状腺自己抗体高値を持つ患者に対してレボサイロキシンで治療する。レボサイロキシンによる補充療法の最終目的は、血中TSH値の正常化である。
橋本病患者で大きな甲状腺腫を持つ場合、甲状腺腫の重量を減少させるためにTSHを抑制する量のレボサイロキシンを短期(例えば6ヶ月間)投与することがある<注釈:これをTSH抑制療法といいます。実際に治療した例を示します>。甲状腺機能が正常か低下症であるかどうかに関係なく、大部分の橋本病患者において、レボサイロキシンによる6ヶ月間の治療後、甲状腺腫の重量が30%減少する(30)。甲状腺腫の重量が減少しない場合、甲状腺ホルモン補充療法は再開すべきである。レボサイロキシンで治療しても甲状腺自己抗体価は減少しないので(31,32)、一部の甲状腺機能低下症患者を除いて(33)、橋本病の診断がなされたら甲状腺自己抗体は調べる必要はない。
甲状腺悪性リンパ腫は非常に稀な疾患であるが、橋本病患者ではこの疾患に罹る頻度が、通常の頻度の67倍になる(34)。橋本病で甲状腺結節を持つ患者では、悪性リンパ腫と甲状腺癌を除外するために穿刺吸引細胞診を行うべきである。橋本病や他のリンパ球浸潤を来す甲状腺炎を持つ患者で甲状腺癌(特に乳頭癌)が起こったとき、その甲状腺癌の予後は良い(35)<注釈:以前、トピック[021]でこのことについて紹介した>。 |
|
産後数ヶ月以内に甲状腺内のリンパ球性炎症が起きることがあり、産後甲状腺炎と呼ばれる。報告されている頻度は様々だが、アメリカでは出産後10%で起こる(36,37)。妊娠初期または分娩の直後に甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)高値を示す女性、他の自己免疫疾患を持つ女性、1型糖尿病を持つ女性で、産後甲状腺炎を起こす頻度が高い。
典型的な甲状腺ホルモンの変動パターン<注釈:甲状腺機能亢進症期〜甲状腺機能低下症期〜甲状腺機能正常期の経過をたどる>がみられるのは、産後甲状腺炎患者の3分の1のみである【図1】。甲状腺機能亢進症期は通常、出産後1〜6ヶ月に起こり、1〜2ヶ月間続く。甲状腺機能低下症期は出産後4〜8ヶ月に起こり、4〜6ヶ月間続く。80%の女性は、1年以内に正常甲状腺機能に回復する。しかし、産後甲状腺炎の女性を追跡調査した研究において、対象とした女性の50%が7年以内に永続的な甲状腺機能低下症に陥ったと報告されている(38)。多産女性や自然流産の既往のある女性で永続的な甲状腺機能低下症に陥りやすい(39)。産後甲状腺炎を起こした場合、その次の産後に70%の女性で産後甲状腺炎を起こす(40)。
産後甲状腺炎の大部分の症例において、小さくて無痛性の硬いびまん性甲状腺腫がみられる。抗TPO抗体陽性、抗Tg抗体陽性または両方の抗体が陽性である(41)。赤血球沈降速度(ESR)は正常である。産後甲状腺炎と産後発症のバセドウ病を鑑別するために、123I摂取率試験(24時間値)を行うことがある。産後甲状腺炎では123I摂取率が低い(5%未満)のに対し、バセドウ病では123I摂取率が高い。バセドウ病でみられる大きな甲状腺腫または甲状腺眼症が存在しない甲状腺機能亢進症患者では、123I摂取率試験を行うべきである。放射性ヨードは乳汁中に出ることや123Iの半減期は13時間であることを考慮して、123I摂取率試験の後、搾乳して少なくとも2日間は母乳を与えてはいけない。
軽度の甲状腺機能亢進症は治療を必要としないこともある。しかし、症状がある場合、ベータ遮断薬を投与することもある。甲状腺で甲状腺ホルモンを過剰産生しているわけではないので、抗甲状腺薬は禁忌となる。甲状腺機能低下症期に治療が必要になることは稀である。しかし、甲状腺機能低下症期が長く続くときや症状がある場合、レボサイロキシンによる治療が必要になることもある。甲状腺機能が正常に回復したかどうか評価するために6〜9ヶ月後に甲状腺ホルモン剤を中止してみる。 |
|
産後甲状腺炎と無痛性甲状腺炎の違いは、妊娠と関連があるかないかだけである(42)。無痛性甲状腺炎の発症は散発性なので、この疾患に関する研究は難しい。無痛性甲状腺炎は、橋本病の亜型かもしれない。無痛性甲状腺炎(43)は、全ての甲状腺機能亢進症のうち約1%を占める<注釈:もう少し頻度は高いように思う。わたしの経験では、甲状腺機能亢進症の5〜10%程度と思う>。臨床経過は、産後甲状腺炎のそれと同じである。ほとんどの患者で甲状腺機能は正常に回復するが、20%の患者は永続性甲状腺機能低下症に陥る(44)。通常、症状は軽度である。小さくて無痛性の硬いびまん性甲状腺腫は、無痛性甲状腺炎患者の50%でみられる(45)。無痛性甲状腺炎と診断された時点で、50%の患者は抗TPO抗体が陽性であるが、橋本病に比べると抗TPO抗体価は低い(45)。123I摂取率が低い(5%未満;
24時間値)ことで診断は可能である。甲状腺機能亢進症の原因がはっきりしない場合には、抗甲状腺薬での不適当な治療を避けるために、123I摂取率試験を行うべきである。治療は、産後甲状腺炎と同じである。実際の再発率は、不明である。 |
|
亜急性甲状腺炎は、自然経過で炎症が消失する炎症性疾患であり、甲状腺が痛くなる疾患で最も頻度が高い。亜急性甲状腺炎は、医療機関を訪れる甲状腺疾患の5%を占める(46)。亜急性甲状腺炎はしばしば上気道感染症に続いて起こり、エンテロウイルスのピークの発生率と相関して、その発病率は夏に最も高い(47)。亜急性甲状腺炎の原因としてウィルスが疑われたこともあったが(48)、ウィルスが原因であるというはっきりした証拠は見つかっていない。
亜急性甲状腺炎は、全身の筋肉痛、咽頭炎、微熱と疲労を前兆として始まる。患者は、発熱とひどい首の痛みと首の腫れを自覚する。亜急性甲状腺炎患者の50%は、甲状腺機能亢進症の症状を呈する。ほとんどの場合、甲状腺機能亢進症が数週間続き、その後4〜6ヶ月間甲状腺機能低下症になり、最終的には甲状腺機能は正常に戻る。この臨床経過は、無痛性甲状腺炎と産後甲状腺炎の場合と同じである。95%の患者は、6〜12ヶ月後に甲状腺機能は正常化するが、5%の患者では永続性甲状腺機能低下症になる(1,49)。亜急性甲状腺炎は2%の患者で再発する(50)。
亜急性甲状腺炎の特徴は、著明に速くなる赤血球沈降速度(ESR)である。炎症反応の指標であるCRPは、同じように増加する(51)。白血球数は正常であるか、僅かに増加する。血中甲状腺ホルモン値は増加する。甲状腺内に貯蔵された甲状腺ホルモンの比率を反映するために、T3/T4比は20未満である(52)。甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度は抑制されているか感度以下である。甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)は通常、陰性である。亜急性甲状腺炎の甲状腺機能亢進症期では、123I摂取率24時間値は低い値を示し(5%未満)、亜急性甲状腺炎とバセドウ病を鑑別できる。カラー・ドップラー超音波検査は、亜急性甲状腺炎とバセドウ病を鑑別する補助手段になるかもしれない;バセドウ病患者では、甲状腺内の血流は増加しているのに対し、亜急性甲状腺炎患者では、甲状腺は低エコーで、甲状腺内の血流は正常か低下している(53)。
亜急性甲状腺炎の治療は、痛みを軽減するだけの対症療法である。甲状腺の痛みが軽度の場合には、非ステロイド系薬物またはサリチル酸塩(アスピリン)で十分である。よりひどい甲状腺の痛みに対しては、高用量の副腎皮質ホルモン剤(例えばプレドニゾン40mg/日)は、痛みを即座に抑える。副腎皮質ホルモン剤は4〜6週かけて減量、中止する。123I摂取率が正常化したら、副腎皮質ホルモン剤は中止しなければならない。ベータ遮断剤は、甲状腺機能亢進症の症状を抑える。甲状腺機能低下症期は軽度で一時的であるため、レボサイロキシンによる治療は通常、必要でないが、症状が強い場合にはレボサイロキシンの投与を必要とする。 |
|
化膿性甲状腺炎は通常、細菌感染が原因であるが、真菌、マイコバクテリウム(非定型抗酸菌)、寄生虫などの感染が原因になることもある。甲状腺は被膜に被われており、ヨード濃度が高く、血流に富んでおり、リンパの流れが良いため、感染に対して強い。以上の理由で、化膿性甲状腺炎は稀な疾患である(54)。化膿性甲状腺炎は、既に甲状腺疾患を持っている人(甲状腺癌、橋本病または多結節性甲状腺腫)、下咽頭梨状窩瘻(小児の最も頻度の高い感染原因)のような先天異常を持つ人、免疫力が抑制されている人、老人、衰弱している人などで起こりやすい。化膿性甲状腺炎は、後天性免疫不全症候群(エイズ)患者に起こりやすい。エイズ患者では、ニューモシスティス・カリニや他の日和見感染が化膿性甲状腺炎の原因になる。
通常、細菌による化膿性甲状腺炎患者は発熱、嚥下困難、発声困難、前頸部の痛み、皮膚の発赤、痛みを伴った甲状腺腫瘤などの症状が急に出現する病気である。急性上気道炎後に、症状が出ることもある。エイズ患者の場合、真菌、寄生虫、マイコバクテリウムなどの感染、日和見感染による化膿性甲状腺炎は、慢性的で潜行性になる傾向がある。
一般的に化膿性甲状腺炎患者では甲状腺機能は正常である。しかし、甲状腺機能亢進症症と甲状腺機能低下症のどちらも報告されている(54)。白血球数と赤血球沈降速度(ESR)は増加する。化膿性甲状腺炎を起こしている領域は、放射性ヨードシンチグラムでコールド<注釈:放射性ヨードが取り込まないこと>として描出される。穿刺吸引細胞診で得られた材料からグラム染色と細菌培養を行うことは、診断手段の一つである。化膿性甲状腺炎の治療は、適切な抗生物質投与と切開排膿である。診断と治療が遅れると、疾患は致命的になることがある。 |
|
多くの薬物は、甲状腺機能や甲状腺機能検査に影響を与えることがある。しかしながら、自己免疫あるいは破壊性甲状腺炎を引き起こすことが知られている薬物は数少ない。 |
[アミオダロン] |
甲状腺と甲状腺ホルモンの末梢代謝に及ぼすアミオダロン<注釈:商品名アンカロン─不整脈のクスリ>のさまざまな作用が、最近の総説で述べられている(57)【表3】。ヨード摂取が十分な地域では、アミオダロンによる甲状腺機能低下症(アミオダロンに含まれる過剰なヨードが原因である)は、アミオダロンを服用している患者の20%に起こる。アミオダロンを服用すると、自己免疫性甲状腺疾患をもつ患者が甲状腺機能低下症になりやすい。アミオダロンによる甲状腺機能低下症患者では、レボサイロキシンによる治療が必要である。レボサイロキシンによる治療をしながら、アミオダロンは続けることもある。アミオダロンが末梢組織での5'-デヨードナーゼ活性<注釈:5'-デヨードナーゼは末梢でT4をT3に変換する酵素>を減少させT3の産生を減少させるので、血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)を正常化するために必要なレボサイロキシンの量は、常用量よりしばしば多くなる。
アミオダロンによる甲状腺機能亢進症は、アミオダロンを服用している患者の23%で起こり、ヨード欠乏地域で頻度が高い(58)。アミオダロンによる甲状腺機能亢進症1型は、甲状腺ホルモンの過剰な合成と放出を特徴としている;ヨードによって引き起こされる甲状腺機能亢進症で、特に甲状腺疾患(特に多結節性甲状腺腫─日本では腺腫様甲状腺腫と呼ばれる)を持っている患者に起こりやすい。アミオダロンによる甲状腺機能亢進症2型は、貯蔵された甲状腺ホルモンが破壊された甲状腺から放出される破壊性甲状腺炎を示すのが特徴である。特に、一部の患者で両方の型を持っている場合、アミオダロンによる甲状腺機能亢進症がどちらの型であるのかを鑑別するのは難しい。米国の患者では、123I摂取率は1型と2型で典型的には低値を示す。カラー・ドップラー超音波検査は、1型では甲状腺内の血流増加を示し、2型では甲状腺内の血流が減少している(59)。アミオダロンによる甲状腺機能亢進症2
型ではアミオダロンによる甲状腺機能亢進症1型に比べて、血清インターロイキン6濃度が高いと報告されたが(60)、その後の追試でこの結果は確認できなかった。
アミオダロンによる甲状腺機能亢進症1型は、高用量の抗甲状腺薬(メルカゾールまたはPTU<注釈:チウラジールまたはプロパジール>)で治療される。ときに、甲状腺へのヨードの取り込みを防ぐためにカリウム過塩素酸塩(パークロレイト)を併用することもある。アミオダロンによる甲状腺機能亢進症1型の治療としてリチウムが試みられたこともある(61)。アミオダロンによる甲状腺機能亢進症2型は、高用量の副腎皮質ホルモン剤が有効である。最近、イオパノ酸<注釈:胆嚢造影などに使用されるヨード含有造影剤>がアミオダロンによる甲状腺機能亢進症2型に対して副腎皮質ホルモン剤ほど効かないが、有効であることが報告されている(63)。さらに、イオパノ酸は甲状腺切除術を必要とするようなアミオダロンによる甲状腺機能亢進症1型にも効果的であることが報告された(64)。
アミオダロンによる治療が開始される前に、慎重な甲状腺の触診、甲状腺機能検査、抗TPO抗体と抗Tg抗体の測定が行われるべきである。そして、患者が本剤を投与されている限り、甲状腺機能は6ヶ月毎にモニターすべきである【図2】。 |
|
[リチウム] |
自己免疫性甲状腺疾患を持っている患者では、リチウムは抗甲状腺自己抗体を増加させることがあり、潜在性または顕性甲状腺機能低下症になる可能性がある(65)。リチウムで長期の治療を受けている患者の抗甲状腺自己抗体陽性率は、10〜33%である(66)。さらに、長期のリチウム服用例で甲状腺機能亢進症が発症したという報告がある(67)。おそらく、甲状腺細胞に対するリチウムの効果に起因するかリチウムによって誘発された無痛性甲状腺炎によるものと思われる(68,69)。 |
|
[インターフェロンαとインターロイキン2] |
インターフェロンα療法を受けると、自己免疫性甲状腺を持たない患者でも15%が抗TPO抗体陽性または甲状腺機能異常が出現する(70)。インターフェロンα療法やインターロイキン2療法を受けている患者で抗TPO抗体が陽性になった場合、顕性もしくは潜在性甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症になるかもしれない(71)。さらにインターフェロンαは、破壊性甲状腺炎を引き起こすことが報告されている(72,73)。インターフェロンαやインターロイキン2を使用中に甲状腺機能亢進症になった患者に対しては、123I摂取率試験を行えば、薬物によるバセドウ病(123I摂取率が高い)と薬物による破壊性甲状腺炎(123I摂取率が低い)を鑑別することができる。
インターフェロンα療法を受けている患者でバセドウ病が発症したら、抗甲状腺薬で治療をすべきである。インターフェロンαまたはインターロイキン2で治療を続けながら、破壊性甲状腺炎の甲状腺機能亢進症期にはベータ遮断薬で治療することができる。また、非ステロイド系抗炎症薬または副腎皮質ホルモン剤で治療ができる。甲状腺機能低下症に対しては、レボサイロキシンで治療を行う。インターフェロンαやインターロイキン2治療を中止すると、通常、甲状腺機能は正常化するが、甲状腺機能異常を来した患者は将来、自己免疫性甲状腺疾患が発症する可能性が高い。インターフェロンαまたはインターロイキン2による治療を始める前に甲状腺機能検査と甲状腺自己抗体を調べるべきである。その後6ヶ月毎に甲状腺機能検査と甲状腺自己抗体をチェックしなければならない。 |
|
|
全身線維症の局所症状である(74)リーデル甲状腺炎は、線維症が周囲組織に及ぶ可能性のある甲状腺の進行性線維症である。この疾患の罹患率は、手術を必要としている甲状腺疾患患者の0.05%でみられるのみである。原因不明の疾患である。甲状腺自己抗体陽性は67%の患者でみられる。しかし、甲状腺自己抗体が線維性甲状腺破壊の原因かどうかは不明である。
リーデル甲状腺炎患者では、石のように硬く、可動性のない、痛みのない甲状腺腫を呈する。リーデル甲状腺炎患者は、気管や食道を圧迫する症状を自覚する。さらに、副甲状腺組織が線維症のために圧迫され副甲状腺機能低下症を呈することがある。大部分の患者で甲状腺機能は正常であるが、正常甲状腺組織がすべて線維化したら、甲状腺機能低下症に陥る。確定診断は、試験切開<注釈:手術で甲状腺組織を一部切除して、顕微鏡で診断する>によってなされる。病気の初期には副腎皮質ホルモン剤、メトトレキサート<注釈:免疫抑制剤>、タモキシフェン<注釈:商品名ノルバデックス─乳癌に使用されるクスリである>による治療が有効であることが報告されているが、最終的な治療は手術である。 |